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ギターの再開と現状~脱力について~ [演奏技術]

このタイトルで書いていて,前回の「現代奏法」で取り敢えず打ち止めと思っていましたが,重要な件を忘れていました。これなしでは現代奏法もヘチマもなさそうなくらい重要な気がしますが,これがなかなかトリッキーです。

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脱力です。これまた,「忘れて当たり前」になっていると言う状態は理想的なのでしょうが,例えば昔弾いた曲を引っ張り出して弾いてみると,妙に余分な力みが入っていて,むしろ左手の押弦や右手のタッチに必要な力が行っていないのです。そして音は出そこなう。そうなるまいと益々余分な力を入れてしまうのです。

無用な力を入れて弾いていた記憶を,曲と共に思い出してしまうのです[1]-[8]。一生懸命弾き込んだ曲ほどそうなっているのはタチが悪いです。それをどう改善するか?現在の課題です。

脱力[9]-[48]はギターに限らず,あらゆる楽器で共通のようです。進んでいると思われるピアノの演奏法[27],[28]でも,わりと最近まで重要視されていなかったようです。かつては一流のプロでさえ,眉間にシワを寄せて弾いていました。多分力が入っていたのです。気持ちを入れて弾いていると勘違いされかねず,逆に脱力というと手抜き演奏をしていると誤解されかねません。まずそこがメンドウです。

「脱力」に関しては過去に多数色々と書いていました。当方にとってかなりの重要課題であった事が伺われます。以下各記事を紹介しておきます。前回と一部ダブる記事も見られます。


[1]記憶のオーバーライト特性
この記事では,ディスクドライブのオーバーライト特性になぞらえて考察しています。脱力に特化しているわけではありませんが,古い良くない記憶として「力を入れて弾いている」というのもあるわけです。

[2]演奏のリセットについて~過去の自分との決別~
この記事は,文字通り,力が入っていたり古いメソッドによる不合理な弾き方からどう脱却するかについての方法論を書いています。

[3]曲が弾けるプロセスと忘却曲線について
「Ebbinghausの忘却曲線」というものがありますが,曲を弾けるようになるプロセスや過去の演奏の記憶の扱い方などに当てはめてみて,どんな事が言えるかを論考しています。

[4]古い曲の引っ張り出し方について
ギター歴が長くなると,かつて弾いた曲は積みあがってきます。どう取り出すのが合理的か?を,論考というか,「あーでもないこうでーもない」と考えた挙句,実験してみる事を提案していますが,まだ出来ていません。

[5]古い曲を引っ張り出す際の課題
これは過去記事として前回も取り上げた,「先入れ先出し方式FIFO」か「後入れ先出し方式LIFO」かの得失について考えています。LIFOがよさそうだと。

[6]オンとオフの話
文字通りオフは,左指の押弦力を抜く事ですが,漠然とした脱力ではなく,演奏場面に即して,直ちにオフにすることの重要性について書いています。これにより演奏がスムーズになり,擦過音の低減もは図れるわけです。

[7]右手の修正
まだ無理のある弾き方をしていた時期だと思います。手の痺れを感じて自分で矯正していますが。

[8]Carcassi Op.60-7
力みについて直接的言及はないですが,上がりと録音の効果について書いています。

[9]力が抜けるという事
今年の記事ですので,さすがに体得済みです。言葉として「脱力」は誤解も多いので「リラックス」がよいのではないかと書いています。

[10]難所対策〜具体例・ヴィラ=ロボス練習曲第1番〜[音源追加]
これも力を抜いた方がうまくいくと思われます。

[11]年寄り奏法を考える
力より技,脱力必須。ムリ・ムラ・ムダをなくせ!

[12]失敗に学ぶ?
始めた頃は酷い姿勢だったこと,姿勢を正し,脱力を習得するまでの長い苦難の道。。。

[13]演奏のリセットについて~過去の自分との決別~
過去の自分と決別するための具体策。

[14]オンとオフについて
力を抜かずに移動していた過去。オフの技術は大事だったと悟った記事です。

[15]脱力と他ジャンルのギター演奏家のスタイル
ジャズギターとかはクラギと別物だと思っていたのですが,ジョー・パスなどのフォームは非常に参考になるとの福田進一氏指摘に納得した記事。

[16]「禁じられた遊び」の弾き方〜その第四歩〜
暗譜してしまうのも脱力には有効と書いています。まあ当然のことなのですが。

[17]「禁じられた遊び」の弾き方〜その第三歩〜
「腕の重みを使うこと」,「ゆっくり力を抜いて」などの記述が見えます。

[18]ソル再開〜Op.29-13〜br> セーハが60%を占める曲。脱力がキーになる曲です。

[19]息苦しくない演奏
かつての自分の演奏に息苦しさを感じていたこともあり,ヒトの呼吸について考えています。

[20]練習のアナリーゼ
練習方法の分析です。合理的な練習法をとった上に脱力できれば上達間違いなし?

[21]キーワードの一人歩き
「脱力」という言葉が一人歩きしていないか?他のそれに類する語とからめた記事です。

[22]擦過音と脱力
この頃になって,ようやく擦過音と脱力との関係に気がついたようです。

[23]私の脱力奏法
ようやく脱力が理解できて見渡してみると,「部分的には昔からできていた人はいたようだ,YouTubeで見るギリアの左手は素晴らしい」と書いています。

[24]脱力奏法に関する思い出
昔の芳志戸幹雄さんのNHKテキストに興味深いことが書かれていたことを取り上げています。左手に関する親指の役割について書いていますが,挟みつけるのではなくて,位置を決め表の指を置くという方法を勧めています。40年以上も前ですが,どうもすでに氏は分かっていた様に見えます。

[25]ソルの20の練習曲(セゴビア編)再考〜第8番〜
「脱力とクローズドでいける曲」だと,コメントに書いています。

[26]エコ演奏
脱力演奏に関して,当方の場合肩の痛みもあり,無理しない様そーっと演奏しているとの記事。

[27]脱力の基礎
子供向けのピアノの教本にあった基本的な脱力法の記事。

[28]脱力の一方法
子供向けのピアノの教本にあった「脱力の練習」の記事。

[29]楽器の調整について
よく切れる刃物はけがをしにくい,という事実から,脱力することと楽器の調整について書いています。この時点で完全に体得していたかどうかは微妙です。

[30]あがりの原因と具体策
カトー・ハヴァシュ著の「あがり」に関する本から,その原因と具体策を抽出していますが,体のこわばりに関しての記述があります。

[31]ネコの重さ
左手の押さえに必要な荷重について考察しています。

[32]あがりと緊張しにくい弾き方について
カトー・ハヴァシュさんの有名な本で,ヴァイオリン演奏に関してですが,どんな楽器演奏においても参考になるでしょう。この本の記述を元にあがりと脱力に関して考えています。

[33]右手のタッチ
ここの右図はえぐるように見え,かつてのアルアイレとあまり違って見えないと思いますが,もっと押し込むイメージの方が良いと思います。この記事の時点ではまだよく分かっていなかったのでしょう。

[34]力を抜く練習
脱力ど真ん中の記事ですが,多分まだよく分かっていません。

[35]「こうしなければならない」弊害
かつて良いと言われてきた奏法の問題点を指摘しています。

[36]発表会雑感
またも上がったという話を書いています。

[37]技術的難所について
脱力の事も書いていますが,主に演奏中のダウンについてです。

[38]やってはいけないこと
必要以上に力を入れることを西横綱としています。

[39]ギターの技術に関する回想
脱力,演奏の準備動作などについても述べています。

[40]暗譜を何とかしたい(2)
脱力というよりも,主に苦しんでいた暗譜について書いています。

[41]魔笛の主題による変奏曲(5)
スラーの脱力について書いています。再開後レッスンを受けてすぐに取り組んだのがこの曲でしたが,スラーは力を入れてはじくものだとばかり思って,出にくいと更に力をいれるという悪循環にハマっていましたので,特にこのような速いスラーは脱力が必要だと悟ったわけです。スラーの脱力に関しては再開後,レッスンで教わって割と直ぐに改善したと思います。

[42]総合技術
演奏技術の向上を図るという正面突破のトレーニングに対して,様々な手で上手く速度向上を図るかなどについて書いています。この時点では脱力の重要性はアタマでは分かりつつも出来ていませんし,まだまだ幾多基礎を固める必要があったと思います。

[43]シューベルトとギター
W. カネンガイザーの演奏において「瞬間脱力」という言葉を使っています。無論当方はそんなことできなかったのですが,彼の演奏中の,ふっと力を抜く動作をそう表現したのだと思います。

[44]拍節感
ちょこっと脱力という言葉を使っています。ここでよく分かっていたわけではないですが,心がけとしてはあったのでしょう。ここでは当時最大の課題だった暗譜するための方法論として考えています。

[45]理想の弦について(2)
ここでは理想の弦について語っており,低音弦では擦過音が問題だと言っています。「脱力すれば出にくい」とはっきり言っているので,頭では分かってはいたのだと思いますが,実際出来ていたかどうかは別問題です。

[46]脱力のすすめ(3)
タイトル的には真正面の事を書いていますが,出来ているのは奏法スラーについてだけという状態でした。

[47]脱力のすすめ(2)
ここでは,エレキやフラメンコギターに言及しています。クラギでは高い弦高の楽器を美しい音で弾かないといけないからキビシイ,と泣き言を言っています。

[48]脱力のすすめ(1)
「上達とは脱力なり。」とまで言い切っています。しかし,アタマで分かっても実際の演奏には反映していなかったと思います。

あとがき
脱力は奏法そのものではないですから,あまり教本などには載っていないと思います。多分人によっても違うでしょうし,「力を抜いたら弾けないので抜きません」という人に対して抜け抜けと強制(矯正?)する訳にもいきません。多分人により力みモードは違うのではないかと思いますし,外見上力が入っている様に見えてもそうで無さそうな人もいれば,抜けている様に見えても「力が入っちゃって弾けなかった」という人もいます。整体師のような技能を持ったギタリストが直に見れば分かるのでしょうが,何分この余分な力というのがメンタル面も絡みますから厄介です。本人が問題意識を持ち,それに気がついて「ああこう言うことか」と納得するしかなさそうです。
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U3

☆Enriqueさんお早うございます。
「脱力」と「緊張」の、自分なりのリズムを会得することこそが、ギター奏法のみならず、すべてに於いて大事なのかなと思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 拙ブログにコメントありがとうございます。コメントをお返しいたしましたが、貴ブログにもその文面をコピペいたします。

 xさんはSS-BLOGで禁止されている、自動でnice!を付けるソフトを使用してnice!を押しているものと思われます。
 それが証拠にJustice!の時には私がU3名でnice!を押しても一度もnice!を返して来なかったのに、H☆imagineに戻った途端、こちらがnice!を押してもいないにも関わらず、即座にnice!を押して来ました。
 SS-BLOGサポートデスクに連絡しても、何も対処しないのは分かっているのでそのままにしています。
つまり、

>無自覚なnice!の件を指摘されてもされても自分の事だと気がつかないのでしょうかね。

ではなくて、自動nice!なので気づきようもないのです!

昨日から本当に冷え込みます。風もとても強かった。
風邪など引かぬようご自愛下さい。
by U3 (2021-12-18 10:55) 

oga.

脱力って難しい言葉ですね。
並んでいる記事を全部読んでいるわけでないので的外れかもしれませんが、例えばある曲を弾くときに気を付けることが山のようにあって頭の中でうずまいている時は頭がごちゃごちゃになって結局ほとんどできないのが緊張... でも十分練習して体にしみついていれば、何も考えずに流れにまかせて演奏できる、ってのが脱力かなと勝手にイメージしてしまいました。そんな単純なことではないのでしょうけど。
by oga. (2021-12-18 11:34) 

Enrique

U3さん,了解いたしました。
きっとそうだとは思ったのですが,以前ほど瞬間的につくこともないので手動かな?とも。まあそれにせっせとお返しする方々もいます。以前はソネブロの関係者かなとも思いましたがSSブログになってもあまりお変わりない様です。
by Enrique (2021-12-18 13:05) 

Enrique

oga.さん,
ここでの脱力とは,精神面もあるでしょうが,具体的に手や体に入る力みを取る事を言っています。私は永年掛かりました。非常に誤解の多い言葉で,楽器をやっている人でも,分かっている方はわかっているし,そうでない人にはピンとこないと思います。リラックスと言ったほうが良いでしょうか。私は演奏不可能なくらいに激しい緊張になりましたので,多分最大の懸案事項でした。そのような自覚症状の無い人には特に必要のない言葉でもあります。過去記事でも書きましたが,あまり言葉が一人歩きすると,自分はそれができているかどうか悩む人もいるそうですので。
現在は力みが不随意に入っても抜くと言う動作もできますが,新たに弾く曲には,力みは入らなくても,過去曲を弾くと力んだまま思い出されてしまうので面白い(困った)ものです。
by Enrique (2021-12-18 13:08) 

枝動

こんにちは。
何事も力み過ぎると、結果は良くない気がします。
知らずのうちに、プレッシャーやストレスを抱えているんでしょうね。
「よく切れる刃物はけがをしにくい」には同感でした。
研ぎをサボると余計に力が入り、怪我をするリスクは高まりますね。
by 枝動 (2021-12-18 14:09) 

風神

ドラムを叩く時、肩にも足にも力が入りました。
個人練習では音を出せない為、ラバーの練習台や漫画本を並べて使っていたのですが、なめらかな動きが出来ていたと思います。いざスタジオやコンサート会場では、音を出したい届けたいと力任せな演奏になり、お世辞にも良いとは言えず自己満足でしか無かったです。
「脱力」する事を覚えないとは解っているのですが、難しい事です。
by 風神 (2021-12-18 14:45) 

八犬伝

脱力ですか
確かに、何事も力が入りすぎると
ろくなことがおきませんね。
加減と言うのが、大切なのでしょうね。
by 八犬伝 (2021-12-18 18:38) 

Enrique

枝動さん,
脱力もそうなのですが,「よく切れる刃物はけがをしにくい」,というのも逆説的なのか理解されにくい事です。分かっていただき嬉しいですね。切れ味が良い刃物では最小限の力で作業できますが,切れ味の悪い刃物では余分な力が入りコントロールが効かず手元が狂います。作業には不十分な切れ味でも怪我するには十分という,非常にタチの悪いものです。
by Enrique (2021-12-18 20:10) 

Enrique

風神さん,
脱力の難しさをお分かりの様で,嬉しいです。
練習と本番の状況が変わると言うのは,上がる(余分な力が体に入る)ひとつの原因ですね。本番と同じ様に練習してさえ上がるのですから,条件が異なれば,訳わからなくなってしまいます。

by Enrique (2021-12-18 20:17) 

Enrique

八犬伝さん,
何事もリラックスが大事なのですが,「リラックス=真剣さが足りない」みたいな構図になっているのではないかと思います。良いことと悪いことの解釈が逆では,うまくいくわけありませんね。
by Enrique (2021-12-18 20:21) 

静謐な一日

明鏡止水の境地になれば力を抜き思うように奏でることも叶うかもしれません。
by 静謐な一日 (2021-12-20 18:36) 

Enrique

静謐な一日さん,
様々な雑念ひとつひとつが無駄な力みの原因なのでしょう。
by Enrique (2021-12-21 05:50) 

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