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脱力のすすめ(1) [演奏技術]

現行一万円札の人物のかいた啓蒙書のパロディではなく,むしろ自己へのいましめである。脱力は一生ものの課題である。

その重要性を鋭く説いているページもあるが,深い課題であるために,なかなか文章では分かった人に分かった部分までしか分からない。人間経験して実感しないと分からない。かなり弾ける若い人に,アドバイスのつもりで「脱力は重要だよ」などとというと,「力を抜いたら弾けないじゃないですか!」と反論されてしまう。血迷ったオヤジの妄言とまでは言わないまでも,理解できないと言う顔をされる。若い人でも力の抜けた演奏をする人がいる。やはりその演奏はすばらしい。幾人かおられようが,大萩康司さんに脱力の効果を見る。特に右手は弦をとらえた後,ふっと抜けている。最近結婚されたそうで,今後ますます落ち着いた活躍を期待したい。

やはり,脱力系(というと誤解もあるが)の演奏としては,G.セルシェルの演奏。物足りないという向きもあろうが,好きな演奏家である。ギター・キングのジョンはもちろん力の抜けた演奏家。しかし最も力が入っている様に見える演奏家でも,演奏することに力が入っているわけで,ムダな力が入っていたら弾けるわけがない(と思う)。巨匠格ではブリームが好きだった。映像を見るといかにも力が入っているように見えるが,力んだようには聞こえないので,演奏の外観とは別次元なのだろう。

巨匠格の演奏をアマのそれとごっちゃにしてはならない。脱力にも色んなレベルがあると思う。まず最初の構え。最初からどこかに力が入っていたら,満足に手が動かない。もう,どこにも力は入っていません!でも,弾きだすと,あちこちにストレスが。やはり,「力を抜いたら弾けません」となる。ムダな力が入っていないか,これを確かめる手段にも,「スロー・プラクティス」は有効であろう。極論すれば,上達とは脱力なり。反射神経や運動神経,どう頑張ったところで中年以降上昇するわけが無い。持ち合わせの運動能力のムダを如何に省くかが演奏のポイントである。

年齢を重ねると,色々な部分で力が抜けてくる。仮に力が入った状態で弾けていても,抜けて弾けたほうが絶対に良い。演奏に神経が行き渡り,すみずみまでコントロールがきくはずだ。多分あがりにも影響すると思う。あがりの悪循環ループのどこかに,ムダに力が入っているところがあるのだろう。


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