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Hoppstock編PonceのSonatina原典版について(第3楽章など) [雑感]

Ponceの原典版(Urtext)の編著者のHoppstockさんのSonatinaの(楽譜と)演奏に関する,さらなる続きです。

Guitar Works: Urtext Edition

Guitar Works: Urtext Edition

  • 出版社/メーカー: Schott & Co Ltd
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: ペーパーバック


今回は第3楽章について気がついた点です。

第2楽章同様,原典に関するコメント殆どありません。単旋律になっているところの他声部の休符が抜けているなど,どうでも良い指摘です。ゴチャゴチャするので敢えてシンプルにそう書くことは良くあるものです。

譜面に関してはよいとしても,セゴビア編の影響か,流布する演奏は,57小節目のPiu poco lentoは殆ど無視されています。原典版によるとみられる彼の演奏ではわずかに遅くなります。Piu poco poco lentoくらいでしょうか。

また以前も書いた通りですが,第3楽章の終わりに何小節か追加している演奏が多いとの指摘です。ポンセはソナタではなくソナチネと念を押されており,注文通りあえてシンプルに書いていますが,演奏家(たち)は終わり方が物足りないと感じたのかもしれません。


あと,第1楽章に戻りますが,第179小節の1拍目のバスに付く♮の件の注記があります。
楽典では,臨時記号は小節内で有効であり,小節が変わったら自動的に無効になりますが,ダメ押し(親切)ナチュラル記号も良くつけます。ポンセもそれをやっているだけでしょう(譜例)。

バスの臨時記号.png
譜例.赤丸で囲った部分。
従って,ここのバスは間違いなくA♮でしょう。しかしながら,ここが書き直しに見えるせいか,セゴビア編ではA♮をA#だと解釈して,おまけに異名同音のB♭にしています。

ギターでの表現としてセゴビア版を推す向きもあり,実際の演奏効果の向上は否定しませんが,現代の感覚ではいじりすぎている嫌いはあります。何分,当時は原譜そのままに演奏するのは無能な奏者とされた様な時代だったでしょうから,巨匠ともなれば改変は当たり前だったのでしょう。

20世紀には多くの作曲家がギターに関心を向け,セゴビアの改訂を経なければとても弾けない様な楽曲も多く現れたわけですが,ポンセの作品は,まるでギターが弾けたかのように殆どそれがありません。原典で弾いてみるというのも,きちんと弾けるように書いてくれた作曲者への敬意だと思います。
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U3

ご無沙汰です。
ギター演奏ではありませんが、最近は以前にも増してクラシック音楽に傾倒しています。
最初はピアノ曲、主にChopinを聞いていたのですが、紆余曲折を経て最近はBeethovenのSymphonyやPianosonataに嵌まっています。私はどうも繊細な楽曲よりも、勇壮なあるいは壮大な音楽が好みに合っているようです。
by U3 (2024-04-09 17:24) 

Enrique

U3さん,
好み・楽しみ方は色々で良いと思います。音楽は懐が深いので。
繊細とか壮大さと,編成とはまた別ながら,当方は個々の息遣いが分かる独奏や少人数編成の方が好きです。当然クラシックギター独奏は最たるものですが。
クラシック音楽は楽譜に記したものの演奏が基本です。作曲家が書いたものをいじるのはあまり好きではありません。楽曲に勝手に名前を付けたり,楽譜の解釈が間違っているものもあります。世の中が進歩すれば,それを正す行為は大いに意味ある事です。例えばブロムシュテットは200年前に作曲されたベートーベンの曲でも楽譜を精査して従来の解釈の間違いを正して演奏しているようです。この手の営みは,素人には関係ない事ではなく,個々の立場で留意べき事と思っています。
by Enrique (2024-04-11 08:59) 

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