難所対策〜具体例・ヴィラ=ロボス練習曲第1番〜[音源追加] [演奏]
ヴィラ=ロボスの練習曲第1番ホ短調は,ショパンのOp.10の練習曲第1番ハ長調のような華麗なアルペジオ練習曲です。
正直なところヴィラ=ロボスの曲は苦手です。なお苦手と言うのは技術では無くて,その音楽内容です。余りにもギターの機能を使った強引な感じが否めないからです。特に前奏曲第1番とかは,ウンザリ感が付き纏いました(最近作曲者本人の演奏を聴いて,そんなに酷い曲でもなかったのかなと見直しているところですが)。むろん20世紀の大作曲家であることに異論はありません。ギター作品はその膨大な作品の中のほんの一握りです。
前奏曲集に比べ,練習曲集の方は技術練習の為かいやらしさは少なく(やはりえげつないのはありますが),第1番はギターのアルペジオの曲として名作だと思います。アルペジオの練習に好適ですし,曲としても素晴らしいと思います。アルペジオの部分はほぼ1小節単位で繰り返しになりますが,初版はその繰り返しがなかった様であっというまに終わります(益田正洋氏がそれで弾いています)。
アルペジオ部分は弾きやすくてカッコ良いので,みなさん弾きます。この曲はただアルペジオだけに終わらないところがむしろ作曲家の非凡なところだろうと思いますが,そこは難所になります。ご承知の通りスラーで降りてくるところです。当方もかなり苦労しました(譜例1)。ヴィラ=ロボスの曲(特に前奏曲集)は,譜面は複雑でも音はたいがい指の運指がラクなところにあるのが普通ですが,ここの部分は安直ではありません。
もとの譜面にここの運指は記されていません。色んな運指が考えられますが,一番合理的で移動が連続しない運指をつけないといけません。運指付けがポイントで,決めたその運指できっちり練習しないといけません。さらにその上で,以下のことがらが重要です。
・ゆっくり練習すること。
当たり前の事なのですが,アルペジオ部分は指が慣れてくると,ドンドン速く弾きたくなるのですが,難所のスラー降下部は左手の移動を伴うので,デタラメに速く弾くことは出来ません。ここを弾けるテンポが上限を規定します。それに全体のテンポがAllegro non troppoですから,バカ速いわけではありません。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
・拍節を意識する事。
これも当たり前の事なのですが,「なんとか弾いてやろう」とムキになると,力みだけが先行して拍節無視で弾き切ろうとしてしまいます。これが一番いけません。かなり大袈裟に拍節を取ってゆっくりしっかりテンポに入れます。もちろん,ムキにならず極力脱力する事が肝要です。テンポに入れない練習を繰り返しても決してテンポには入ってきません。
・息が続くこと。
拍節をしっかりとるのはもちろんですが,ムキになっていますと,息が続かなくて第26小節からのアルペジオに戻る前にダウンしてしまいます。息を使いすぎない事です。そのコツは,スラーの頭の音だけを歌う事です。まずスラーを入れない技術練習も重要です(譜例2)。スラーの打つ方ばかりに意識が行くと撃沈します。むしろ,スラーの頭の音だけが正確に弾ければほぼ難所克服したも同然で,打つ方は脱力して自然に付いてくるくらいにすれば良いでしょう。逆に,これが弾けないで無理にスラーを入れても非常に不安定になります。
難所のスラーを入れない練習。
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一応弾いてみましたが,久々に弾くと指が回らず少し与太っています。
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正直なところヴィラ=ロボスの曲は苦手です。なお苦手と言うのは技術では無くて,その音楽内容です。余りにもギターの機能を使った強引な感じが否めないからです。特に前奏曲第1番とかは,ウンザリ感が付き纏いました(最近作曲者本人の演奏を聴いて,そんなに酷い曲でもなかったのかなと見直しているところですが)。むろん20世紀の大作曲家であることに異論はありません。ギター作品はその膨大な作品の中のほんの一握りです。
前奏曲集に比べ,練習曲集の方は技術練習の為かいやらしさは少なく(やはりえげつないのはありますが),第1番はギターのアルペジオの曲として名作だと思います。アルペジオの練習に好適ですし,曲としても素晴らしいと思います。アルペジオの部分はほぼ1小節単位で繰り返しになりますが,初版はその繰り返しがなかった様であっというまに終わります(益田正洋氏がそれで弾いています)。
アルペジオ部分は弾きやすくてカッコ良いので,みなさん弾きます。この曲はただアルペジオだけに終わらないところがむしろ作曲家の非凡なところだろうと思いますが,そこは難所になります。ご承知の通りスラーで降りてくるところです。当方もかなり苦労しました(譜例1)。ヴィラ=ロボスの曲(特に前奏曲集)は,譜面は複雑でも音はたいがい指の運指がラクなところにあるのが普通ですが,ここの部分は安直ではありません。
もとの譜面にここの運指は記されていません。色んな運指が考えられますが,一番合理的で移動が連続しない運指をつけないといけません。運指付けがポイントで,決めたその運指できっちり練習しないといけません。さらにその上で,以下のことがらが重要です。
・ゆっくり練習すること。
当たり前の事なのですが,アルペジオ部分は指が慣れてくると,ドンドン速く弾きたくなるのですが,難所のスラー降下部は左手の移動を伴うので,デタラメに速く弾くことは出来ません。ここを弾けるテンポが上限を規定します。それに全体のテンポがAllegro non troppoですから,バカ速いわけではありません。
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・拍節を意識する事。
これも当たり前の事なのですが,「なんとか弾いてやろう」とムキになると,力みだけが先行して拍節無視で弾き切ろうとしてしまいます。これが一番いけません。かなり大袈裟に拍節を取ってゆっくりしっかりテンポに入れます。もちろん,ムキにならず極力脱力する事が肝要です。テンポに入れない練習を繰り返しても決してテンポには入ってきません。
・息が続くこと。
拍節をしっかりとるのはもちろんですが,ムキになっていますと,息が続かなくて第26小節からのアルペジオに戻る前にダウンしてしまいます。息を使いすぎない事です。そのコツは,スラーの頭の音だけを歌う事です。まずスラーを入れない技術練習も重要です(譜例2)。スラーの打つ方ばかりに意識が行くと撃沈します。むしろ,スラーの頭の音だけが正確に弾ければほぼ難所克服したも同然で,打つ方は脱力して自然に付いてくるくらいにすれば良いでしょう。逆に,これが弾けないで無理にスラーを入れても非常に不安定になります。
難所のスラーを入れない練習。
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一応弾いてみましたが,久々に弾くと指が回らず少し与太っています。
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2021-03-12 00:00
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コメント(7)
ショパンのエチュードop.1の1番は大好きな曲です。それこそ超ゆっくり練習を何年もしています。(笑)
ヴィラ・ロボスと言えば思い浮かべるのが「ブラジル風バッハ」。私が持っているCDでは蒲原史子さん(ソプラノ)と福田進一さんのギターですが、何度も聴きました。
by Cecilia (2021-03-12 07:28)
Ceciliaさん,
演奏も上げたいところなのですが,なかなか録音できませんね。
ヴィラ=ロボスの一部作品はギラギラ感のある作風なのですが,膨大な作品の中には本当に美しいものがありますね。ブラジル風バッハなどもその一つでしょうか。
by Enrique (2021-03-12 07:53)
演奏を追加しました。
by Enrique (2021-03-14 15:34)
演奏聴かせていただきました。たしかにショパンのエチュードop.1の1番を思わせますね。バッハを思わせる和声のようにも思います。
by Cecilia (2021-03-16 19:51)
Ceciliaさん,お聴き頂き有難うございます。
そう言われれば,近代的和声に混ざってバッハ的な和声もある様ですね。ヴィラ=ロボスは生涯バッハを敬愛しました。
by Enrique (2021-03-16 22:36)
Enriqueさんへ
私は、 譜例1. の3拍目、4拍目を以下の運指にして弾いています。
B 0 (2) m
G 1 (3) i
E 0 (1) a
B 2 (2) m
G 1 (3) i
E 2 (1) m
D# 1 (1) i
E 2 (1)
1 2のスラーの右指は、i指のみです。
御参考までに。
慣れると結構速く弾けるようになります。
by Ken (2021-03-22 22:48)
Kenさん,コメント有難うございます。
譜例の画像に書き込んでいる運指はずっと前のもので現在は変えています。その部分に関してはご指摘の運指です。
確かにアルペジオ部分はほぼ右手の問題ですが,当方は2段目の移動スラーの方が課題だったので,本記事のような練習法を取りました。スラーの右手に関してはご指摘のようにiのみでも可能ですが,当方は同一指の連続はなるべく避けるようにしています。低音弦は譜例2よりも早くpにしています。
by Enrique (2021-03-25 05:43)