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技術的難所について [演奏技術]

ギター曲に限らないでしょうが,特にギター独奏曲ではギター一本六弦で多声を扱う関係上,よほどヤサシイ曲で無い限り技術的にキビシイ箇所が大抵の曲で何箇所かあります。全く無理ならばその曲を諦めるしか無い訳ですが,運指の工夫でクリアできれば一番良いですし,音は弾けても曲にならない場合は,多少の音価変更,和音なら無理な音を抜くなり,オクターブ移動なりで対処します。好い悪いは別に人間業で弾けないものは仕方がありません。オリジナル曲でも近現代のロドリーゴやC=テデスコ,ポンセ他ギタリストでない作曲家の作品に見られますし,鍵盤曲やバロックリュートの曲を弾く場合には直面する課題です。ギタリスト作曲家の曲ならば,弾けるようには作ってありますが,ソルにしろバリオスにしろギリギリのところを要求しているものもあります。やはり現実に演奏するためには工夫と訓練が必要です。

人によっての得意不得意もあるでしょう。種類にもよりますが左手の難しい押さえが何でもない人がいます。女性で手が小さくても難所をすんなり押さえられる人がいます。バレリーナの体の様に手が柔らかいからでしょうし,村治佳織さんのように左手の方が大分大きくなっている人もいます。右手の複雑なアルペッジオが何でもない人もいます。バルエコはアランフェスのカデンツァのアルペッジオをハープ風(グリッサンド風)に流さず一つづつ正確に弾いています。種類にもよりますから一概には言えませんが,このような技術的課題はスポーツに近い様な気もします。しかし,やはり芸術行為である事実は重要です。

私含め中年ギター愛好家にハードウェア的な高い性能は求むべきもありませんし,スポーツ的な基礎練習のスケールやアルペッジオを毎日練習する時間もありません。それをやっていたら全く曲を弾く時間がありません。幸い演奏は,手の動きの速さや強さを競う訳ではありませんので,ここはやはり柔よく剛を制する。脱力と柔軟さ,肉体への負担を最小限にした音楽的な奏法を身につける事が重要なことでしょう。

「若い頃(学生時代)は良く弾けた」という声を時々聞きますが,私の場合は必ずしもそうではありません。確かに良く指が回って,何故(何も考えずに)あんなに弾けたんだろう?と思うところもありますが,ただ勢いに任せて弾いていただけだったと思います。何事も集中してやっていれば出来て当然でしょうし。

前振りの雑談が長くなってしまいましたが,もう少し具体的に考えてみます。

当然左右の技術がありますが,共通して言えることはまずは脱力でしょう。脱力課題を言うと,「力が抜けたら弾けない」という意見もあるので,力が入っていても弾ける人はそれでいいと思います。私は力が入った時点で弾けなくなります。ですから逆説的ではありますが,難しいところほど力を抜かないといけません。当然人によっても違います。プロでもすごく力が入っている様に見える人がいますがプロレベルに弾けているので,シロートが口はさむ余地はありません。

私の例では,難しい押さえはどうしても余分な力が入ってしまう事が多いので,手がなるべく楽になるように運指,押さえる順番,離すタイミング等を曲と相談しながら決めることをします。各人各様にやっていることでしょうが,技術課題の解決策の引き出しを沢山持っている人が上手い人なのでしょう。

技術課題とその解決策の説明には非常に具体的な捉え方と観念的なものとがあります。技術レベルにもよります。初級時は具体的な方が良いのでしょうが,レベルが上がってくると,本質を突いた観念論のほうが良い場合もあるでしょう。

ギター独奏のキモはアクロバット的な手の動きをいかに自然にするかの作業です。暗譜とも絡みます。暗譜できれば,困難さをカバーする事前準備や移動後の処理が明確にイメージできますから,当然有利でしょう。楽譜を正確に記憶できれば理想ですが,技術的難所をクリアするのとはまた別問題です。技術的難所ではかなりの部分手の動きを覚えるということになるでしょう。演奏技術的な暗譜は移動のベクトルを覚える作業です。技術的難所ではその移動ベクトルが手の日常的運動よりもかなり込み入っているということでしょう。
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黒板六郎

スケールやら半音階やらンまっっったくやってません。弾きたい曲をあちこち引っ張りこんで、一曲を徹底してやることがめずらしい。なにせ浮気性というか飽きっぽいというかこんじょなしというか・・・全部あてはまります。
その曲を暗譜して、ということは指が覚えて、ということですね。わたしは暗譜といえば30年間そうでした。これって正しいんですか?
by 黒板六郎 (2012-10-06 00:17) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
私も基礎練習殆どしないので,無理の無い演奏法を心がけています。それから正直なところ,私も曲が仕上がる前に飽きます。そこは,その曲がすごく好きだとか,それを人前で弾かないといけないとかといったモチベーションだと思いますね。しかし,それがあっても終わってしまうとたちまち忘れてしまうといった繰り返しです。弾き込んだ曲も時々引っ張り出してメンテナンスしないと,レパートリーにならないですね。
暗譜法は人によって違いがあると思います。大雑把には音や楽譜で覚える人,指や場所で覚える人だと思います。プロでも後者の方は居るので,正解はなくて要は正確に演奏出来れば良いのだと思います。強力なのは両方組み合わせる事だと思います。楽譜なら理屈で覚えられますし,指なら実践的でそれぞれ強みがあります。それで自ら信頼出来る自動操縦装置が構成出来れば良いのだと思います。
私は音や楽譜で覚えていて,場所が分からなくなって落ちることが多かったので,なるべく指や場所も覚える様心がけています。特に技術的難所はそうしているので忘れる事は少ないですね。
by Enrique (2012-10-06 06:55) 

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