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フジコ・ヘミングさん死去 [雑感]

フジコ・ヘミングさんが死去されたと報道されています。
たしか報道は5月2日だったと思いますが,Wikipediaによれば4月21日に亡くなっていた様です。
いろいろ追悼番組等が出てくる事でしょう。

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イングリット・フジコ・ヘミング ピアノ名曲集

イングリット・フジコ・ヘミング ピアノ名曲集

  • アーティスト: イングリット・フジコ・ヘミング
  • 出版社/メーカー: Universal Music
  • 発売日: 2006/09/20
  • メディア: CD
本ブログの開始初期に彼女の件について少し触れた事があります。その時点でも70代後半だった訳ですので,晩年まで活動を続けられたエネルギーに敬意を表さなくてはなりません。

一時期天才少女と騒がれた彼女も,長い期間人々の記憶からは遠く忘れ去られた存在でした。
1999年にNHKの番組で取り上げられたことがきっかけで人気に火がつき,一躍クラシック音楽の有名演奏家となりました。

クラシックの音楽家。上手い人はいますが,一般人にまで広く人気が出るには,話題性が重要です。

その意味で,彼女の数奇な人生は話題性には事欠かないものでした。しかし,テレビ等で取り上げられなければ,忘れ去られたままだったのではないでしょうか?


別に彼女のことをどうこう言った訳でもなくて,ちょこっと話題に出しただけで「専門家からは評価されてないですよ〜」と言われた事があります(前のギターの先生から)。「そんな事ワタシだって分かるわ〜」と思いました。むろん,アカデミズムからは評価されなかっただろうとは思っていましたから。そう聞いて彼女の事が余計好きになりました。

ピアノ演奏は正確無比なものが主流だったと思います。
ポリーニにアシュケナージに,アルゲリッチに。むろんそれぞれ素晴らしいものです。一つの到達点だと思います。ポリーニも先日亡くなりました。困ったことに,人間がやる音楽ですから「非の打ちどころがない」というのもまた仇ともなるものです。たまには変なのも聴いてみたいと。むろんテキトウで良いというものはなく,不完全でもそれを納得させる歌心やその味わいでしょうか。

極論してしまえば,一般人の多くは,音楽そのものを聴いているというよりも,その人の人となりや名声を聴いているのでしょう。

彼女を取り上げ一躍人気者にしたNHKの番組*は,その後ヘマをやらかします。「佐村河内問題」です。当時「佐村河内守の作品」に関しては,名のある専門家も評価していました。おそらく,フジコさんの事もあるし,同局の番組の一般大衆に対する権威や話題性がそうさせたのでしょう。種明かしされてからなら,いくらでも批判できますが,そのことを批判する気にはなれませんでした(NHKの番組制作の一端は明らかになりましたが)。


「ぶっ壊れた鐘があってもいいじゃない。機械じゃないんだから。」
の名言を残したフジコさん,機械じゃないので亡くなってしまいました。

*フジコさんは「ETV特集」,佐村河内さんは「NHKスペシャル」でした。
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REIKO

先日、再放送されたフジコさんの番組を見ました。
(1999年の時は見ていません)
TV放映がきっかけて大ブレイクしたのだから、それなりに派手な番組なのではという予想に反して、過去の映像があるわけでもなく「猫と一緒に暮らしているピアノが上手いお婆さん」の日常ってだけの地味な内容に驚きました。
どうしてこんなので一躍話題になったのか…彼女の数奇な人生に加えて、多くの人にとって「お婆さん」と「ピアノ」の取り合わせが意外&驚きだったということなんでしょうね。

ピアニストと言えば若い男女がバリバリ弾いている姿を連想し、そうでなければピアノは子供の習い事みたいなイメージしかない人達にとって、「世界で一番難しい曲」(リスト「ラ・カンパネラ」をそう紹介していた)を弾く「お婆さん」⇒スゴい!感動!!!になったんだろうなと。
実際Youtubeには「おばあちゃんが弾く」を売り?にしているピアノ演奏のチャンネルがあり、60代の普通に上手い方なのですが、賛辞のコメントには「おばあちゃん」に過剰反応しているものが少なくありません。
記事中の「極論してしまえば~」の一文、まさにその通りだと思います。

by REIKO (2024-05-07 15:20) 

Enrique

REIKOさん,
面白い人がいるのだなとは思いました。
猫や絵が好きなのは共感を持てましたが,演奏に関してCDを買ったり演奏聴きに行ったりする様なファンではありません。上手い演奏ばかりでは無くて,下手くそな演奏もあっても良いとは思いますが,一般受けするというのがどういうものかという事も図らずしもあらわになりましたね。むろんマスコミの影響力も大です。
佐村河内守さんの件では,もしゴーストライターが名乗り出なければ,ワグナーの課題実施程度の曲が「魂の名曲」になっていたかも?とか(実際そのような触れ込みだった)と想像しますね。
by Enrique (2024-05-08 07:54) 

アヨアン・イゴカー

お二人のコメント読んでいて、同じ様に感じる人がいたことが分かりました。
マスコミによって作られる「スター」のが可成り多いのではないかと、捻れくれていると言われるかもしれませんが、感じています。特に、お笑いタレント、俳優は、広告会社、プロダクションの戦略、営業力、資金力などの有無で、天国と地獄ほど状況が違うのではないか、とまで。
自分自身の判断力、美意識を持っている人々にとっては、自分が自分の物差しで判断しますから、マスコミの評価は参考にしかなりません。
by アヨアン・イゴカー (2024-05-08 21:21) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
マスコミによって作られる偶像はかなり大きいと思います。
そしてそれはマスコミが狡猾というよりも,マスコミも衆愚の一端なのだろうと感じています。例えば,かつて新聞記者とかはかなりの知性を持っていたはずですが,今は一般大衆と大差ないのでしょう。むしろ,一般大衆を引き上げるというよりも,一緒になって馬鹿騒ぎをするのが正しい姿勢と思っているのかもしれません。
by Enrique (2024-05-09 20:42) 

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