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魔笛の主題による変奏曲(5) [曲目]

前回よりつづく。

第2変奏は,ホ短調。第1変奏の興奮を冷まし,優雅に弾くとある。即興的とも。
ゆっくりで技巧的でないため,ちりばめられたターンや6連符のスラーがきれいに決まらないとかえって目立ってしまう。
フレーズおわりの倚音の強調と解決はもちろんのこと,ここはやはり和音の美しさ,低音の動きなどをていねいに扱うことが必要だろう。絶妙に調性をゆらせながら,特に後半はホ長調への回帰を連想させる。テーマの断片が散りばめられているが,かなり変形されている。暗譜の不安は少ないのだが,序奏以外では一番度忘れしやすい箇所である。

第3変奏はさらに自由な変奏で,殆どテーマの痕跡は無く,和声進行だけがその記憶をとどめるだけ。しかし,(2)でも触れたが,テーマのかけあいは残っているので,そこをどう弾くかである。後半の2小節づつは音色を変えたくなる。鈴木氏の解説にも強弱や音色を工夫して弾き分けたほうが良いとあるが,余りわざとらしく無いほうが好みである。間にしっかりブレスを入れれば,唐突に変わった感じはなくなる。おわりの4小節は第4変奏につなげるためfでしっかり弾くべきとのことである。

第4変奏は,技巧的で,リズミカル。切れ味鋭い変奏。ギタリスト作曲家ソルの面目躍如と言ったところだろうか。第3変奏の伸びやかさと好対照の変奏だ。最後の和音は右手をしっかりセットしてからバラせば,安定して弾ける。この変奏は一見難しそうだが,右手運指をきちんと決めれば,うまく弾きやすく出来ていると思う。解説ではリズムがくずれないよう注意がある。

いよいよ終盤の第5変奏は,コーダに向かって突き進む。スピード・滑らかさが必要である。脱力したスラーの技術が重要。スラー後の開放弦の音が汚くならないよう注意が必要だ。これはテーマ部分とも共通だが,何分スピードが速い分,細心の注意を持って離さないといけない。通常のスラーは音をはっきり出すのがポイントだが,ここの部分は,音が出すぎて汚くならないようセーブすることが重要だ。また前半後半それぞれの後半部分の3連符のアルペッジオの運指は通常aimが指定され,解説ではそのバランスに注意するようにある。ここは,当方mpiで弾いていた頃もあった。指の調子と相談で良いと思う。この辺は練習法を含めアザバジックのYouTubeの画像にもあった。

止まらずコーダに突っ込む。私はメロディをアポヤンドで弾くが,現代奏法では,はっきりさえ出れば必ずしも必要ないだろう。右手が良くコントロールされていないと,スピードを上げるとぐしゃぐしゃになってしまう。カネンガイザーはこの辺の右手のコントロールの為,ジュリアーニのアルペッジオが良いと言っていた。
最後の3連符のスケールは1回目がはっきり弾いて2回目スラーで弾くのが定番(セゴビアスタイル)になっているが,必ずしもそうでなくても良いと思うが,そのように弾くと音量と音質が自動的に変わって変化がつく。ここらへんはやはり最後の盛り上がり。大見得を切らないといけない。多少わざとらしくても,ハデハデでよいと思う。3連符のスケール1回目での私の運指は,和音からの3連符に間が空くといやなのでp指も入れているが,これも指の調子と出る音との相談で良いと思う。
最後の和音4つの弾き方を,フォルテ・フォルテ,ピアノ・ピアノにしたのがセゴビア編だが,フォルテ・ピアノ,フォルテ・ピアノでも良いのではないかと思う。結構終わり方も色んなバージョンがあるが,終わりから6小節目からの八分音符の4つの和音の動き2回を,最後の和音はそれらを四分音符2倍(実際には休符)で拡張して締めくくっていると考えると,「あーおわった」といったような気の抜けたぞんざいな和音の弾き方はありえない。強弱は解釈次第だが,少なくとも最後から2番目の属七和音(B7)は強く弾いて古典の語法でていねいに終わるべきと思う。(つづく)。

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