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楽器のグレードと私のギター遍歴 [楽器音響]

前回最初酷い楽器で始めたという記事を書きました(その前にも書いています)。

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失礼ながら余り上手でない方で数百万円の楽器を使う人もいますし,凄く上手いのにあまり高くない楽器を使っている人もたまにいます。国産楽器でよほど酷いのを除けば,今はなき松岡良治とか,現在も健在の小平とか,矢入とか,荒井貿易のアリアとか,上位クラスのものであれば十分使えると思います。かつて60年代70年代のギターブームの頃は,他にも色んなブランドがありました。東海楽器は現在でも,鈴木バイオリンもかつてギターを作っていました。ギターブームの頃には他にも色んなギターメーカーが跋扈していました。

忘れてはならないのが楽器界のガリバー,ヤマハです。
現在でも,2,3万円の量産品から,100万円オーバーの手工品まで揃っています。何分ブランド力抜群で,酷いハズレはない分やや割高という面はあると思います。謎の楽器「ダイナミックギター」の中古価格を見て驚いたことがあります。

ヤマハと来れば,カワイですが,かつては作っていたのでしょう。現在カワイのクラシックギターの中古品を時折見ます。当方弾いてみたことはないですが量産ギターに関していえば,ヤマハの古いものに比べて遜色はなさそうな感じです。


かつてはクラシックギターの方が安かったのでした(むろん量産品でですが)。それは,形が決まっていてコピー製造がやり易い事,スチール弦ギターに必要なネックのトラスロッドが必要がないことも理由だったかもしれません。その代りなのかネックに黒檀製の補強を入れている楽器があります(有名どころではホセ・ラミレスIII世,河野賢)。ただ「補強」効果はあまり無く,むしろ材質を指板と揃える事による「補償」効果と当方は解釈しています。

むろん,海外でも量産楽器は色んなメーカーがあり数も多いと思います。
当方も所持した楽器としては,スペイン製のアントニオ・サンチェスがあります。これはスペインらしさのあるしっかりとした楽器でしたが,何分塗装が分厚くて鳴りにくかった記憶があります。今作っているのかどうか知りませんが,マンドリンで有名なイタリアのカラーチェとか,アルゼンチンのアントニオ・カーサ・ヌーニェスとかは驚くほど安くても,かなり質の良いものもあるようです。

量産楽器で有名なメーカーでも,おそらく最高級グレード品はそれなりにしっかりとしたものでしょうし,手工高級品のメーカーであっても廉価版を出しているケースもあります。低位は量産ギターでも高級品は手工楽器という場合も特に大手メーカーではあります。


ビジネスとして考えた場合,100万円の楽器を1本売るのと10万円の楽器を10本売るのでどちらが良いか?という事にもなるのでしょう。高級ブランドのメーカーとしては,ブランドイメージにキズがつくお安い品は売りたく無いでしょうが,高級品が全く売れないとなると,背に腹は代えられず,数が売れる廉価版で凌ごうという事になりそうです。

クラシックギターの有名高級ブランドとして挙げられるのは,スペインのホセ・ラミレスでしょうか。ラミレスはIII世 (1922–1995)で頂点を極め,世界中のギターリストに愛用されました。IV世 (1953–2000)は早世してしまったため,現在ではV世のアマリア・ラミレスさんが店主を務めています。同メーカーではプロも使う1aやセンテナリオの様な楽器もあれば,エストゥーディオ・モデルと呼ばれる廉価版も販売しています。

日本の高級ブランドとしては何と言ってもの河野ギター製作所でしょう。創業者の河野賢は戦後ギター製作を始め,60年に渡西してアルカンヘル・フェルナンデスに師事していますが,独自の構造で1967年にベルギーの国際ギターコンクール(エリザベートコンクール)で金メダルを受賞しました。現在は後継の桜井正毅氏(1944-)と君島聡氏(1983-)が後を継いでいます。桜井正毅氏も88年のパリ国際ギター製作コンクールで優勝しています。


挙げたラミレスや河野は無論高級ギターブランドですが,職人が1人でこつこつ作る手工品の楽器となると,様相はまたがらりと変わります。月に1本程度の製作で,材料費も時間も掛かりますので,それなりのお値段になります。100万円前後のお値段にはなります。

日本の個人の製作家はかなりの数になるのではないでしょうか。
むろん,スペイン,イタリア,ドイツ,イギリスは高級ギターの産地です。アメリカはエレキやアコギばかりでなくクラシックギターのメーカーがかなりあります。各国で超有名ブランドをあげることができます。あと忘れていけないのが,スモールマンやサイモン・マーティ,ジム・レッドゲイトで有名なオーストラリアです。日本以外のアジア諸国のブランドは余り知りませんが,これから色々出てくる事でしょう。中国ブランドで有力なものもあるようです。

まず,当方が現在所持する邦人製作家の楽器は,星野良充さんと堤謙光さんです。どちらもご存命中の方ですが,星野さんは,製作は引退されているようです。堤さんは妻が弾いています。あと,学生時代アルバイトして買った手工楽器,あと西野春平さんの初期のものが1本,松岡が4,5本?あります。

海外製としては,アルカンヘル・フェルナンデス'65を現在メイン楽器として使っています。必要に応じ他のものも使っていますが,過去長く使った楽器としてはマヌエル・ベラスケス'63です。911テロの年アメリカで購入したもので再開後長く使って来ました。この楽器は現在長期お休み中ですが,以前プリンセス・ピンクさんに弾かせてもらったハウザーI世とそっくりな楽器です。若い頃良い楽器を弾けなかった恨みなのか,ひところ次々と購入してしまいましたホセ・ヤコピ'77ホセ・オリベ’66オットー・フォーヴィンケル2004などです。フォーヴィンケルは余り日本では知られていない様ですが,オランダ製でアルカンヘルとオリベの中間くらいの性格の楽器で悪く無いと思っています。

過去に持っていて手放したもの数知れずです。最初の白いギターは姉に,お安いアリアは友達に。松岡が数本,アントニオ・サンチェスは職場の人に買値の半額位で譲りました。一時期所有していた楽器としては,茶位幸信さんが各種グレード数本,それと河野の古いものは当ブログの録音で使ったこともありました。そういえばヤマハに全音にギタルラ社,鈴木バイオリン製も一時期所持していて,知り合いなどに譲りました。その他の量産品では既に忘れているものもありそうです。
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枝動

こんにちは。
すごい数をお持ちなんですね。一財産になりますね。
by 枝動 (2022-01-05 13:15) 

風神

やはりクラシックギターの方は、知らない所ばかりです。唯一ヤイリは知っています、アコギもありましたね。メーカーもたくさんあるんですね。
フォークの方は、大学の時ギブソンやマーチンが人気でした。私は安物の国産モーリスでしたね。
by 風神 (2022-01-05 22:03) 

Enrique

枝動さん,
名のあるもので10本程度,安いものも入れると20本くらいありますでしょうか。気をつけていないとあっという間に増えてしまいます。
プロの方でも数本の方とか数十本の方とか色々ですね。
by Enrique (2022-01-06 06:15) 

Enrique

風神さん,
両方作るメーカーもありますが,だいたい別れています。楽器の構造が全然違います。
フォークギター(アコギ)ではマーチンやギブソンが高級ブランドですね。もともとは個人製作だったものが会社組織になったものでしょう。マーチンのガットギターというものも弾いてみたことがありますが,???でした。
クラシックギターの高級品は,ほぼ個人製作になります。多くの製作家が細々とやっています。
by Enrique (2022-01-06 06:27) 

U3

スペインのマドリッドで見たホセ・ラミレスは、高くてとてもじゃないが手が出なかった。というより循環コードもまともに弾けない自分にとって宝の持ち腐れである(@^▽^@)
by U3 (2022-01-06 14:21) 

oga.

凄い本数ですね。私が買ったクラシックギターは、前述の親にプレゼントされた安い1本と、学生の時にアルバイトして買った田村の15万円のギターの2本だけです。それでも学生にとってはバイトで大変な金額だったなあ...

私の田村は、表板が杉のギターですが、杉は寿命が10年。ずっと弾き続けたいなら松のギターが良いのだが、音が出るようになるまで数年かかる、なんて当時は言われました。これって本当なんでしょうか?

そうなると、実家に眠る私の40年前のギターは音が出ないってことになっちゃうのですが!?
by oga. (2022-01-06 23:04) 

Enrique

U3さん,
かつてホセ・ラミレスIII世は垂涎の的でしたが,ブームが去ると,III世の下で働いた優れた職人たちは次々に独立し,本家より高評価の職人もいます。
by Enrique (2022-01-07 07:17) 

Enrique

oga.さん,
私も学生時代アルバイトで買った国産手工楽器(15号)を長く使っていましたが,急激に増えたのは再開後ですね。
「松は音の出が遅いが寿命が長い,杉は直ぐ音が出るが寿命は短い。」というのはよく言われたものですが,現在はほぼ間違いだったと言えるでしょう。楽器に関するその手の話は怪しいものが多いですね。おそらく松(スプスース)はヴァイオリンなど他の弦楽器とともに歴史的に使われて来たので長く,杉はラミレスIII世によって初めて使われた素材だったので,「良く鳴るが弾き潰れるのも早い」とまことしやかに言われたものでしょう。当時の常識は疑ってかかった方がいいでしょう。
by Enrique (2022-01-07 07:25) 

oga.

そうですか、やっぱり間違いですか。とりあえずほっとしてますが、私の40年前のギターがちゃんと鳴るかどうかはまた別問題でしょうね。

その松と杉のギターの話が出たときにこうも言われました。松はずっと音が出るが、一生ものとは言えない。弾き続けていて新しいギターが欲しくならないってことは、その人が上達してるとは言えないと。何かEnriqueさんのギター遍歴を見ていると、なるほどなと思ってしまいます。
by oga. (2022-01-11 22:53) 

Enrique

oga.さん,
確かに弾いていないと音が出てくるまで時間が掛かると思います。
ただ長期の弾き込みと短期の弾き込みがある様で,短期の方はほんの数分で出てきます。また弾き出せば以前以上にも鳴ると思います。
ずっと弾かれてない結構良い松の楽器を見てくれと言われた事がありますが,音が全然出なくて困った事があります。楽器に詳しくない方だったので,「全然出てないですねー」とも言えずごまかした事はあります。
by Enrique (2022-01-12 07:06) 

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