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ソルの何番? [雑感]

ギターを弾く人と話をしていると,「ソルの練習曲の何番」と言う表現を聞くことがあります。

たいがいの方はご自分が弾いた曲集の何番目だったと言うことで言っているのでしょうが,「月光」とか,「ハ長調のアルベルティ・バスのやつ」,とか,「3度が連続するヤツ」とか,あるいは調や拍子の特徴などで言って貰えば分かるのですが,たいがい3番が良いとか19番は大変だとか。と言う話になります。セゴビア編の場合が多いのですが,場合によってはイエペス編だったり,阿部保夫編だったりすると,その番号を言われてもすぐには分かりません。全音のソル練習曲集には西野博編の「32の練習曲」というのもあります。いずれもそれぞれの編者がソルの100曲以上ある練習曲をつまみ食い?して並べた番号なので,その曲集を当たらないと確認できません。

ソルの練習曲は,Op.6と29合わせて24曲,ソルが自他共にetude(練習曲)としたのはこのOp.6と29のみですが,「難しすぎる」と言うブーイングで,Op.31,Op.35,Op.44,とどんどん易しくなり,Op.60に至ってはほぼ初心者向けになりました。当時は楽譜の売れ行きが収入を左右しますから,意に反して?易しい曲を書かないといけなかったのでした。「易しくしろ!」の大合唱に,ソル先生かなり腐心した様で,それが曲名にも現れてしまっています。この辺の話は,以前記事にしました。

一番良いのは本来の作品番号で言って貰うことです。そうすれば曲の難易度も大体分かります。「ソルの練習曲やっている」と言われても,上で書いたようにOp.6,29とOp.60とでは上級と初級の大きな隔たりがあります。

ソルの練習曲は音楽性がありますので,弾き出すと結構引き込まれてしまいます。「美しすぎて却って技術練習にならない。」と言われる所以です。それからOp.29の後半などに行くとかなり難しく,仕上げるのに時間もかかります。よくOp.29-13の変ロ長調のアルペジオ曲はセーハが大変で難しい難しいと言われますが,むしろこれはOp.29の導入曲です。そうおっしゃる方は,Op.29の他の曲を弾いていらっしゃるのかな?と思います。Op.29-17や22,23の方が技術的にも音楽的にもずっと難しいと思います。

Op.6と29は,ソルの存命中は相当難曲とみなされたようで,「もっと易しく,もっと易しく」の大合唱に押されて,どんどん易しくして行き,とうとうOp.60では初級レベルになります。他にも,「 〜 ,最も辛抱強くない人たちに」ささぐ「やってみましょう」Op.45,「ある種の愛好家のため」と称して「これならよろしいか?」Op.48,「ついにやった.」Op.51など変わった名称の曲があります。

要望に従って作った曲は,やはりそれなりの内容かなと言う感はあります。
教育目的で真面目に?作った練習曲は非常に易しいものであっても,音楽的内容はあると思います。
Op.6と29は最もソルらしいものですが,Op.31やOp.35からもよくピックアップされます。「月光」はOp.35-22ですし,「夢」はOp.35-17といった具合です。ソルの場合,練習曲集は6集(Op.6とOp.29をバラで数えて)あります。Op.6と29で24曲,Op.31で24曲,Op.35で24曲,Op.44で24曲,Op.60で25曲としますと,合計121曲あります。当方も全部は弾いた事はないですが,セゴビア編の20曲にプラスして易しい曲を20〜30曲くらいでしょうか。もっとも,Op.6と29の24曲が一番大変なので,これをこなせば,全曲制覇はさほどではなさそうです。
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現代ギター臨時増刊号「ソル練習曲と教則本全訳」pp.68-76 (2009) に載っているリスト。Segovia編,Yepes編,Carlevaro編の番号も見えます。Abe編とNishino編も書き込んでみました。
現代ギター 2009年04月臨時増刊号 ソル 練習曲と教則本全訳(準拠CD付)

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  • 出版社/メーカー: 現代ギター社
  • 発売日: 2009/03/12
  • メディア: 雑誌

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たこやきおやじ

Enriqueさん

参考になりました。(^^;


by たこやきおやじ (2021-07-02 00:49) 

Enrique

たこやきおやじさん,
参考になれば幸いです。
やはりクラシックギターにカルカッシとソルは外せませんね。
ソルは数が多いので摘み食い曲集が多いですが。
by Enrique (2021-07-02 05:27) 

Cecilia

「これならよろしいか?」「ついにやった」、おもしろいですね。
楽譜の売れ行きを気にして簡単にする、そんなことがあったのですね。
過去記事も拝見しなるほど~と思いました。
ソルの「月光」「夢」、どんな曲なのか気になります。
by Cecilia (2021-07-02 08:04) 

Enrique

Ceciliaさん,
むろん真面目に書いた曲も多いわけですが,当時のヨーロッパはアマチュアギタリストが大量に発生して,評判の高いソルの曲を易しく弾きたいと言う要望が強く,ソルを悩ませたようです。ひどいのになると,作曲者に無断で簡単に書き直して出版してしまう事すら行われたようです。
「月光・夢」いずれも後世の人(日本人?)が勝手につけた名前です。いずれも,本ブログで過去に弾いて居ます。
「月光」Op35-22(セゴビア版5番)
https://classical-guitar.blog.ss-blog.jp/2016-03-05
「夢」Op35-17(セゴビア版6番)
https://classical-guitar.blog.ss-blog.jp/2016-03-08
by Enrique (2021-07-02 16:13) 

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