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ソルの20の練習曲(セゴビア編)再考〜第6番〜 [演奏]

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セゴビア編ソルの練習曲第6番はOp.35-17ニ長調です。

これも「月光」同様,ソルの練習曲として親しまれています。こちらは「夢」とも称される様ですが,どのくらい一般的なのかは知りません。「練習曲の第何番」では味もそっけもないですから,標題が付いていたほうがなじみ易いという面はあるでしょう。ただ,イメージが固定してしまうので作曲者の意図を無視してむやみに副題を付けるのもどうかとは思います。

こちらはOp.35の曲集中では17番と,「月光」の22番よりは前ですが,技術的には必ずしも易しくは無さそうですので,セゴビアは順序を入れ替えたのでしょう。左手は「月光」よりもややきついかもしれません。力を抜きながら左手の押さえを離さないと,アチコチでクキ・コキと擦過音が出ます。

上声がメロディになっていて,ヴァイオリンの弓ででも弾ける様な譜づらです。この辺りのソルの曲の特徴は,音は少ないのに豊かな響きになっている事です。音楽の基礎とギターの機能を知り尽くした達人の技でしょう。

なお,冒頭アウフタクトの不完全小節の音符は原典版では4分音符ですが,セゴビア版では8分音符にしています。確かに全体を貫く音型と統一は取れるのかも知れませんが,ソルの記譜は1拍で入っているので,それを尊重する事にしました。ソルの100曲以上の練習曲の中で,3拍子および4拍子の曲で8分音符で入っている楽譜はありません(2拍子や8分の6拍子の曲ではありますが)。



また,セゴビア版では,終了から3小節目の和音を変えています。原典ではB7→Emなのですが,セゴビアはBm→Emにしています。ここでは原典通りに弾いてみました。



以下私の録音です。


後注

終わりから3小節目の4拍目のバス音はGです。この楽譜(Simrock版)のミスプリの様です。
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コメント 12

アヨアン・イゴカー

こういう素直な旋律は、歌詞を付けて歌いたくなるような気がします。
夕食後、寛いでいる時に拝聴し、心が穏やかになりました。
by アヨアン・イゴカー (2016-03-08 23:23) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,聞いていただきありがとうございます。
ゆったりとした付点音符が揺蕩って和音の色を変えて行く,そんな感じです。この曲,誰かが「夢」と愛称をつけていますが,ご感想の様に「くつろぎ」とか「穏やか」の方がぴったりな感じもします。
by Enrique (2016-03-09 08:45) 

Hagi

メロディが綺麗に流れていますね。
フレーズ頭のアウフタクトも上手く弾かれていて自然に聴けます。
この曲、今年のギター文化館シニアギターコンクールの
課題曲にもなっていますね。
by Hagi (2016-03-10 09:10) 

Enrique

Hagiさん、ありがとうございます。
シニアギターコンクールの課題曲ですか。あのコンクールはかなりレベルが高いです。皆さん、原典で弾かれるのか、セゴビア版で弾かれるのか(版指定ですか?)興味あります。
by Enrique (2016-03-10 16:39) 

黒板六郎

きれいなメロディですねえ。ただラストはセゴビア版を聞き慣れているので、ちょっと違和感あります。
こんな珠玉の小品をしっかり弾きこなすのが、上達の王道なんでしょうが、ついついバッハやアルベニスなんぞにちょっかいだしては、中途半端に終わるわたしの半生です。
by 黒板六郎 (2016-03-10 22:14) 

Enrique

黒板六郎さん,ありがとうございます。
私も当初セゴビア版を弾いて,その後原典版を弾いてみたところ,「あれ間違ったかな?」と思いましたが,弾いている内にこちらの方が良くなって来ました。メロディを歌ってみるとこちらが自然です。この辺の練習曲はシンプルなので,ソルは和声をちょっと工夫しているようです。
やはりソルはギターをやる人間には避けて通れないものだと思います。バッハやアルベニスをやってからでも,戻ってみても良いと思います。
by Enrique (2016-03-11 05:01) 

Hagi

ギター文化館のwebサイトに楽譜が提示されています。
原点版だと思いますが、終わりから3小節目の4拍目のバス音はEでなくてGになっていたと思います。
by Hagi (2016-03-11 07:52) 

Enrique

Hagiさん,ご指摘有難うございます。
ここに挙げた楽譜もあやしいですね。IMSLPからとったそれらしきものを切り張りしましたが,私の演奏ではそこのバスはGで弾いています。私が演奏に使ったMelbayのComplete Sor Studies for Guitar (Book) by David Grimesの楽譜は,ギター文化館提示のものとほぼ同一のものだと思います。
(4拍目のE音ですが,3の指番号が見えますので,音符の間違いの様です。)
by Enrique (2016-03-11 13:06) 

クライム

よろしかったら教えてください。メロディーを弾く右指は固定されているのでしょうか?私が試しているのが、①付点四分音符m→八分音符i→m→i ②付点四分音符m→八分音符m→m→m。また、棒が下向きの音は、ソルの場合は低音部を示しているのでしょうか?その場合は基本的には親指で弾くことになりますか?Enriqueさんはどの指で弾かれていますか?
by クライム (2016-03-22 10:17) 

Enrique

クライムさん,私は余り意識していませんでしたが,
多分,冒頭から,i | a, p, i, a, m, p, i, a | m, p, i, a, m, p, i, m
といった案配で弾いています。だいたい指を弦に割り振っています。やっつけで録音しましたが,実はまだ練習中です。
ソルはaは余り使わなかったはずで,「月光」では私はaは余り使わずに弾いています。アポヤンドするかしないかでも最適な指使いは変わると思います。私の場合,アポヤンドするとaは余り使わず,しないとaを使う傾向にあります。
もちろん指をきちんと決めて演奏する方が良いとは思いますが,大事なのは音ですので,メロディラインを良くつながるように音を良く聞いて演奏してみて最適な指使いを決めるのが良いと思います。
この演奏ではメロディをアポヤンドで弾いていましたが,アポヤンドを止めてみたところその方が上手く行くようです。
あと,ソルはメロディとバスその他は書き分けていますが,棒が下向きの音が全てpと言う事は無いと思います。いずれも棒が下向きといえバスと内声は性質が違いますので,この曲では基本的にpの連続は無いはずです。
by Enrique (2016-03-22 20:52) 

クライム

楽譜を見て四つの指を単純に割り当てると  m/a,p,i,m,a,p,i,m/a,p,i,m,a,p,i,m/・・になりますが、「メロディラインを良くつながるように音を良く聞いて演奏」を参考にしていろいろ試してみます。ありがとうございました。
 それから、何も知らない私にはこの曲は2声の曲に思えるのですが、本当はどうなんでしょうか?もしよければ、「ソルはaは余り使わなかったはず」という点も教えていただけますか?
by クライム (2016-03-23 11:14) 

Enrique

クライムさん,冒頭③,①に対して,m,aはやや弾き難いかなと思います。
それから,この曲は3声だろうと思います。低音は対旋律というよりも分散和音なのではないかと思います。セゴビアも2声と捉えている様で一部スラーを入れていますが違和感があります。
ソルもカルカッシもaは余り使っていない様です。B.ジェファリなどが指摘していたと思います。4つの同時和音を除けば(それもやろうと思えば,ppimで弾けますが)試しにaを使わずに弾いてみると,却ってラクになったりします。
ソルはジストニアでaが動かなかったのでは?という説もありますが,私は半信半疑です。両人ともピアノを弾きますから,右手のaもchも使うはずですが,ソルは教本でギターではなるべく強い指を優先的に使うとも言っています(左指の事だったかも知れませんが原則としては共通なのでは)。
by Enrique (2016-03-24 05:49) 

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