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たまに見たTV番組から [雑感]

週末の音楽番組などを除いては,TVは見ない事にしています。
余りにもツマラナイ上に,その癖変に引っ張られて,時間だけムダに潰すからです。

先日息子が夜行バスに乗るというので,送って行くことになりました。
アルコールも飲めないし,いつもと勝手が異なってしまったので,見るとはなしにチェンネルをスキャンしながらパラパラ見ていたところ,その中で少し興味を惹かれる番組がありました。NHKのEテレの又吉直樹が司会をしている番組で,「又吉直樹のヘウレーカ!『大舞台で実力を発揮できますか?』」というものでした。

プレッシャーの正体を調べる簡単な実験。おもりの落下を見ながらやるのと目をつぶってやるのとで筋の緊張状態を比較。
ものすごくあがるという漫才コンビ「ゆにばーす」の「川瀬」と,リラックスしすぎてセリフを忘れてしまうという相方の「はら」がゲストで,東京大学大学院情報学環・准教授の工藤和俊という方が専門家として登場しました。

緊張してあがる状態など,本ブログでも今まで取り上げてきたような指摘内容だったと思います。又吉がサッカーをやっていた事,工藤氏がスポーツ科学が専門だということもあり,スポーツ関係の話が多かったように思いますが,ゆにばーすの2人の話のほか,ピアニストのパフォーマンスの話が少し興味を惹きました。アマとプロのピアニストの脈拍数を比較すると,アマはドキドキしまくりだが,プロは演奏と演奏の合間は下がっている,といったデータだったと思います。まあそんなものだろうと思います。

予測がつかないとあがる。というのも簡単な実験でやっていました。
本ブログでも,切り口は違いますが「予測できればこわくない」という記事を書いた事があります。
本番対処法として,大舞台で弾いているという具体的なイメージを持って練習するのがプロの練習法だと紹介されていました。

この辺は,
「練習は本番の積りで,本番は練習の積りで」
という当ブログの初期にとりあげた誰かの言葉とも共通します。

当番組でちょっと目新しい言葉が,「意思決定」でした。
データ分析などの研究過程を端折っているせいか,やや分かりにくかったですが,具体的なデータ分析によって気の迷いが吹っ切れたということでしょうか。不調だった石川遼が昨年日本プロゴルフ選手権に優勝した事が取り上げられていました。むろん十二分なプロの技術があった上で,狙うポイントがはっきりしたという事なのだろうと勝手に解釈しました。

ギター演奏で「何となく良い演奏をしよう」としてもダメな事が多いです。何となくですから,具体的なイメージがありません。その結果たいがいは「何となくかなり悪い」演奏になるものです。やはり具体的なイメージを持つことが肝要だろうと思います。

しかし,本番でよい結果を出すための具体的手法となると,これがなかなか難しいのだろうと思います。
現在でも盛んに研究されている古くて新しい課題です。研究対象になるという事はその決定版がないということでしょう。科学的手段としては,脈拍測定や筋の緊張度合,それらを含め他の定性的データの数量化解析くらいでしょうから,データのとり方や解析法によって様々な側面が見られるものと思います。

かつてスポーツの分野では根性論が幅をきかせたようです。
血の滲むような努力をして前評判は上々,しかし本番であえなくダウンという例が多かったような気がします。ただいつごろからか,科学的練習法が取り入れられて,本番でも結果を出せる選手が増えてきたように思います。

誰でもそうかは知れませんが,本番前は漠とした不安を持っているものです。その不安を打ち消すため本番前ギリギリまで弾きまくるというのはギターの発表会ではありがちな事です。ピアノなど自分の楽器が使えない場合ではムリな事が,自前楽器を使うギターでは容易に出来てしまいます。それはメリットではあるのですが,迫りくる自分の番を待つ時間の恐怖に近い不安を打ち消す練習になってしまいます。

番組に出ていた「ゆにばーす」は,本番直前に何十回だか練習を繰り返していたそうです。
本番前の繰り返し練習がそんなに効果があるものか?ということです。
番組では,否定的見解だったと思います。これには全く同意です。
「単純な繰り返し練習のし過ぎは良くない。」それをしてナントカ*という状態に陥ると,却って本番ではコントロールが利かなくなるのだそうです。

これには心当たりがあります。先日亡くなったレオン・フライシャーの言葉です。
「真面目に練習しているからいいと思うかもしれませんが   
「そのような馬鹿げた心の無い練習が脳を混乱させるのではないかと自分は思う。」

直前弾きまくる心情としては,恐らく前日まで本番を想定して何十回も何百回も練習を積んだはずですが,「まだまだ上達途上」なので,直前まで練習して,技量を少しでも高めて,その最も良い状態が本番に生かされるだろう。という希望的観測がそうさせているはずです。

「まだまだ発展途上」と思うのは,悪くない様です。完成を求めるよりは,「まだまだ先がある」という事で,気持ちの余裕もできます。しかし,その感情でひたすら弾きまくるのはたぶん良くないのです。

上がるのは日本人ばかりではないですが,「まだまだ私なんて」という「謙譲の美徳」はたぶん多くの日本人にはあります。その姿勢は悪くないですし,努力を続ける姿勢として正しいと思いますし,そもそもその様に教育されてきましたので,そのドグマから脱出することは容易ではありません。

クラシックギターをやる人は真面目な人が多いと思います。かくいう当方も,妻からは「ちゃらんぽらんな人」と評されますが,たぶんそれは妻の方がよりクソ真面目と言うだけの事で,当方もかなりそこそこ真面目なんだろうと自負します。えてして真面目な人は「まだまだ私なんて」と修行僧の様に,ひたすらフレーズを弾きまくります。


しかし考えてもみましょう。「まだまだ発展途上」とはいえ,前日までの練習で上達は飽和点に達しているはずです。飽和していれば,それ以上ないわけですから,結果はそれ以下しかありえません。問題は出来のバラつきです。直前の少ない時間に上達のかさ上げをするよりは,ポカをしない注意の方がより戦略的でしょう。

それに,本番前のネガティブな感情はよろしくありません。結果はそのとおり「やっぱり私なんて」な演奏になってしまいます。胸を張ってにこにこして,自分が長年愛好する楽器の演奏を楽しむように気持ちを持って行く必要があると思います。弾きまくるよりもイメージトレーニングの方が良いようにも思います。

控室で黙々と弾きまくる状態と,明るいステージに立った時とでは,当然環境が全く異なります。音の響きも違いますし,生身の大勢の人たちが聞いています。控室で黙々と弾くのが完璧な演奏でも,全く環境の異なる明るいステージ上で弾いて上手くいくとは限りません。仮に控室で弾きまくるにしても,よくよくステージ上をイメージして弾くことが肝要と思います。

むろん,イメージと現実とは違いますので,そこの違い,本番を楽しむ姿勢も大事です。特にアマチュアならホール代やらなにやら支払っているのですから,楽しまなければソンです。そもそも,人間って創造的存在らしいです。全く同じことをやっていると,つまらなくなるのです。練習と全く同じ状態が,そのままステージ上で再現できればそれが一番でしょうが,たぶんそれでは面白くないのです。全く同じだとそれなりにうまくは行くのでしょうが,ツマラナイのです。練習段階でも,普段の練習室ではなく良く響くところで弾くと,上手になったような気がして楽しいものです。良く響く気持ちの良い演奏を本番で楽しめれば最高でしょう。

あと,番組でも取り上げられていましたが,「あがることは悪い事ではない。良い事だ。」ということです。
これは自明な事です。あがることが本当に嫌ならばステージパフォーマンスなど止めればよいわけですが,それでも止めずにやるという事は,かなりしっかりとした向上心を持っている証左です。向上心とは良いものです。ゆえに,「あがることは良い事です。」


「あがっても弾けるようにしておく。」
これは良く言われることですが,言うは易く実践は難しいことです。
その為には,何度も述べたように,本番さながらの具体的イメージを持って練習しておく事でしょう。
まさしく,
「練習は本番のように」
です。そして,
「本番は『その』練習のように」
弾ければ,本番で極端に悪くなる事は無いでしょう。

ただ要求レベルが非常に高い完璧主義の人は,ちょっとのミスも許せないので,あがりやすいと言えます。
超一流の人でもものすごくあがる人がいるようですが,要求レベルが非常に高い完璧主義の人だからなのでしょう。まあ,上を求めればキリがありません。

ルービンシュタインが言ったように,「本番もエクスペリメント!」として,本番の演奏を,事前の本番イメージとの違いを楽しみながらプレイできれば最高でしょう。むろん,十分に本番をイメージした練習を積んだ上でも必ず発生する「少しの違い・コントロール可能な違い」を楽しむのであって,しろうとの場合は,完全なエクスペリメントになってしまって,その落差があまりに大きくて楽しむどころではなく,「実験失敗」の息も絶え絶え地獄の苦しみになっているところが隘路なのですが。


いつも同じようなことを書いています。どうもこのテーマだと話が長くなってしまいます。

*横文字の言葉を忘れてしまいました。再放送でもあれば確認できますが。
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