SSブログ

Hoppstock編PonceのSonatina原典版について(第1楽章) [曲目]

以前も記事にしたPonceの原典版(Urtext)の編著者のHoppstockさんの演奏を見つけました。自らが出した出版譜の原典版で弾いているようです。

Guitar Works: Urtext Edition

Guitar Works: Urtext Edition

  • 出版社/メーカー: Schott & Co Ltd
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: ペーパーバック

Hoppstockさんの演奏(第1楽章)。演奏動画を見た(様な)記憶があるのですが,探し出せません。

Urtext(原典版)ですからポンセの手書き譜と比較して,忠実に印刷化しているのかと思いましたが,細かいところに気が付きました。

「原典版」と言えども,作曲者の手書き譜があれば,対比してみるものだと思いました。
Hoppstockは,第1楽章の65小節目に書かれたa tempoの位置(譜例1)を間違いだとして67小節目に移動しています(譜例2)。単純ミスと判断した様で,その根拠は書かれていません。美しいポンセの手書き譜で,そんなミスをおかすか?当方は疑問です。終盤の再現部での表記(譜例3)とのずれを問題視したのでしょう。そこでは,a tempoはLentにしたテンポでじっくりと休ませて,終結部になだれ込むためにそうしているのであって,むしろ,きびきびとした提示部では,2小節分先取りしてa tempoにしたのはミスどころか,それがポンセの意図だと思います。

A tempo Original 1.jpg
譜例1.65小節目に書かれたa tempoの位置。Hoppstockは間違いだとします。

atempoの位置.png
譜例2.Hoppstock編で変えられたa tempoの位置。

A tempo Original 2.jpg
譜例3.再現部でのa tempoの位置。
セゴビア編でもこの箇所は"a tempo"の位置を後ろにずらしていますが,録音ではここの2小節分を1小節分にして弾いています。休符を短めにとるクセは巨匠の得意とするところですが,セゴビアが演奏でやりたかった事は,ポンセが楽譜に込めた当初の意図とも方向性は合っているわけです。

あれあれ?上のHoppstockさんの演奏を聞くと,セゴビアの演奏同様,タイで延びた第66小節をすっとばしています。Hoppstock編「原典版」の楽譜では,Ponceの手書き譜を"correct"してa tempoの位置をずらしているのに,ご本人の演奏はそうなっていません。

"piu Lent"を余り遅めない演奏ではここで書いたことはあまり意味を成しませんが,彼は割としっかり遅めた上で,1小節分無視しています。何も変なところをセゴビアの踏襲をしなくても良いと思う*のですが。

ポンセがセゴビアの注文を受けて,形式的にも技術的にもシンプルなソナティナで「スペイン風」を表現したわけですから,ここでのテンポの変化は,しっかりとポンセの原譜の指示を守って(真意を理解して)表現すべきだと思います。


*音符自体は原典版を弾いている様です。またセゴビア編ではピチカートで奏される箇所を敢えてレガートに弾くなど,差別化は図っているようには聞こえます。
nice!(27)  コメント(0) 

nice! 27

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。