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"Top Tech 2024" [科学と技術一般]

手元にIEEE Spectrumの1月号があります。

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すでに3月号が出ているのですが,何分紙の印刷物はサーフェースメールで来るので,遅いです。たしかもう印刷物は来ないかもしれません。

最新版もバックナンバーも同学会のページにログインして読めるわけですが,時間のある時にちょっと拾い読みするには紙のものが良いですが。

例年1月号には,その年話題になるであろうテクノロジーが取り上げられています。
一時期はクルマの特集だった事もありますが,現在は電気電子情報に関わる10の技術が取り上げられています。

同誌の記事の特徴としては,まだ海のものとも山のものともつかない技術ではなく確実に実用化されている技術を取り上げているところです。

ちょっと拾ってみましょう。
学会報といえ,アメリカのものですから,2024年は大統領選挙年である事を気にしています。
一つ目「コンピューティング」分野で,AIを用いた「ディープ・フェイク」です。昨年の 4 月,共和党の YouTube 広告で,「再選を祝うジョー・バイデン大統領,シャッターが閉まった銀行と機動隊が立ち並ぶ米国の街路,米国とメキシコの国境を越えて押し寄せる移民などの一連の画像が掲載されたそうだ。 動画の注釈には「ジョー・バイデンが2024年に再選された場合に起こり得るこの国の将来についてAIが生成した考察」と。

その広告は AI の使用を前面に打ち出していたが,偽造された写真やビデオの殆どはそうではなく,同月ヒラリー・クリントン氏が共和党大統領候補ロン・デサンティス氏を支持していると称する偽のビデオクリップがソーシャルメディア上で拡散。 ここ数年の生成 AI の驚異的な台頭により,2024 年の米国選挙戦が単にある候補者を別の候補者と争わせるだけでなく,「真実と嘘の勝負になる」事を意味すると。 そして,そのようなギャンブル的な選挙戦は米国大統領選挙だけではなく,2024年に78か国で実施される大規模な選挙でも問題だと。

もうこれは新技術の紹介というよりも,その悪用をどう防ぐか?と言う記事です。
むろん,悪用を防ぐ手立ては色々なされているようです。MSのジェンクス氏は,本物と偽物の両方のデジタルメディアファイルの出所と歴史を文書化する技術的手法を開発している組織「コンテンツ来歴と信頼性に関する連合」"the Coalition for Content Provenance and Authenticity" (C2PA) の会長で, 同社は 11 月に,政治キャンペーンでのコンテンツ認証情報の使用を支援する取り組みも開始したとの事。Adobe社中心のグループは,2021年から画像に改ざんが明らかになるようなメタデータを埋め込む仕様を策定していると。今年は,米国などでの新しい AI 規制の影響により,コンテンツ認証情報の導入が本格的に始まるとのこと。

一つ目の記事の紹介が長くなってしまいました。


二つ目が「エネルギー」分野です。
「高圧直流送電網」がヨーロッパで始まったと。副題が"New technology is making possible the first multiterminal DC system outside of China"となっているので,国土の広い中国では同技術が先行していたようです。

イギリスのシステムは日立エナジーが施工しているとのこと。この会社は,日立製作所がスイスの重電大手ABBのパワーグリッド事業を買収して2020年に設立されたもの。

シェトランド諸島にある443MWのバイキング風力発電所の電力は,3ターミナルの高電圧直流送電網に供給され,将来的にはさらに 2ターミナルが追加される。 最南端のターミナルはスコットランドのブラックヒロックにあり,ここには欧州第2の規模の変電所がある。

高圧直流変電所内の様子。昔の交流変電所とは全く違う雰囲気。いわば巨大なDC/DCコンバータ。

"Top Tech 2024"には他に,パリ五輪で治安当局によるテロなどを防ぐセキュリティ監視システムのより大規模な実験が実施されること(すでに北京五輪では実施された),WI-Fi7に関する情報,ヒューマノイドロボットに関する技術等々が取り上げられていました。
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