90Vの乾電池があった事（覚書） [科学と技術一般]
20年ほど前まで，90Vの乾電池を使っていました。
なにそれ？
と言われそうなので，弁明しておきますと，仕事で使った絶縁抵抗率計の本体にこれが12個直列に入っていました。ビニルやゴム，雲母など絶縁物の抵抗率を測定するためには1000Vほどの高電圧を掛けた上，微弱な[nA]オーダーの電流を別途特殊な方法で測定します。JISにもその測定法が明記されていたはずです。
現在いくらでも高い電圧は作れますが，測定用の質の良い直流高電圧となると電池が最上です。とは言え，20年前くらい前で90V電池は既に製造中止になっていたので，代替案が必要でした。9Vの006P電池ならば現在でもありますが，これを120個直列にして押し込んでしばらく使っていました。
年寄りの戯言と思われてもイヤなので，補足しておきますと，90Vもの高い電圧の電池があった理由は，真空管のB電源用でした。ボール紙の外装で，高さ10センチほどの角形，ブランドとしてはFDKだかNOVELだったかと記憶しますが，元々は東芝などが作っていたはずです。
当方が直接知る真空管ラジオやステレオ，テレビは全てAC100V動作*でしたが，モトローラの自動車ラジオ（Motorolaの社名にもなった）が登場したのが1930年。自動車のバッテリーでは電圧が足りなかったので，こういうものがあったのではないかと思います**。
ネットを探し回ってようやく見つけました。
当方が最後に使ったのは中央上のタイプのもの。An Electronic 90V Plate/Anode Batteryより。
やはり，主用途は真空管回路を電池で動作させるためのものでした。これを製造していたはずの国内メーカーのウェブページ（の製品史）にも既にその情報はありません。
この手の積層型高電圧の電池には，現在最小型の9Vの006Pが残るだけですが，ピエゾを使ったエレアコ楽器や一部のレーザー機器など電圧が必要な機器に細々とした需要があるのでしょう。
*ごく初期の真空管ラジオは電池式だったようです。後の交流電源で使えるラジオは「電池のいらないラジオ」といわれたらしいです。当時は直流高電圧を作るのは大変だったようです。
**低電圧の電池で動作するトランジスタ・ラジオが登場したのは，東京通信工業（現ソニーG）製のTR-55。1955年の事でした。
と言われそうなので，弁明しておきますと，仕事で使った絶縁抵抗率計の本体にこれが12個直列に入っていました。ビニルやゴム，雲母など絶縁物の抵抗率を測定するためには1000Vほどの高電圧を掛けた上，微弱な[nA]オーダーの電流を別途特殊な方法で測定します。JISにもその測定法が明記されていたはずです。
現在いくらでも高い電圧は作れますが，測定用の質の良い直流高電圧となると電池が最上です。とは言え，20年前くらい前で90V電池は既に製造中止になっていたので，代替案が必要でした。9Vの006P電池ならば現在でもありますが，これを120個直列にして押し込んでしばらく使っていました。
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年寄りの戯言と思われてもイヤなので，補足しておきますと，90Vもの高い電圧の電池があった理由は，真空管のB電源用でした。ボール紙の外装で，高さ10センチほどの角形，ブランドとしてはFDKだかNOVELだったかと記憶しますが，元々は東芝などが作っていたはずです。
当方が直接知る真空管ラジオやステレオ，テレビは全てAC100V動作*でしたが，モトローラの自動車ラジオ（Motorolaの社名にもなった）が登場したのが1930年。自動車のバッテリーでは電圧が足りなかったので，こういうものがあったのではないかと思います**。
ネットを探し回ってようやく見つけました。
やはり，主用途は真空管回路を電池で動作させるためのものでした。これを製造していたはずの国内メーカーのウェブページ（の製品史）にも既にその情報はありません。
この手の積層型高電圧の電池には，現在最小型の9Vの006Pが残るだけですが，ピエゾを使ったエレアコ楽器や一部のレーザー機器など電圧が必要な機器に細々とした需要があるのでしょう。
- 出版社/メーカー: 東芝(TOSHIBA)
- メディア: エレクトロニクス
*ごく初期の真空管ラジオは電池式だったようです。後の交流電源で使えるラジオは「電池のいらないラジオ」といわれたらしいです。当時は直流高電圧を作るのは大変だったようです。
**低電圧の電池で動作するトランジスタ・ラジオが登場したのは，東京通信工業（現ソニーG）製のTR-55。1955年の事でした。
測定用の直流高電圧として９０V電圧の電池があること初めて知りました。
by 駄洒落好きな庭師 (2023-08-18 07:27)
駄洒落好きな庭師さん，
20年前に製造中止になっています。
もともとは真空管のプレート電圧用で，さらに２，３個直列に使ったかもしれません。20年前でもとうにその用途は無くて測定用など僅かの用途に残っていたものと思います。
by Enrique (2023-08-18 07:36)
TR-55ね～・・・懐かしいな～
高卒で東通工に入社し半導体生産関連の職場で数年・・・その半導体を使って作られたのがTR-55でした。NPNやPNP等の言葉に触れたのもそのころでしたね^^
by トックリヤシ (2023-08-18 09:34)
トックリヤシさん，
いわば，TR-55が90V電池を駆逐した先駆けだったでしょうね。ラジオの名前がその後の社名になったのはご承知のとおりですね。
世界初のトランジスタ・ラジオと言われたものですが，トランジスタという言葉も聞かなくなりました。現在の電子機器も膨大なトランジスタで構成されている事は共通なのですが。
by Enrique (2023-08-18 09:55)
おはようございます。
紙の外装で、写真を見て懐かしいです。
90Vもの高電圧の物があったのですね。
私は、右上に似た物を使っていました。
3Vのもので、警報ベルを鳴らすものでした。
by 枝動 (2023-08-18 09:58)
枝動さん，
専用製品は色々あったものと思います。そちらは電圧よりも持ちが必要な用途だったのでしょうね。
90Vのものも一時期は広く使われていたはずですが，消耗品のためかあまり詳しい情報は出てきませんね。
by Enrique (2023-08-18 10:11)
我が家にも9V電池を使った製品がありました。
下地センサーと電動シャッターのリモコン電池です^^
by ロートレー (2023-08-19 07:32)
ロートレーさん、
9Vの電池はまだまだ現役で大丈夫だと思います。当方も現在いくつか使っています。
90V電池は、家では子供の頃見た記憶があります。電位治療器だったか何か。その昔は直流高電圧が必要な用途は、古い古い真空管ラジオくらいだったでしょうか。
by Enrique (2023-08-19 15:08)