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楽譜の再手直し [曲目]

セルシェル編のビートルズナンバー「アイ・ウィル」に取り組んでいますが,譜面を再度微調整してみて,彼がこの曲を楽譜を簡略にしたのがわかる様な気がして来ました。

以下にセルシェル氏の譜面をリズムのみ書いてみます。

セルシェル氏.png
セルシェル氏の記譜(リズムのみ)
通常の記譜法ですと以下のようになります。

通常記譜.png
通常の4拍子の記譜(リズムのみ)
前回書き直した譜面は,前奏(原曲には無い)に関してはリズム的にはセルシェル氏のものを踏襲していました。記譜法の基本からすれば,上で見るように,4拍子では2拍目から3拍目にはタイを掛けますが,1拍目と2拍目とか3拍目と4拍目にはタイは掛けず四分音符で書きます。それでさらに書き直してみました(他にも細部書き直しています)。

再修正.png
今回さらに書き直したもの。メロディへの入り(8小節目)の記譜が不徹底(ここだけ4拍目へのタイを踏襲しています)ですが,2声で書く限界。
3拍目から4拍目にはタイを掛けない理由は,4拍子は2拍子が二つ繋がった複合拍子と捉えるからのようです。ふつう手拍子は2拍ずつ打ちます。

しかし,この曲はトントントントンと4つ打つ感じなのでしょう。八分4つの連桁を使わず,八分2つずつにして背後にあるリズムを表しているのでしょう。元のセルシェルさんの譜面は,敢えてヘンテコな書き方で示しているものと思われます(他の5曲は真っ当な譜面です)。通常の書き方では滑らか過ぎる感はあります。むしろ通常見慣れた四分の四の記譜は,二分の二的な記譜をしているわけです。


以前,アイルランド音楽の守安功さんは,「ジーグ一つとっても地域で異なること」を引き合いに,音楽の背後にあるリズムは,五線譜では最も表しにくいものだと喝破していました。だからと言って五線譜以上に適切なものがあるとも思えません。連桁の掛け方とかが,その一つの表現手段だろうと思います。むろん聴いて体で感じるという,最もプリミティブな体験が民族音楽やポップスでは必須の様ではあります。


4拍子をわざわざ2拍子の複合拍子と捉えなくても,記譜時の約束以外には大した問題はなさそうですが,5拍子とか7拍子といった本格的な?複合拍子の場合は,少し気に留めておいても良さそうです。

5拍子で有名なポピュラー曲といえば,「テイク・ファイブ」があります。
4小節の前奏からも,3拍子+2拍子の複合拍子だと分かります。このリズムがモダンで都会的な雰囲気を醸し出しています。リズムだけを取り出して以下に示します。

テイクファイブのリズム.png
「テイクファイブ」のリズムのみ書き出してみたもの。

実際には以下の様な3拍子と2拍子とが結合したものです。

テイクファイブの実際のリズム.png
5拍子と言えど実際は3/4と2/4の複合拍子。

そういえば,当たり前過ぎてあまり気にもしませんが,スペイン音楽(に限らずラテン系)では,8分の6と4分の3がミックスしたものが良くあります。上の5拍子の様に音符の数が変わるわけではなく,一小節ごとに変えていては,めんどくさいので,この辺は,暗黙の了解でしょう。これも連桁の掛け方で読み取ることは出来ます(むろん,意識的に明確に書き分けている事が必要ですが)。

IMG_1581.jpeg
サンスのカナリオス冒頭。6/8で書かれていますが,実際は3/4との複合拍子。記譜はあまり良くなくて,3拍子部分はイマイチ分かりにくいです。
優雅なメヌエットだって,3拍子ではなくて本来は6拍子でした。この辺は縦線の種類を替える事などで表す事はできますが,舞曲名から常識事項という事なのでしょう。

明示的に示されるものはもちろんの事,書ききれてなくても楽譜の背後にあるものを読み取らないといけません。かといって五線譜を無視すると言うのもある種の原理主義になってしまいます。五線譜にはかなりの表現力がありますので,その音楽をいわば標準語で書き起こす事も必要な事だろうと思います。
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よしあき・ギャラリー

マタチッチと教えていただき、ありがとうございました。
以前、これは絵になると雑誌か何かを切り取って保管していたのですが、名前を記録していませんでした。
恥ずかしながら音楽には疎いものですから、、、^_^;
by よしあき・ギャラリー (2023-03-07 11:58) 

REIKO

最近はカリンバ用に曲をアレンジしたら、手書きで楽譜をノートに書いて記録しています。
通常カリンバの五線譜は、ト音記号の1段譜に旋律と伴奏をまとめて書くため、(音域が少し狭いだけで)ギターと似たような譜面&書き方になります。
実際に書いてみると「こういう場合はどうすれば…」「これはどっちの方が見やすい?」と迷うことがたくさんありますね。
休符を書く位置や、拍子によって使えない休符があるとか、今まであまり意識してませんでした。
by REIKO (2023-03-07 15:48) 

Enrique

よしあき・ギャラリーさん,
どういたしまして。むしろ,ご質問した積りでした。
当たっていましたら幸いです。
by Enrique (2023-03-07 16:18) 

Enrique

REIKOさん,
そうですね。オルゴールの音を譜面に書いたらきっとそうなるのでしょうね。想像ですが,カリンバはそんな感じだろうと思います。
楽譜で演奏するのが当たり前の人間にとっては,如何に曲想を分かりやすく表すかに腐心しますね。譜面はいわば音楽の設計図です。分かった人の図面は,設計思想が感じられて見やすいものですが,そうでない人のものはダメですね。むろんパターンが決まったものは設計図無しでも行けるわけですが。
ギターの場合上下3,4本の加線で何とかなるので,ギリ1段譜に収まりますが,まれに2段譜もあります。200年前ソルが実音2段譜で譜面を出したら非難轟々で,直ぐにやめたそうです。2声3声なら2段にした方が見やすいですが,現在1段譜ですら人気ない(タブ譜が人気)ですから無理でしょうね。
by Enrique (2023-03-07 16:38) 

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