微分の定義式から [科学と技術一般]
微積がワカランという意見も多いのですが,数学がまるでダメだった当方は微積に活路を見出したようなものでした。
微分の習い出しで最初に出てくるのは,微分の定義式です。
むろんその前の準備段階としてlimをやるわけですが,この極限操作というのは,数学と言うよりも理工学のようなものです。極限操作によって厳密に正しくはなるわけですが,何か近似式のようなイメージを拭い去れません。苦手な人にとっては,本来厳密であるはずの数学が,理工学の近似式みたいなもので誤魔化される?ような気がするのではないかと思われます。
最初に微分の定義式はこう書かれます。
\[f'(x)=\lim_{h→0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\] 必ずこんな絵が描かれます。
ある横幅\(h\)で傾き\(\text{PQ}\)を求め,その\(h\)を限りなく0に近づければ,曲線の\((x, f(x))\)での傾き(線分\(\text{PT}\))が求められると。それが「微分する」という演算だと。
最初の例として,\(f(x)=x^n\)の微分がデモされます。例えば\(x^2\)を上の定義式に入れて計算しますと,
\[(x^2)'=\lim_{h→0}\frac{(x+h)^2-x^2}{h}= \lim_{h→0}\frac{\cancel{x^2}+2x\bcancel{h}-h^\bcancel{2}\cancel{-x^2}}{\bcancel{h}}=\lim_{h→0}(2x-h)=2x\] 残る\(-h\)は,0に持っていく微小量なのだから最終的に残るのは\(2x\)だと。この辺がすんなり納得できるかどうか?が第一ステップです。
それでも,きちんと定義式を示して納得させながら進めるのなら真っ当です。当方が最初に教わった時はそれすらロクに示されず(limもやったかどうか),「微分は\(x\)の\(n\)乗の\(n\)を前に付けて\(n-1\)乗にする。」,「ルートの場合は\(n=\frac{1}{2}\)」みたいな習い方だったので,何のことやらサッパリ意味が分からなかった記憶があります。
limは必須ですが,定義式においても,なぜ,\(x\)での傾きを求めるのを\(x+h\)の方から持っていかないといけないのでしょう?\(x-h\)から持って行ってもいいはずですし,左右非対称でバランスが悪いので,\(x±h\)の左右両方から持っていく,こんな定義式も考えられます。
\[f'(x)=\lim_{h→0}\frac{f(x+h)-f(x-h)}{2h}\] むろんこれで上の計算をやれば,結果は同じです。
\[(x^2)'=\lim_{h→0}\frac{(x+h)^2-(x-h)^2}{2h}= \lim_{h→0}\frac{\cancel{x^2}+\bcancel{2}x\bcancel{h} \xcancel{+ h^2} \cancel{-x^2} + \bcancel{2}x\bcancel{h} \xcancel{ - h^2} }{\bcancel{2h}}=2x\] むしろこちらは\(h\)も一瞬で消えます。しかし,数学では,最もシンプルに書くのがお作法ですから,こんな定義式は美意識に合わないのです。
いずれにしても定義式は最初だけで,以降形式的に,
\[f'(x)=y'=\frac{dy}{dx}\] と書くことになり,\(dy\)や\(dx\)を通常の変数の様に扱って微分方程式に使うことになります。また,偏微分やベクトルの微分などに,微分の考え方はどんどん拡張されて行きます。そういう事情からも,やはり初歩段階でのきちんとした理解が肝心だと思います。
また,微分よりもその逆演算である積分のほうが学習はずっと大変ですので,思い返してみれば,この辺を急ぎたい気持ちもわからないではないですが,やはり考え方をしっかりと身につけ,自分のアタマで考えられる様にすることは次のステップを急ぐ事よりも重要なことだと思います。
「最もシンプルな形を使う(求める)」。というのは数学に限らず理工学の考え方でも基本です。例えば新物質の開発・創成においても,最もシンプルで本来の姿を現す固体は単結晶です。最近の有名な例を挙げれば,青色LEDのGaNの場合でも,中村修二さんのは薄膜形態でしたが,名古屋大の赤崎さん天野さんのお二人の先生は単結晶から素子を作りました。むろん中村さんのは応用面で有用ですが,素材の根本的な性質を調べるには最もシンプルで根源的な単結晶の作成が基本です。2014年のノーベル物理学賞は何れの人々にも等しく授与されたのでした。
微分の習い出しで最初に出てくるのは,微分の定義式です。
むろんその前の準備段階としてlimをやるわけですが,この極限操作というのは,数学と言うよりも理工学のようなものです。極限操作によって厳密に正しくはなるわけですが,何か近似式のようなイメージを拭い去れません。苦手な人にとっては,本来厳密であるはずの数学が,理工学の近似式みたいなもので誤魔化される?ような気がするのではないかと思われます。
最初に微分の定義式はこう書かれます。
\[f'(x)=\lim_{h→0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\] 必ずこんな絵が描かれます。
ある横幅\(h\)で傾き\(\text{PQ}\)を求め,その\(h\)を限りなく0に近づければ,曲線の\((x, f(x))\)での傾き(線分\(\text{PT}\))が求められると。それが「微分する」という演算だと。
最初の例として,\(f(x)=x^n\)の微分がデモされます。例えば\(x^2\)を上の定義式に入れて計算しますと,
\[(x^2)'=\lim_{h→0}\frac{(x+h)^2-x^2}{h}= \lim_{h→0}\frac{\cancel{x^2}+2x\bcancel{h}-h^\bcancel{2}\cancel{-x^2}}{\bcancel{h}}=\lim_{h→0}(2x-h)=2x\] 残る\(-h\)は,0に持っていく微小量なのだから最終的に残るのは\(2x\)だと。この辺がすんなり納得できるかどうか?が第一ステップです。
それでも,きちんと定義式を示して納得させながら進めるのなら真っ当です。当方が最初に教わった時はそれすらロクに示されず(limもやったかどうか),「微分は\(x\)の\(n\)乗の\(n\)を前に付けて\(n-1\)乗にする。」,「ルートの場合は\(n=\frac{1}{2}\)」みたいな習い方だったので,何のことやらサッパリ意味が分からなかった記憶があります。
limは必須ですが,定義式においても,なぜ,\(x\)での傾きを求めるのを\(x+h\)の方から持っていかないといけないのでしょう?\(x-h\)から持って行ってもいいはずですし,左右非対称でバランスが悪いので,\(x±h\)の左右両方から持っていく,こんな定義式も考えられます。
\[f'(x)=\lim_{h→0}\frac{f(x+h)-f(x-h)}{2h}\] むろんこれで上の計算をやれば,結果は同じです。
\[(x^2)'=\lim_{h→0}\frac{(x+h)^2-(x-h)^2}{2h}= \lim_{h→0}\frac{\cancel{x^2}+\bcancel{2}x\bcancel{h} \xcancel{+ h^2} \cancel{-x^2} + \bcancel{2}x\bcancel{h} \xcancel{ - h^2} }{\bcancel{2h}}=2x\] むしろこちらは\(h\)も一瞬で消えます。しかし,数学では,最もシンプルに書くのがお作法ですから,こんな定義式は美意識に合わないのです。
いずれにしても定義式は最初だけで,以降形式的に,
\[f'(x)=y'=\frac{dy}{dx}\] と書くことになり,\(dy\)や\(dx\)を通常の変数の様に扱って微分方程式に使うことになります。また,偏微分やベクトルの微分などに,微分の考え方はどんどん拡張されて行きます。そういう事情からも,やはり初歩段階でのきちんとした理解が肝心だと思います。
また,微分よりもその逆演算である積分のほうが学習はずっと大変ですので,思い返してみれば,この辺を急ぎたい気持ちもわからないではないですが,やはり考え方をしっかりと身につけ,自分のアタマで考えられる様にすることは次のステップを急ぐ事よりも重要なことだと思います。
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「最もシンプルな形を使う(求める)」。というのは数学に限らず理工学の考え方でも基本です。例えば新物質の開発・創成においても,最もシンプルで本来の姿を現す固体は単結晶です。最近の有名な例を挙げれば,青色LEDのGaNの場合でも,中村修二さんのは薄膜形態でしたが,名古屋大の赤崎さん天野さんのお二人の先生は単結晶から素子を作りました。むろん中村さんのは応用面で有用ですが,素材の根本的な性質を調べるには最もシンプルで根源的な単結晶の作成が基本です。2014年のノーベル物理学賞は何れの人々にも等しく授与されたのでした。
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