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妻がギターを始めて分かった事〜補足〜 [雑感]

前回これに関する記事を書きましたが,まだ書き足りない様な気がして来ました。

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妻が弾くピアノやチェンバロなどの鍵盤楽器は,一度に沢山の音を出せるのが特徴です。
チェンバロはピアノの先祖といわれますが,かなり違います。リュートはギターの直接の先祖では無いと言われますが,むしろ直接の先祖と言われるチェンバロとピアノの違いよりも,音や奏法では近い関係と言えるでしょう。むろんリュート曲はリュートで弾かないとインチキだという人もいますが,ギター側の人間としては,リュート曲をギターで弾いてもあまり違和感はありません。


改良された現代の楽器であるピアノがあるのに,わざわざ大昔流行ったチェンバロを弾くというのは,やはりその音が全然異なる事と,その楽器で作曲された曲が沢山あるということです。チェンバロの曲を現代のピアノで弾いたのでは,インチキとは言われないまでも別の曲の様になってしまいます。ちなみにバッハのピアノ曲というのは一曲もありません。なぜならバッハの時代には,ピアノという楽器は無かったからです。あった鍵盤楽器は,チェンバロやクラヴィコード,そしてオルガンでした。今から考えたらバカみたいな話ですが,つい半世紀程前には「バッハをチェンバロの様な不完全な楽器で弾くのはけしからん」とか言われた時代があったのでした。音楽の時代考証もヘチマもなかったのでした。バッハの有名な鍵盤曲を「平均律ピアノ曲集*」などと平気で呼んでいました。

ピアノとチェンバロの違い上で大きなものは,弦を叩くか弾くかです。ピアノは弦が鋼鉄の強く張られた弦をハンマーで叩く速度変化により強弱が出せます。そのため「当初『ピアノフォルテ**』と呼ばれ,以後名前が短縮されてピアノになった」と音楽の授業で教わる内容です。ピアノの先祖の鍵盤楽器チェンバロはほぼ強弱が出ません。その理由ははじくからです。鍵盤を押す速度を変えても,弦に与える変形が一定で弾性エネルギーは変わりらず音量は変わりません。ギターやリュートは強弱が出せますが,それは弾く深さを変えるからで,チェンバロの機構上ではできないのです。バッハは弾けないのにリュートという楽器を好みましたし,やはりギターを弾けないドビュッシーはギターを「表情のあるクラヴサン***」と言ったとか。鍵盤楽器奏者にとって,指でつまびくギターやリュートは魅力的に映る様です。


文字どおり鍵盤の仕掛けで音が出せる様になっている鍵盤楽器に対して,ギターやリュートは弦を直接指で押さえ,指や爪で弾きます。弦楽器とは言ってもヴァイオリンなど弓で弾く擦弦楽器よりも更に原始的な楽器と言えるでしょう。それゆえ,押さえ方も弾き方も音にダイレクトに反映します。上手に弾かれたものはたいそう美しいですが,そうでないものは。。。ギターは,ボローンと素人でも音は出ますので,出音自体はヴァイオリンより楽なイメージですが,魅力的な音を出すためには,ヴァイオリン同様に基礎訓練が重要です。確実な押さえ(+ヴィブラートなどのニュアンス)と良いタッチで初めてマトモな音になります。どの楽器でもそうかもしれませんが,人が弾いているのを見ると自分も弾ける様な気がして来ます。妻の場合は私の演奏を見て,「自分ならもっと上手に弾ける」と思い込んだのでしょう。誤解というものは解いた方が良いですが,「良い誤解」とか「美しい誤解」というものもあるとすれば,それは下手に解かないほうが良いのかもしれません。


3年余り続けている妻のレベルは?というと,別の本で入門編を終わって,「教室用 新ギター教本 小原安正 監修」という青い本の中級編を現在やっています。「早く終わらせて,次の教本に行きたい。」などと勝手に言っていますが,無論この先には高い山あり深い谷ありです。

教室用 新ギター教本 小原安正 監修 教則本 教材

教室用 新ギター教本 小原安正 監修 教則本 教材

  • 作者: 小原安正
  • 出版社/メーカー: 株式会社 ギタルラ社
  • 発売日: 2022/11/14
  • メディア: 楽譜
取り組む曲のレベルからしたら,私の独学時代の1年以内くらいのものでしょうか。楽譜を視唱しながら演奏していますので,それはほめてやらないといけませんが,どこを押さえるかワカランとか言いながら頑張っています。まあ,音楽の基礎は十分ありますから,ギターの技術を基礎からゆっくり学ぶのがよいのでしょう。

当方がよぼよぼになった頃に,「ばーさん上手になったのう」とでも言えるかどうか。
*音律の件はさておいてもクラヴィーア(鍵盤楽器)を強引に現代のピアノに置き換えてしまったのでしょう。
**初期のピアノはフォルテピアノと呼ばれて現代のピアノ(モダンピアノ)と区別されます。
***フランス語でいうチェンバロ。英語だとハープシコードです。

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EAST

Enriqueさん

奥様3年間続けられて、青本の中級編をやられているのであれば、結構な進展ではないでしょうか。
私は、鉄弦のアコースティックギターを指で弾いていて、クラシックギターを初めて時に教室に通いましたが、約1年で青本の初級編が終わらなかったです。都合で1年程度で教室に通うのを止めてしまいましたが。
クラシックの素養がおありなので、指板の仕組みが理解できて左右の手の使い方がある程度わかれば、結構上達スピードも上がるように思います。
by EAST (2022-11-14 15:53) 

Enrique

EASTさん,
「青本」と言うのですか。当方はやった事がなかったので,知りませんでした。彼女は基礎をゆっくりやるのは大丈夫な様です。
何分昔の本ですから,易しめと難しめの曲が混ざっています。ぱっぱっと終わる曲がある反面中々クリアできないのもある様です。
by Enrique (2022-11-14 16:30) 

プー太の父

半分、分かったような分からないようなですが
なんとなく言うことが理解できそうな気もします。
たまにこんな講義?も面白いです(^^
バッハの時代にはまだピアノがなかったのですね。
それなのに「平均律ピアノ曲集*」なんて、崇高なように
思えるクラシックの世界でもそんな時代があったのですか。
by プー太の父 (2022-11-14 19:24) 

Enrique

プー太の父さん,
ご理解の範囲で十分だと思います。
音楽に関する研究は大きく進んでいます。かつては,バッハは音楽の父とか言われて,バッハからクラシック音楽が始まった様な教え方でしたが,現在では沢山いるバロック時代の作曲家の中の一人くらいの位置づけです。特に古楽に関する数十年前の解釈からしたら,大学生と小学生くらいの差ですので,かつての言いようなどは滑稽なわけです。
演奏技術も進んでいます。スポーツの記録などがどんどん塗り替えられているわけですから,当然と言えば当然でしょう。
by Enrique (2022-11-15 07:24) 

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