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悪い弾き方をしない事 [雑感]

「昔弾いた曲を弾かない」のが一つの方法だと思います。

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昔弾いた曲を引っ張り出して弾くと,面白い事に悪い弾き方と共に思い出されてしまいます。それを弾き続けても,だんだん良くなるという事はまずありません。むしろ,せっかく覚えた新しい技術が,昔の悪い弾き方に戻ってしまいます。

以前も書いたことがありますが,その様な現象は当方の様な素人だけの事かと思っていましたが,ウィリアム・カネンガイザーがアルハンブラを弾かない理由が,「十代の頃のヘタクソな自分に戻るから」というもので,大いに納得したものでした。

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ですので,当方の場合は,常に(昔弾いていない)新曲を弾き,改善された技術で取り組むよう心がけてきました。

基礎練習をやらずに曲だけ弾いている弊害を書きましたが,さらに良くないのが,昔弾いた曲だけを弾いているという状態でしょう。最も技術の改善を阻むと思います。昔は弾けたのに,この頃さっぱりという声も聞きますが,若いころは体力や柔軟性がありますから,多少無理な弾き方でも弾けたのが年齢重ねると無理がたたるという事なのでしょう。しかし,クラシックギターの演奏技術の進化は,我々の体力の劣化を上回っていて,現代の演奏技術を用いれば,楽に弾けるようになっています。

かつては,バッハの曲などは顔を引きつらせながら汗だくになって弾いたものです。現在でもむろん易しくは無いものの,汗だくにならなくてもOKです。むしろ,顔を引きつり汗だくになるのはかつての悪い弾き方で弾いたための弊害であって,そうならないような姿勢なり構えなりタッチなりに変貌して来ているという事です。

現代の奏法の利点はいろいろありますが,一つの分かりやすい例を取り上げれば,擦過音の出方でしょう。
つい最近までは,プロの演奏でもキュッ・キュッという音が目立つものがありましたが,現在では「出ていたら恥ずかしい」レベルでしょう。この音は,左手の押弦力を抜かないまま移動すると出るので,出るのは悪い弾き方の証左になってしまいます。この音は,出さないように注意するのではなく,出るような悪い弾き方をしないという事です。現代の正しい弾き方をしていれば出ようがないのです。
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コメント 4

風神

昔フォークギターを弾いた時、その擦過音は必ず出ていました。そういえば、今思い出すと出ない先輩も居ました。
やはり脱力なんですね。左手の移動時も力んで押さえているという、悪い弾き方をしていたんですね。当時は善し悪しも考えず、ただ力任せのがむしゃらで、.....納得です。
by 風神 (2022-02-22 15:37) 

Enrique

風神さん,
擦過音に関しては,現在の合理的な奏法で現れる一つの分かりやすい例として挙げましたが,演奏力自体の向上が著しいです。
フォークギターとは技術も音楽もかなり異なりますので,何とも言えませんが,キュッ・キュッと出るのが普通でそれを効果音と捉えている向きもありますので,必ずしも出ないのが良いのかどうかは分かりません。むろん巻弦を擦る点では共通点だとは思います。
クラシックギターの世界では,込み入った運指ではプロでも最近まで出ていて,出ない人は「サイレント・ギタリスト」とか言われて世界的にも貴重な存在でした。現在の演奏家はほとんど出ませんが。
by Enrique (2022-02-23 08:53) 

Cecilia

擦過音は必ず出るものだと思っていましたが、昔福田進一さんの生演奏を間近で聴いた時にまったく出ていないのに驚きました。ギターのことを知らなくてもその違いがよくわかりました。
私の場合ヴァイオリン独学で弾きまくっていた「愛の悲しみ」「G線上のアリア」など、今後弾くためにはいろいろな努力が必要ですね。
by Cecilia (2022-02-23 10:22) 

Enrique

Ceciliaさん,
福田さんは,日本でも新しい技術の導入をした一人者でしょう。村治昇さんが佳織さんを福田さんに付けたのも,慧眼でした。むろん村治昇さんの教室では姿勢などの基本的な事はきちんとできていたようですが。
福田さんが新しい合理的な奏法をいち早く導入できたのは,国際的にも活躍しているからでしょう。ちなみにお友達のエドゥアルド・フェルナンデスは,かなり昔から擦過音を出しませんでした。
昔弾きまくっていた曲を引っ張り出すのは,新曲やるよりもリスクがあります。その辺は,楽器違っても共通なのだと思います。
by Enrique (2022-02-24 10:56) 

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