SSブログ

クラシカルギターを止める理由?〜手が小さい〜 [雑感]

「手が小さくて左手が届かない」という話をよく聞きます。

EnriqueAutographSmall.png

「大きさではない」,とか「柔らかさが重要」だとかも,良く言われます。

かつては(今も?)技術的には女性よりも男性が有利だと,暗黙の了解の様に思われていました。
セーハ(バレーコード)などは,「握力で挟み込む」と言ったようなバカげた助言が,その事に拍車を掛けているのでしょう。そんな事をやって長時間の演奏などできないし,華奢な女性奏者はどう筋肉を鍛えているというのでしょう?

当然脱力に尽きます。ムダな力を極力抜く事です。不正確さを力でごまかしている結果が,握力で挟み込むという,デタラメなアドバイスになるのでしょう。中古楽器でたまに見かけるフレットの擦り減り具合が酷いものなどは,「一体どういう弾き方をしていたのだろう?」と甚だ疑問です。自動車のタイヤじゃあるまいし,フレットの減り具合を「何分山」だとか言って売っているのも正直笑ってしまいます。


きちんとした調整の楽器で,正確に押さえていれば,腕の重みだけで十分に押さえられます。左手の親指を離しても,音がビビらなければOKです。むろんハード的には前回取り上げたような弦高調整などが重要です。デタラメな調整では力を入れてもうまく弾けません。デタラメ調整の楽器+不正確な押弦+それをごまかすため力を入れると,悪い三拍子です。

むろん,手は大きめの方が楽そうではあります。当方も手は余り大きくありませんが,これは持って生まれたものですから,これで何とかするしかありません。やはりポイントは脱力。力を入れていると広がるものも広がりません。自ら手をこわばらせて,広がらなくしている事に他なりません。


手が小さいとハンディと言うようなニュアンスになってしまいますが,敢えて小さめの方が有利な状況も考えてみましょう。目いっぱい広げた量がよくわかる事でしょうか?ぱかーっと広げた最大値が計れるので,それをモノサシに出来ます。手が大きいと,広げ量の微調整がメンドウな様な気もします。またハイポジションだと,フレット間隔が詰まってきますので,小さい方が有利なような気もします。

弦楽器は大きめの方が音量面で有利です。
クラシックギターは現在弦長650mmのものが標準です。セゴビアが使ったラミレスIII世などは,664mmでした。その為か一時期流行りました。


原理的に,弦長は長くすると音量は増加,短いと減少します。
弦長の効果は寸法的に増えるということと,同じピッチを保つ為に弦の張力が増えます。寸法の効果は660/650では1.5%の増加に過ぎませんが,張力の増加は二乗で効いて3.1%程の増加ですので,相乗効果でキツく感じるかもしれません。ただ押弦で感じる張力に関しては,弦高の影響が大きいので,630や640のレディス用と称される楽器でも弦高が高いと決して弾きやすくはありませんし,664mmのラミレスを弾いていらっしゃる手の小さな女性も知っています。押さえやすさに関しては楽器の弦高調整の方がずっと効きます。一方,物理的に届かないという方には,630や640も結構でしょう。以前,普段650mmを弾くプロの方に,658mmのオリベを弾いてもらったところ,「ローポジションが遠く感じる」との事でしたので,わずか8mm(実際には12フレット以下の4mm程度の違い)でも弾きごこちには影響する様です。


当方も630や640の楽器を持っていますが,640は妻に,630の一本は娘に貸与しています。もう一方の630の楽器は当方がバッハを弾く場合などに使いますが,普段は650を弾いています。

手が届かないのでギターに向かないとあきらめる位なら,610でも,もっと小さな子供向けの楽器でも良いかも知れません。


ちなみに,ピアノの鍵盤幅は23mm一定です。中田喜直は手が小さかったので,日本人向けの鍵盤幅20mmの楽器を使っていたそうですが,なぜか普及しません。弦楽器とは異なり,発音部には関係なく鍵盤だけの問題だと思うのですが。
nice!(31)  コメント(7) 
共通テーマ:音楽

nice! 31

コメント 7

REIKO

ふと思ったのですが、クラギの左手ってかなり無理な手のカタチや指の開き方することがありますよね。それで腱鞘炎になったりしないのでしょうか?
私はピアノの右手で人差し指と小指の無理な開きすぎ(90度以上)のために腱鞘炎やったことがあります。
この「開きすぎ」も、手が小さい&指が短いためにそうせざるをえなかったわけで、以後手の大きさ的にギリギリな曲は諦め、少しでも手に違和感が出た曲はキッパリ練習をやめることにしています。
ギターはレッスンや人前演奏でも自分の楽器で弾くので、多少音が犠牲になっても手に合った楽器が使えて良いですね。

ピアノの「細幅鍵盤」は、グランドなら鍵盤ユニットごと入れ替えるだけなので標準鍵盤との一時的交換も簡単なのに、そういうのを公共ホールのピアノ等で常備するには、まだまだ理解が進んでないようです。(普及運動をしている方がいるのですが、何か色々「障害」があるらしい)
海外では近年、stretto pianoの名称で細幅鍵盤ピアノによるコンサートが行われています。
こういうのが日本でも話題になればいいのですが…
by REIKO (2024-03-07 01:10) 

Enrique

REIKOさん,
御明察の通りで,左手は時々ムチャな手の形をします。
そんな形をいきなり作れと言われてもとても無理です。ヘンテコな形を常時作りますので,手を痛めるのではないか?というのは真っ当なご心配だと思います。どんな天才でも,ムチャな手の形をいきなり作ることはできないので,そういう場合は必ずガイドフィンガーを使います。動きの悪い指をガイドにして,動きの良い指をそれに沿わせて作ります。運指付けの重要点ですので,ある程度の曲の運指付けはそこそこ経験者でないと出来ません。むろん演奏技術として十分な脱力は必須です。
弦楽器は子供は小さいのを使い,ゆくゆくレギュラーサイズを使うというのが順当ですが,ピアノは最初から普通サイズですね。
弦楽器は小さいと音量的に不利というのはありますが,ピアノの場合鍵盤装置だけの問題ですから,音響・音楽面でもなんら問題ないですね。子供から順番の発表会でも最初細幅鍵盤で,途中で通常鍵盤に入れ替えたって大した手間ではないはすですね。鍵盤ひとつで1mm細くても,ずいぶん楽なはずですね。
by Enrique (2024-03-07 20:24) 

河内の木樵

当方も同じく650,640,630の楽器をもって使っていますが、630になると流石に弾きやすいと感じます。最初に譜読みするときに630をつかって、その後に650に持ち替えても意外にもきちんと押さえられます。630だと音は小さいか?と思いきや加納木魂さんの楽器などかなり遜色なく鳴るので驚きです。ナット幅や弦幅も弾きやすさに効くと思います。ナット幅に対し弦幅が広いと1弦は弦落ちしやすいのでかなりストレスになります。ちゃんと押さえられておれば問題ないですが、きつい押さえだとこの辺りが結構、私の場合にはつらくなります。いろんな要素あるので調整が大切なんだとわかってきたところです。
by 河内の木樵 (2024-03-07 20:43) 

Enrique

河内の木樵さん,情報共有できて嬉しいです。
同じタッチで弾けば弦長が短い分はわずかに音量が下がるのは原理的には言えますが,それはごくわずかなファクタですので,余裕持ってしっかりとしたタッチとか楽器の胴の設計でカバーできる範囲内だと思います。
確かに譜読みを630でやるというのは有効です。手が馴染んでくれば650でもOKですから,特に技術的に難しい曲の場合いいですね。
減幅の関しては当方は標準よりも0.5mm狭い41.5mmとしています。
最初使った手工ギターが44mmもあったので,酷い目に遭いました。
by Enrique (2024-03-09 10:16) 

河内の木樵

弦幅44の楽器あるのですね。それらばナット幅は54以上でないとバランスとても取れないと思うのですがそれはまた大変弾きにくくなる。こうしたバランスあまり考慮されずに売られているものありますね。ナットやり直しは結構な出費なのですが弦幅を記載していないで売られているのも多いです。これはいかがでしょう?と思っています。私も被害さの一人です。
by 河内の木樵 (2024-03-10 22:43) 

Enrique

学生時代必死にアルバイトして買った楽器がそうでした。
ネック幅は標準の52でした。
当時はそんな事わからないですから、それで必死に練習していましたが、やたら弦が落ちましたね。
製作者も無頓着だったのでしょう。
知人が持っていた松岡がすごく弾きやすかった記憶があります。
ナットを作り替えたのは何年も後でした。
by Enrique (2024-03-11 06:38) 

Ujiki.oO --> CAVATINA を奏でる東洋人の女性ギタリスト

癌を告知されて、精神を病み出しまして、ブログ更新がとんと停止しております。URLには、あるギタリストのYTubeを紹介しましたが、最初に感じたのは彼女の手の小ささでした。指が短くても頑張ってるなあ~と感銘しました。個人的には周辺国の言語を耳にするだけで不快になりますが、ギターの音色は良いっ!

蛇足:最新のふぁいやーふぉっくすダト、DISQUSを表示しません。FFはいつになったら完璧になるのやら
by Ujiki.oO --> CAVATINA を奏でる東洋人の女性ギタリスト (2024-05-01 16:04) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。