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ギター音楽講座 [音楽理論]

一連の小船幸次郎のギター関係書籍を見て来ましたが,共著の「ギター音楽講座」が残っていました。

ギター音楽講座.PNG 一連の書籍では出版年が記載されていないので,資料として困るわけですが,こちらの記事の記述によれば,1967年とのことです。この書籍は,6人の共著で,内容は人それぞれですが,やはり小船の記述箇所には意味があります。1965年に「ギター和声学」を上梓以来精力的に出版活動もしていた事がわかります。「ギター音楽とその表現について」と題して,他の書籍では書かれなかったこと,例えばギターと他楽器(ピアノとヴァイオリン)との比較しています。「むすんでひらいて」のメロディをそれぞれの楽器風にアレンジして見せて,特徴を具体的に示しています(ギターの人に伝わったかどうかはわかりませんが)。また,リュート曲において独奏曲が生まれた経緯を示して,その膨大な曲が現代ではギターで再現可能と述べています。特筆されるのが,スカルラッティの鍵盤曲についてで,ギターで弾ける宝庫だとしていることです。今でこそ,D.スカルラッティはポピュラーな作曲家となり,ギターのレパートリーにも取り上げられますが,それを60年代に指摘していたのは画期的ではないでしょうか。例えば,鈴木大介氏は墺国在外中にD.スカルラッティの鍵盤曲をギターでたくさん弾いてみたと述べていましたが90年代のことです。

他はそれぞれです。大先達の書かれたものながら,何を書きたいのかさっぱりわからないものもあります。小船氏以外では,大沢一仁氏が書いているマドリッド音楽院のカリキュラムは,当時のギター水準を知る上で参考になるかもしれません。第一学年から第六学年まででマスターすべき内容が書かれています。興味深いのは,カルカッシの25の練習曲Op.60を第一学年から第六学年まで掛けてやっています(むろん他にアグアド,ソル,コストなどの課題もやっています)。B. ジェファリはテクシア版の同曲集の前書きで,同曲をピアノのショパンの練習曲程度としていますから,同音楽院のカリキュラムは妥当なところでしょう。しかし,当時の日本のギター界は,カルカッシを極端に軽視して,バイエルのレベルだとしていました(いまだにそう言っている人もいるかもしれません)。理由は推して知るべしでしょう。

斎藤太計雄氏の記述は,作曲法のイロハの様です。作曲をしない人でも,演奏曲のアナリーゼをするために参考になるのでは無いでしょうか。石月一匡氏の記述は,現在あまり演奏されない編曲もののリストも多いですが,当時のギター室内楽に関する貴重な情報でしょう。リュート音楽の一人者だった幕田慶司氏に記述も貴重でしょう。今でこそ古楽の研究も進み,リュート奏者も増えましたので,当たり前の内容かもしれませんが,例えば歴史的なタブラチュア記譜の読み方とその得失が明確に書かれています。現代のギターであえてタブ譜を使う事の注意事項となるかもしれません。
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Cecilia

中学3年の時選択音楽でギターを購入(二人に一本)、荘村清志さんの解説・指導のNHKテキストでカルカッシの練習曲を何曲かやりました。
私が練習したのはバイエル初歩レベルでしょうけれど。
鈴木大介さんが担当していた頃のきまクラは面白かったです。
by Cecilia (2021-01-26 18:49) 

Enrique

Ceciliaさん,カルカッシはバイエル初歩レベルではありません。
Op59でもブルグミュラーレベル,Op60はショパンレベルです。
少なくともバイエル後半レベルの事はやっておられたと思います。

>鈴木大介さんが担当していた頃のきまクラは面白かったです。
確かに。。。
それに引き換え。。。とは言わないことにしましょうかね。
by Enrique (2021-01-26 19:35) 

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