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世界初のデジカメ [科学と技術一般]

IEEEのSpectrumの7月20日号の”Past Forward"に”BORN DIGITAL”のタイトルでデジタルカメラの画像が載っています。

BORN DIGITAL 1975年12月12日,
コダックのエンジニアSteven Sassonが試作した世界初?
のデジタルカメラ        GEORGE EASTMAN MUSEUM
重量が3.6kgでトースターくらいの大きさで,GEORGE EASTMAN博物館のテクニシャン氏の言は"Needs Work(労働を要する)"のだとか。歴史的価値のあるもので,お宝価値は高いものでしょう。この記事に載るものはたいがい滑稽な感じがするものですが,これは自分の記憶にある年代のもののためか,その感がまるでありません。

撮像素子は100x100ピクセルのCCD,おそらくモニターが無いので上の光学ファインダーを覗くのでしょう。画像は当然モノクロ,記録媒体はカセットテープです。CCDはもちろん現役技術ですし,カセットテープも(初期のアナログ記録のものが)まだあります。当時当方は既にギターも始めていましたし,そんなに古い感じがしません。確かに当時はお手軽な記憶媒体が無いですし,コンピュータはありましたが,大型汎用機のみで,Apple社もMS社もまだ無く,パーソナルコンピュータはまだありません。当方はTOSBAC-3400に読ませるFORTRANで書いたプログラム穿孔カードをせっせとタイピングしていた頃でした。MSの操業が1975年,ウォズニアックとジョブズが世界初のパソコンApple Iを作ったのが1976年でした。

記憶媒体としてカセットテープを用いたようですが,DECがデジタルカセットを出していたというのは少し驚きです。私が今現役で使っているハイビジョンのデジタルビデオカメラはDVカセットテープです(むろん画像の物は元祖フィリップスのカセットのデジタル版?のようです)。

ソニーのアナログ式マビカが試作されたのが1981年だそうです(当方アナログテレビに静止画像を映しているデモを見ました)。6年後のマビカでも早すぎて一旦挫折しました。
撮像素子にイメージオルシコン管を使い,大がかりなデジタイザなどを使って大型汎用コンピュータを介してIBMの3350ハードディスク装置にでも記録する設備でもあれば,もう少し滑稽感があったかもしれませんが,当時そんなバカバカしい事をして,画像をまともにデジタル記録しようなどと言う発想は無かったはずです。写真はフィルムに撮るのが当たり前,動画はアナログビデオテープに録るのが当たり前のアナログ全盛時代でした。現代のデジカメに比べたらスペックは大幅に低いのは当然ながら,45年前にすでに現在のデジカメのしくみを実現しているのは立派です。この手の(デジタル)技術は,高度に洗練されてアナログ伝統技術に追いつきますが,一旦追いつかれた後のアナログ機器の衰退は何とも非情なものがあります。

これを試作したコダックのエンジニア氏は,まさか米国有数の超優良企業だった同社がこれ(の進化版)でやられて破綻しようとは夢にも思わなかったことでしょう。
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アヨアン・イゴカー

巨大なデジカメですね。
アイデアがいくらあっても、ハード面が追いつかないと商品化ができない、そういことは以前はいくつもあったように思います。
シンセサイザーや音源は、PCの発達と平行して、どんどん改善され、安くコンパクトになりました。
by アヨアン・イゴカー (2020-07-28 16:11) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
当時のハード技術ではアナログTVの画像レベルの静止画を保存するにも一大設備が必要だっはずです。手作り試作品ですが世界初のデジカメをトースター大によくぞまとめたものだと思います。私には現在のデジカメはこれからそう極端な進歩には見えないのですが,実用性としては格段でしょう。
ハードウェアの進歩はすさまじいのですが,それを良いことにOSやアプリはハード資源を無駄使いしている様にも感じます。PCは永遠の未完成品ですね。
by Enrique (2020-07-28 21:24) 

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