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2020年トップ技術 [科学と技術一般]

IEEEのスペクトラム2020年1月号は,「Top Tech 2020」というカヴァーストーリーです。

すでに2月号が発行されていて,1ヶ月遅れなのですが,記事を紹介しておきます。
IEEEに限らずですが世の中の学協会では紙の媒体の論文誌は廃止されていますが,この全分野共通の読み物であるSpectrumは,毎月送られて来ます。当方ロートルですが,世の技術の進歩を多少は感じるため時々目を通します。一時期に比べ随分薄くパンフレットのような冊子になりましたが。

ともあれ,1月号は例年新技術に関する記事です。Winner/Loserとかやった時代もありました。Loserの技術が考えさせられたりしましたが。能書きはこのくらいにして,2020年の技術を見てみましょう。

14の技術項目が載っています。
Cerebras’s Giant Chip Will Smash Deep Learning’s Speed Barrier
「Cerebras社のチップを使ったコンピュータは,何週間もかかったAIシステムの構築を数時間にするだろう」とあります。現在のAIブームでは,「深層学習」という手法を用いるのが特徴ですが,これには膨大な学習演算時間が掛かりますが,同社のチップはその時間の壁を打ち破るだろうと。いわば現在のAI技術進展のハードウェア側のブレークスルーだとしているようです。

U.S. Commercial Drone Deliveries Will Finally Be a Thing in 2020
「厳しい規制審査にかかわらず,ドローンによる実用的な商用配信が開始される」とあります。UPSの荷物を運んでいる写真が掲載されています。

The Return of the Lithium-Metal Battery
「XNRGI社は,多孔質Si陽極のリチウム金属電池の商業化に近づいている」とあります。
実用化しているリチウムイオン電池(これの開発で吉野彰氏ら3人が昨年ノーベル賞受賞)に比べ,リチウム金属電池はさらに小型大容量なのは分かっていましたが,いくつかの技術課題を解決しつつあるようです。

Boeing’s Autonomous Fighter Jet Will Fly Over the Australian Outback
自律飛行の戦闘機なるものが開発されていますが,「ボーイング社のロボット航空機は有人飛行機に同行,火力を追加して敵の攻撃を阻止する」のだそうです。

Your Next Salad Could Be Grown by a Robot
「カリフォルニアが始めるFarmWiseは,ロボット工学と機械学習が作物をより美しく健康的にするだろうと。」無人のトラクタが圃場のサラダ菜の世話をしている写真が載っています。

Bon Voyage for the Autonomous Ship Mayflower
「無人の太陽光と風力発電で動くメイフラワー船のチームは,同名のメイフラワー号の400周年に合わせて出帆する」そうです。

Image: Facebook
Facebook AI Launches Its Deepfake Detection Challenge
「Facebook社は,NeurIPSコンファレンスで研究者にディープフェイクビデオの検出ツール構築を依頼」 欧米系の女性の顔がディープフェイクされてアジア系の女性に挿げ替えられている写真が載っています。オリジナルを見なければ,それとは気が付きません。こういうことが日常茶飯にあると世の中もフェイクになります。

4 Missions Will Search the Martian Atmosphere and Soil for Signs of Life
「ExoMars 2020,Mars 2020,HX-1,およびHopeが,生命の痕跡を探す。」とあります。火星探査が本格化する様です。

U.S. Consumers Might Get Their First Taste of Transgenic Salmon This Year
「AquaBounty社の魚は,人間が消費することを承認された世界初の生物工学動物」とあります。遺伝子組み換え技術で巨大化させたサーモンを米国消費者は受け入れるのでしょうか。

No Job Is Too Small for Compact Geostationary Satellites
「Astranis社とGapSat社は,2020年と2021年に静止軌道小型衛星を打ち上げ,衛星空白地帯を埋める。」とあります。

Caltech’s Brain-Controlled Exoskeleton Will Help Paraplegics Walk
「外骨格のニューラル接続により,脊髄損傷のある人が松葉杖なしでバランスを取り歩くことができる。」とあります。カルテク(カルフォルニア工科大学)の研究者が開発したようです。

10 Tantalizing Tech Milestones to Look for in 2020
その他,以下の10の "tantalizing"「待望の」技術里標とでも言いましょうか。バイオニックの肢体,電気飛行機,核融合など。
・Mind-Controlled Bionic Limbs Will Debut in the Boston Marathon
・Artificial Diamonds Will Really Shine
・Huge Pumped-Storage Project Breaks Ground in Montana
・Will a Facebook-Backed Cryptocurrency Overcome Legal Hurdles?
・Tesla’s 2020 Roadster to Hit the Streets
・Lockheed Martin Takes Another Step Toward Compact, Convenient Nuclear Fusion
・A New Job for a Robot: Mowing
・GE Unveils a Bigger, Better Wind Turbine
・Google and Apple Compete for the Attention of Gamers
Photo-Illustration: Edmon de Haro

Will China Attain Exascale Supercomputing in 2020?
「米国,中国,日本,EUはすべて,エクサスケール(1018FLOPS規模)のスーパーコンピューティングの次の大きなマイルストーンに到達するよう努力していますが,中国は今年度に達成と主張。」とあります。ここで初めてアメリカ以外の話題が登場しました。アメリカと中国,日本とEUが空手で戦っているイラストが載っています。

Panasonic’s Cloud Analytics Will Give Cars a Guardian Angel
「200メートル先の凍結」:Cirrusシステムは,ドライバーに個別の警告を出す。
Panasonicですからたぶん日本発の技術でしょうが,同社はもう何年も前に外国人技術者が数千人と聞いています。

一般紙でも話題だった量子コンピュータは取り上げられていません。「2020年の技術」と言うには未だ実用段階ではないとみるべきなのでしょう。
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