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「楽器の物理学」を読む(その4) [楽器音響]

「楽器の物理学」の第III部,第9章 ギターとリュートをゆっくり見ています。今回は9.3節です。

9.3 弦が作用する力
やや分かりにくいタイトルですが,「はじかれた弦がブリッジに作用する力」という事です。ここでは力学的な数式から弦の変形量から発生する力を求めています。弦の横方向成分と縦方向成分を求めています。ここで注意しなければならないのは,表面板に対して垂直方向成分も平行方向成分も横成分としていることで,ここで言う縦成分とは,弦の伸縮振動のことを言っています。表面板に対する弦振動の水平・垂直に関しての挙動差に関しては後に(9.8節で)指摘と議論があります。

この節での結論的なものは,ナイロン弦では弦振動の横成分の方がずっと大きく表板との結合の効率が良いこと,一方スチール弦ではヤング率が高いため縦成分(ここでは弦の伸縮振動)とトントンだと述べられています。当然のことではありますが,ナイロンとスチールという弦の素材の違いが弦の力学的特性に効いているわけです。

もう一つの結論も当たり前のものですが,駒近くを弾くほうが,弦の力を大きく出来ることが定量的に述べられています。駒近くで同じ弦の最大変形を与えるには,当然大きな力が必要です。

弦の振動パターンと駒に及ぼす力の波形とスペクトルが与えられています。
弦の振動(変位)は図のようになるのは当方も確認済みですが,力の波形としているものが弦変位の一階微分のように見えます。力は加速度に比例ですから,弦変位の二階微分であり,図のように方形波的ではなく,パルス列になるのではないかな?と思うのですが,何処かに積分要素があるのかもしれませんが,(第2章を参照しても)本文の記述からは読み取れません。

図9.5.png

弦の力学的事項には余り関係なさそうなことですが,弦の老化についても言及されていて,汚れだとの定説?が紹介されています。弦のゲージに関する記述もありますが,6本の弦の張力が同程度になるのが良さそうといった常識的なものです。市販の弦では弦ごとに張力が結構異なりますが,それに関する指摘はありません(つづく)。
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