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「楽器の物理学」を読む(その3) [楽器音響]

「楽器の物理学」の第III部,第9章 ギターとリュートをゆっくり見ています。前回は前書きと9.1節を見ました。今回は9.2節です。

楽器の物理学

楽器の物理学

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 単行本

9.2 連成振動系としてのギター
「ギターは連成振動系と考えられる」とあります。振動論をやった人ならピンと来ると思いますが,そうでない人は,「連成振動って何?」となると思います。この本では第I部(第5章まで)で解説しているはずですが,「連成振動」なる言葉はここしか出てきませんが,むろん第4章の結合振動系がまさにそれにあたるわけで,その様に記述があります。

ここで述べているのは,ギターの振動系は弦の振動系と胴の振動系とが結合した連成振動だという事です。
連成振動について補足しておけば,例えば,単振動(1自由度)に対して,別の共振周波数を持った振動が重なった多自由度の振動だという事です。単振動は一つの共振周波数しか持ちえませんが,多自由度の振動では幾つもの共振周波数を持ちます。連続体の場合は無限自由度の振動(いわば波動)という事になりますが,面白いことにまたこうなると却ってきれいになって,いくつかの共振を持った他自由度的に扱うことができます。弦の振動も胴の振動もむろん多自由度の振動なわけですが,それぞれを理論モデルで表せば比較的すっきりした振動系になり,両者がマクロに連成振動すると考えれば,ギターが理論解析しやすいと言っているわけです。

音響振動的には常識事項ということでしょうか。特にここでは根拠を示しませんが,ギターの振動伝達の概略を示しています。
図9.3Small.png

ギターの音響に関しては表面板が最も重要と言われますが,高音に関しては表板を振動させるための駒が重要なこと,低音に関しては空洞共鳴と共に側板裏板が重要な事がわかります。

なお,弦の振動に関しては2.8節,表面板の振動に関しては第3章,結合振動系に関しては第4章で既に述べているが,以降特にギターに関して少し詳しく論ずるとの事です(つづく)。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

弦の振動は「横波」で、最終的にギターから出る音は空気の疎密波すなわち「縦波」です。振動伝達のどの過程でどのように「横波」が「縦波」に変わるのか考えていましたが、私なんぞの頭でわかる訳はありません。(^^;
何かこの辺の事が書いてあれば嬉しいのですが。(^^;


by たこやきおやじ (2019-10-31 10:51) 

Enrique

たこやきおやじさん,
そんなに難解な事が書いてあるわけではありません。
次の節で弦の振動の力が議論されます。
ナイロン弦ではあらかた横波で,スチール弦では結構縦波(伸縮)も混ざり,トントンだとのことです(弦のヤング率の違いです)。
ただ縦波横波というのも気を付けないといけません。弦は横波ですが,表面板を垂直に揺するのは,弦の(横波の)垂直成分です。
表面板はスピーカーのコーン紙にあたり,駒がヴォイスコイル部分と考えればよいのでしょう。胴のヘルムホルツ共鳴はバスレフと同じですね。

ピアノのハンマーは響板に対して弦を垂直方向に叩きます(が余韻には水平成分が出ます)ので,弦の横揺れの垂直成分が駒を介して響板を揺らすイメージです。
ヴァイオリンでは明らかに板に水平成分の振動ですが,駒の猫足で表面板の垂直方向の力に変換します。
ギターは板に水平垂直両者混在している状態で,駒の役割というのはここで指摘されているように,高音のみなのでしょう。
by Enrique (2019-10-31 16:03) 

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