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バッハのプレリュード,フーガ,アレグロ(BWV998)(続・その2) [曲目]

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この曲に関する思い出話しをつづっていますが,この曲に限らず,「ギターによるバッハ演奏の思い出」になりつつあります。

何しろ難しいです。

ギターの場合,カルリやカルカッシを少しやっても,バッハの主要レパートリーには全く歯が立ちません。今になって思えば,ソルのOp.6と29,少なくともセゴビア版の20曲くらいをマスターしなければ,バッハの演奏レベルでは無いのですが,当時は無謀なものです。

「これを弾きたい!」という情熱の力は強いものです。そこそこまでは弾いてしまいます。独学時に弾いていたバッハ曲は,組曲BWV996ホ短調(1番)のアルマンド,ブーレ,999のプレリュード,そして998のプレリュードなどでした。「など」というのは他も弾きたいけども全く歯が立たなかったということです。例えば組曲ホ長調BWV1006aのプレリュードやロンド風ガヴォットは,とても弾きたい部類でしたが,これらをスムーズに弾きとおすなどとはどういう技術だろうか?と思っていました。比較的弾きやすい組曲ホ短調であっても,最終曲のジーグなどおよそ鍵盤曲の体で,こんなものどうやったら弾けるのか想像もつきませんでした。少し後から,歯が立ちそうなものとして,ヴァイオリンパルティータ第1番の後半(サラバンド・ドーブル,ブーレ・ドーブル)などを弾いていました。シャコンヌはあまり弾きたいとは思いませんでした。

今になって考えても,ギターで弾くバッハは特殊技術だと思います。例えば鍵盤なら,基礎練習を積んでいけば,それなりにバッハを弾けるレベルには到達します。初級レベルでも楽しめる曲はけっこうあります。私が独学時代ギターで頑張って弾いていたブーレやリュートのためのプレリュードは,鍵盤では初級の小品の一つにしか過ぎません。ギターでいくらスケールとアルペジオと練習曲をやっていても,なかなかバッハの演奏レベルには到達しません。バッハはバッハを弾いて身につけるしかありません。ギターに限らずですが,基礎を度外視しても,好きな曲であれば何とかモノになるということはあるでしょうが。

今になって思えば,ギターで弾くバッハというのは,無理を如何にスムーズに見せるかという技術かもしれません。モダンヴァイオリンやモダンチェロでバッハの無伴奏曲を弾くのとも共通の課題かもしれません。これを演奏する人は皆プロで,素人でこれに取り組む人をあまり見たことがありません。その点,鍵盤ではバッハ小品集の類なら,バイエル終了程度でも何とかなりますし,その次はインヴェンションとシンフォニア。子供はその前にプレインヴェンションなるものをやっていたりします。これは例の「アンナマグダレーナバッハの音楽帳」の収録曲などを含みます。この辺はバッハが教育用に書いたと言え,すでに音楽内容的にはリュート組曲レベルです。違うのは曲の構成規模だけ。そして,ウェルテンペラメント(平均律)の第一巻,第二巻のプレリュードとフーガ各24曲。パルティータ,イギリス組曲,フランス組曲の各6組曲,それにゴールドベルク変奏曲,ざっと思いつくだけでも,膨大な曲数です。鍵盤以外の主要楽器用のヴァイオリン6組曲,チェロ6組曲,リュート4組曲と998などを合わせても,鍵盤曲の膨大さには及びません。

はっきり言って,ギターで弾くバッハの余りの難しさに嫌気がさしてしまいました。頑張って弾いたって鍵盤の子供レベル。それなら,鍵盤をやっちゃえという至ってシンプルな動機で鍵盤を始めたのでした。学生時代も終わりに差し掛かる頃でした(つづく)。
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黒板六郎

今合奏で、インベンションの1.2.13番と小フーガ、バッハ作でないとわかった有名なメヌエット、主よ人の望みの喜びよをやってますが、むずいですねえ。特にインベンションは難渋してます。全部2重奏なんですが、半端じゃないです。決まれば素敵なんですけどね。
by 黒板六郎 (2017-08-09 23:28) 

Enrique

黒板六郎さん,合奏なさるんですか。
パートが分かれるので出音自体はラクでも,今度は合わせやバランスが難しいでしょう。以前インヴェンションの1,2,15番を独奏で弾いてみましたが,とても人前で弾ける様な代物ではなかったですね。2重奏あたりはギターで弾く妥当なところだろうと思いますが,やはりアンサンブルが難しいでしょう。
by Enrique (2017-08-14 03:04) 

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