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ギターはなぜオケに無いか? [楽器音響]


「ギターを弾いている」というと,タイトルの様な質問をされた事があります。

確かに素朴な疑問です。クラギをやっている人には当たり前というか,織り込み済みの事項でも,一般の方には疑問でしょう。

現代のオーケストラは管楽器や弦楽器,打楽器がきらびやかに揃い,まるで楽器の見本市の様な様相です。ハープは入ることも結構ありますが,ピアノはごく稀です。ということは単独での和声楽器は入らないと見られます。オケにミックスする素材として優れたメロディ楽器は入るが,単独で独奏可能な楽器は色彩付けなどの独特な目的以外では入らないと見るのが妥当でしょう。

別の観点から言えば,打楽器を除けば,オケのメロディ楽器と言うのは非線形発音機構を持ったものと言う事もできると思います。管楽器ならば息を吹き込むこと,弦楽器ならば弓で擦るという定常的な外力で振動を発生させます。これは自励振動と呼ばれる非線形振動の一種で,本質的に音同士が協調しやすい特徴を持っていると思われます。

さて,本題のギターですが,通常のシンフォニーでは全く見かけないわけですが,試みた作曲家がいます。マーラーの交響曲第7番の第4楽章にはマンドリンと共にギターが登場しますが,とても楽器を生かした使い方とは思えないという記事を書きました。

もちろん音量面の課題もあるでしょう。その点,ポピュラー音楽では音量面で心配の無いエレキギターは必需楽器になっています。また,現在主流の楽器であっても,オーケストラが確立した頃にまだ生まれていなかった楽器は入りようがありません。例としては,サキソフォンは古典時期にはまだ生まれていなかったので,この楽器が入る様になったのは,後年の作品からです。逆にリコーダーはバロック期にはアンサンブルの花形楽器でしたが,古典器以降は横笛のフルートにとって変わられました。そのような,歴史的な必然もあるでしょう。ギターはルネサンス期バロック期と少しづつ形を変えながらあり古典期に隆盛しましたが,盛んだった地域がスペインやイタリア中心と,オケが発達したドイツやオーストリアのクラシック音楽の主流とは異なっていた事や,コンサート楽器というよりも,現在のアップライトピアノのような家庭楽器だったという面もあるのでしょう。

以上挙げた理由をまとめてみますと,
・メロディ楽器で協調性がある
・歴史的に合う
・地域的に合う
・音量が大きい

などの条件にすべてハマったものがオケ楽器に入るといえるのでしょう。そうしますと,ギターは歴史以外はすべてアウトです。

オケと協奏するコンチェルトも珍しいものでしたが,現在では多数表れています。作曲技法,楽器性能や奏法の進歩などもありますが,依然音量面は難しいので,電気増幅も必ずしもタブーではなくなっているようです。

クラシカルギターは一本で小さなオーケストラだから,大オーケストラに埋没したら台無しと言えるとも思います。
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アヨアン・イゴカー

記事を拝見していて、ギターやバラライカなども4人~5人くらいの編成でオーケストラの一部として入ると言うのも新しい音楽作りにはあってもよいと思いました。オーケストラも小編成や大編成があるわけですから、通常編成プラスギター×4やバラライカ×5とした編成があってもおかしくない筈です。必要なのは、その音に合った音楽で、それは作曲家の感性、趣味、それらの楽器への情熱などが入ることになるのではないかと思います。
by アヨアン・イゴカー (2014-06-05 22:47) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
アヨアンさんは,ご自身の作品にも取り上げられていますが,コメント拝見して,濱田滋郎さんが書いていたものを思い出しました。「ギターが分からないと得意げに言う評論家がいたが,それなら音楽語れないから評論家止めなさいと」と書いていました。
ギターは独奏できる楽器なので,敢てオケに入れなくても良いわけですが,独特な効果も上げうると思います。確かに4台くらいあれば表現力が増します。名手4人のLAGQやロメロ一家の演奏,4つのギターの為に作られたロドリーゴの協奏作品などでもそれは発揮されていると思います。
スパニッシュギターのヴァリエーションとしてバラライカやポルトガルギターなども考えられます。現代作曲家ではエレキギターを使う人もぼちぼちいるようですが,それはそれとしても生楽器の良さを生かす様なサウンドの試みももっとなされても良いのでしょう。
by Enrique (2014-06-06 07:41) 

Ujiki.oO

 おはようございます。 暗い時代のわたしの青春時代。 わたしは寮のゴミから絃を巻く金具位置の木が割れているだけのギターを拾い、治して弾いてました。(笑) 音は悪くなかった。 どうしてもマイナーなメロディーしか弾けなくて、40年経っても青春時代の暗い自分だった思い出が蘇ります。(微笑) 女子2人と親友がウッドベースの4人組のフォークグループを結成して歌ってました。 わたしがギター。(爆笑大笑) 「ギター」の演奏を聴衆が静かに、ずっと聴いてくれるような文化が欲しいですね。
> 85円の時に導入しました
 流石っ! わたしも直ぐに使わなくなったんです。 どうして主流にならないんでしょうね。 PRが下手なのかな? FLASH PLAYER だけを取れば素晴らしいモバイル用のブラウザーだと思えるんですけど。 パソコン用のブラウザーとして有名にならないと難しいのかな。(微笑) キーボードの使いやすさまでは知りませんでした。 もう一度、触ってみます。(笑)

http://create2014.blog.so-net.ne.jp/Bookmarklet4So-net2PCmode#comm201406060752
by Ujiki.oO (2014-06-06 09:54) 

Enrique

Ujiki.oOさん,nice&コメントありがとうございます。
拾ったギターを弾いていたお話は,ゴンチチのお二人のどちらかの方もその様にラジオ番組で仰っていました。ピアノは弾かなくても捨てるのは容易でありませんが,ギターは割と簡単に捨ててあるので,流通性も抜群なわけです(笑)。そこそこの楽器でも弾かない人にしたら粗大ごみなわけですが,価値を感じる人の手に渡れば楽器も本望でしょう。ギターの音は低くて大きくないというのは楽器の特長であり,そこが従来オーケストラ楽器にならなかった一つの理由でもあるのでしょう。40年前の若者の多くはギターを弾いたのですね。
Puffinブラウザの件は,Flash利用可能なだけでも存在意義十分ですが,矢印キーが使えるので,一も二もなく購入した記憶があります。
by Enrique (2014-06-06 17:25) 

Ujiki.oO

 深夜にゴソゴソしております。 おはようございます。(笑)
> 驚きを禁じえません。
 ありがとうございます。 まあ、女性オーナーの多くは「(自分が)楽しくできれば、それで充分」と、我関せずかなとも感じており、独り言の呟き程度かなと諦めかけておりましたが、どこに向かうか分かりませんが、頑張ります!(笑) これからも宜しくお願い致します。

http://create2014.blog.so-net.ne.jp/BlogThemeOfSo-net#comm201406072015
by Ujiki.oO (2014-06-08 01:36) 

Enrique

不条理に立ち向かうUjiki.oOさんに勇気をもらいます(笑)。ヘンさに気づいても技術力がないと立ち向かえないわけですが。その点貴ブログは画期的です。
by Enrique (2014-06-08 06:16) 

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