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弦の落ち着きについて [楽器音響]

ここイチバン,よかれと思って新しい弦を張って臨んだが,ステージで音がずれまくって大失敗したという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私がそうなのですが,弦の張り替えは前日は言うに及ばず,2,3日前でもあぶないでしょう。

この頃は,落ち着きの早い弦もあるようですが,クラシックギターで主流のナイロン弦は必ず伸びるという特性があります。これを温度毎などできちんとデータをとれば,ギター関係者には大変有用なものになると思いますが,誰かやっている人はいるのでしょうか?もしあれば是非見てみたいものです。

弦の伸びの時間変化がどのようになっているか,データがあれば一番いいのですが,ここでは無いとして,数式などを使わないで定性的な話をしてみようと思います。


弦が所定の張りの強さ(ピッチ)に張られたとします。みるみる張力が低下します。再度弦を巻いて合わせます。その下がり方がだんだん少なくなって行くと思います。

これは弦がじわじわ伸びて行く過程なわけですが,単純な緩和過程というのは指数関数的に表されますので,時間が経つにつれ変化量は減る(変化率は一定)ものの,じわじわ伸び続けることになります。

しかし,実際の弦を張った感覚では,最初はどんどん伸びますが,伸びが落ちついてしまえば,殆ど伸びなくなります。このような変化を示すのは,速く変化する機構からゆっくりと変化する機構までが分布していて,十分時間が経てば,ゆっくりの緩和機構までがおおかた終了することによると思われます。

その様な機構を持つ変化は典型的には下図のような形になります。他の特性変化するものからの類推で,あくまで定性的な想像図ですが,当たらずも遠からずといったものだろうと思います。
NylonString.png
Change in elongations of nylon strings with time at various temperatures (imaginary drawing).

同図では温度がパラメータになっており,速く落ち着かせる為には,温度を上げるのが有効です。楽器や弦に影響しない程度の高めの室温におけば,落ち着きは早いかもしれません。温度が上げられなければ,十分時間をおくか引っ張るかしか方法はありません。


ばててなくて伸びが落ちついた弦を準備するには,セカンド,サードの楽器に張ってあまり弾かないで置いたものを外して使うか,落ち着き専用の弦張り器を作成して,そこに新しい弦を張って常時スタンバイしておくという手もあるかも知れません。

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Estruch

弦の伸びについては「工房ミネハラ」というウェブサイトにクリープでの伸び量が記載されています。
http://www.minehara.com/mechnics/guitarmech15.htm

自分でも簡単な実験を以前行ったことがあります。
http://guitarras.seesaa.net/article/368954269.html

弦全体がじわじわと伸びて音程が下がるのはもちろんとして、糸巻き部分(巻かれている部分)のテンションがナット-サドル間のテンションと同じになるまでじわじわと伸びていく要素のほうが強いのではないかとも考えています。

つまり、テンションをかけずに弦を交換し、ユルユルの状態から張っていって糸巻きに何重にも巻かれた状態と、テンションをかけながら弦を交換して糸巻きには2回ぐらいしか巻かれていない状態とでは、後者のほうが音程の落ち着きが早いのではないでしょうか。

弦の交換方法は人によって違うので、いつまでも音程が下がり続けてしまうという人と、いやそんなことはない、音程は早めに安定するよ、という人がいるのはそのせいかもしれません。

とはいえ、かつて、ここら辺の話を定量的・科学的に考察したような情報をインターネットを検索してみたものの、残念ながら見つかりませんでしたが。

ぜひ考察をお願いいたします。
by Estruch (2014-05-23 01:11) 

玉野井徹

昔観たTVで高名なギタリストは、糸巻きには2回程度しか巻き付けるなと言ってました。弦を張りながら1本ずつ弓をひくように引き伸ばしていく方法と併用すると伸びをかなり低減できます。
ところで(永遠のテーマですが)長く弾かない時、みなさんは弦を緩めるのでしょうか? ギターショップ(フォークGを除く)の約3%は張りっぱなしをよしとしています。
by 玉野井徹 (2014-05-23 02:34) 

Enrique

Estruchさん,コメント/情報ありがとうございます。
定性的には予想通りなのでほっとしています。
だいたい一定量伸びて落ちつくが,じわじわ変化する速度の問題ですね。その上で,マシンヘッド巻き込み量の件は,私も複数の方から聞いています。ゆっくり伸びる成分を溜め込むという,定説?なのかなと思いますが,定量性的にどのくらいなのかは分かりにくいですね。糸巻きの軸の滑り具合にもよりそうですが,良く滑れば速く落ちついてしまいそうですし,完全に滑らなければその溜め込み効果は無い事になります。
ミネハラさんの測定でも私の想像図でも時間スケールは対数ですから,落ち着きが早い遅いは人による感覚差の方が大きいと思います。何を持って落ちついたと見るかの定量的指標が必要ですね。物理的な面でも私の説?では温度によりますから,巻き込み量以外にそちらの差も大きいと思います。
それから,これまた経験的ですが,今の弦は昔の弦に比べ弦の挙動が異なる様な気がします。大昔よりも落ち着きは速いようで,温度上昇で音程が上がるという挙動は昔は余り無かった様に感じています。
by Enrique (2014-05-23 07:17) 

Enrique

玉野井徹さん,コメントありがとうございます。
やはり,巻き付け量は少ない方が良いというのは定説のようですね。ただケチな私は何度か弦をずらして使うので,その分の余裕を巻き込んでいます。巻き込み量を減らして余剰分を切らずに結わえておくという方法もありますね。張り替え時はあちこち引っ張って伸びしろを溜めていると思われる箇所をチェックしています。
弦を緩めるかどうかですが,私は一切緩めていません。理屈上,繰り返し荷重が掛かるのでは楽器が落ちつかないという説をとっていますが,本音は,タダでさえ少ない練習時間をチューニングで減らしたくないからですね。
by Enrique (2014-05-23 07:27) 

夢笛myu

巻き付け量が少ない方が良いとのお話し、なるほどですね。
6弦をレに下げる変則調弦を行う時、ミからレにただ下げただけでは、曲を弾いている間に戻って=高くなって=きます。それを避けるために、レに下げる時は糸巻きを8回廻して5回戻すなどとも言われます。
これなども、巻き付け部分の張りの変化が絡んでいるのかも知れませんね。
by 夢笛myu (2014-05-23 10:32) 

Enrique

夢笛myuさん,コメントありがとうございます。
伸びやちぢみに対する弦の応答が遅れてやって来るのは経験的にも明らかですが,巻き付け量の多寡が応答の遅れにどのくらい寄与しているのか?最短に切った方が落ち着きが良いというのは間違いないと思いますが,私は敢えて実行していません。最大見積もっても弦の全長に対する巻き込み量の分ですが,巻いてある弦は摩擦で張力が殺されますから,全部寄与するとも思われません。
下げる側ではダメで上げる側で音を決めるのは,ピアノなどのチューニングピンでも同様です。ならば,ナイロン弦もスチール弦も同じことなのかというと,ヴァイオリンのスチール弦では余剰を切ることはせず,全部巻き込みます。
私は,巻き付け量が少ない方が良いという説は,必ずしも物理的な問題ではなくて,ギヤの付いたギターのペグでは巻く時間が長いので延々と伸び続けているように感じる,感覚的なものではないかと思っています。ヴァイオリンやチェロではギヤでないのでペグに多少弦の余剰を巻き込んでも巻きこまなくても手間は殆ど変わりませんし,短く切ることも行われません。
by Enrique (2014-05-23 19:02) 

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