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固定ドか移動ドか [演奏技術]

先日コメントでこのような質問を受けましたが,これはなかなか何とも言えません。 常識的には,楽器は固定ド,歌は移動ドもありな感じを持っています。私は歌は歌わないので,固定ドですが,そう意識もしていないので,不完全固定ドとでも言えるかも知れません。

セゴビアのスケールをやる上での,ドレミの歌い方とのことなのですが,これは正直どちらでもいい様な気がします。移動ドで長調ならば全てドレミファソラシド,短調ならばすべてラシドレミファソラ(上昇時後半にい1,2個#がつきます)なので,あまり歌う必要性も無い様に思いますので,むしろ固定ドで色んな調を歌ってみると,変化記号が付く感じが分っていいかもしれません。ただ,ギターの場合,黒鍵を弾くという感覚は無いですから,あまりそれも必要ないかも知れません。

何分,私自身いいかげんなので,あまり他の方にアドヴァイスは出来ませんし,その上で,音の感じ方・捉え方というのはかなり個人差が激しいものだと思います。聴く音すべて(固定ドの)ドレミファに聴こえる人がいます。楽器をやっている人にはけっこう多いようですが,このような人にとっては,移動ドは,苦痛と混乱以外の何物でもありません。しかし,かつての学校の音楽教育では,歌を歌うことを基本にしたせいか,移動ドで歌わせていました。私もそれで学びましたが,正直苦手でした。音感があったから苦手だったわけではなくて,音の高さとドレミファがよく対応していなかったのです。

移動ドのドレミファはだれでも歌えるという前提だったようです。すらすらと移動ドで歌える子はすごいなと思いました(今思えば,せいぜいト長調かヘ長調だったのですが)。私にとってト音記号での低いドは,鍵盤の真ん中のドでありソプラノリコーダーで指を全部閉じたドだったわけです。ソなら5つめの音,ソプラノリコーダーで右手を全部離した音,といった様に,鍵盤やリコーダーの指使いと結びついたものだったのです。ソロバンの玉をはじく感覚とか,忘れた漢字を思い出す時に宙で書いてみるとか,そんなものです。ですからドレミファで歌うというのは鍵盤を弾く感じなのです。

鍵盤の場合は,調号に応じて黒鍵を弾きますが,ギターはそれがありません。例えば移動ドで半音上げるのは譜面では#が7個つき,鍵盤では黒鍵を弾く回数が変わりますが,ギターでは(開放弦を使っていなければ)同じ指づかいで1フレットずらすだけでOKです。この辺が,ギターでは移動ドとの相性がよいという事になるかもしれませんが,固定ドで見ても変化記号を付けていけばいいだけですし,鍵盤でも慣れれば半音ずらしでも自動的に指が追従するでしょうから,どちらがどちらとも言えないと思います。

たぶん鍵盤では固定ドの方がやや便利,弦楽器では移動ドも使えれば便利といったところでしょうか?結局どちらが良いか結論は出ませんが,少なくとも私は色んな調のメロディを移動ドで歌える自信は全くありません。ただ,色んな調のスケールの場合は,どれも順番並びですから,順番通り歌えばよいだけですので,移動ドで良いでしょうが,それが何かしらメリットが有るとも思えません。一方,固定ドでは変化記号を付けて歌うのは面倒ですが,ぱっと読んで楽器を弾けるメリットが有ると思います。

移動ドは調やピッチに影響されずに音の相対的並びを把握出来る強みはあります,それは特に長調で強力な一方,短調では音程感が不安定でそのメリットは小さいと思います。実際の楽曲でメロディを歌ったりするには,移動ドも効果的ですが,スケールは技術練習の側面が大きく,ポジションと音名とが一対一で対応した方が良いと思いますので,この場合は固定ドで良いのではないかと思います。位置を良く覚えないといけない初級の方の場合は特にそうだと思います。

以下は,歌い方とは別にスケール練習における私感です。 およそどの楽器でも,基礎技術としてのスケールの重要性は論を待ちません。ギターにおいてもアルペジオとともに重要です。特に楽器の特性からギターはアルペジオが得意ですが,スケールは左右のタイミングが合わないときれいに弾けません。

セゴビアのスケールは,これをやれば効果的と言う一つの指針にはなると思いますが,絶対とは思いませんし,全部やる必要性も感じません。専門家や上級者はやっておくべきですが,初級・中級者は,ハ長調とイ短調くらいで良いのではないかと思います。またそうすれば,固定ドか移動ドかという問題も起こりません。特に初心者ではまず場所を覚える事が重要ですので,固定ドで良いと思います。

スケールの体系として,全部の調を示さないといけませんが,果たしてそれをすべてやる必要があるかどうかです。セゴビア当人も,当のスケールはさておき,ポンセが作った24の調性のプレリュードをかなり移調して弾いています。技術練習として完璧を目指すにしても,平行移動だけのスケールはダブってやらなくても良いと思います。


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Tommy

早速取り上げていただきありがとうございます。初心者には固定ドと移動ドをどう理解して練習すれば良いか迷っていましたので大変助かりました。又、”ポジションと音名とが一対一で対応した方が良いと思いますので,この場合は固定ドで良いのではないかと思います。” 確かに今はTAB譜に頼りポジション探しをしています。応用力をつけるには指板上の音階を覚えることも必要ですね。ありがとうございます大変参考になりました。
by Tommy (2014-04-07 09:56) 

Enrique

Tommyさん,コメントありがとうございます。
この点,あまり気にした事がなかったので,新鮮なご質問でした。改めて考えてみました。
なるほど,TAB譜をお使いと言うことで,納得できました。セゴビアのスケールのTAB譜版が出ているのですね?!
開始されて1,2年以内ですと,特にハイポジションのほうの音の場所がはっきりしないと思いますので,音の場所を覚えることがまず先決だと思います。その上で,指板を見なくてもスケールが弾けるようになればよいと思います(ポジション移動時は外さない為に移動「先」を見ることは良い技術だと思います)。
なお,TAB譜に関しては,私はぱっと見れない上に譜めくりの手間が増えるので,これが付いているものは避けています。例えばセゴビアのスケールとカルレバーロのスケールでは音は同じですが運指はかなり違いますので,そうすると,五線譜は同じでも異なるTAB譜が出来上がります。私は音は同じでも運指が何通りにも異なるギターの特性からして融通が利かず却って不便だと思うのですが,昨今は付いている楽譜も多いですね。これに関してもまた書こうと思います。
by Enrique (2014-04-07 23:13) 

REIKO

これに関してはツイッターでも時々議論?になっていて、時に険悪な雰囲気になったりすることもあるのですが…
まず「固定ド」「移動ド」という言葉が変(一体いつ頃から、誰が言い始めたのか?)で、本来はそれぞれ「音名」「階名(唱法)」のはずですよね?
で、「ド・レ・ミ~」という言葉?は「階名(唱法)」のもの、(だから「固定ド」という言葉自体が矛盾)音名はイロハ又はABC(日本では英語読みとドイツ語読みが併用されている)です。
用途・目的によってこれらを使い分けるだけなのに、「私はどっち派」とか「どちらが良いか」のような二者択一の考え方をする人がいるんですよね。どちらか一方しかできない人がいたとしても、それは訓練し損なっただけの話なんですが。
楽器の場合は、五線譜のここに玉があったらここを押さえるとかここを弾く…と覚え、それが反射運動みたいになればいいので、本来ドだのA音だのと認識する必要はなく、その意味でフレット楽器のタブ譜って合理的だと思いますが、それだけだとレッスンや指導の時不便かもしれませんね。
by REIKO (2014-04-08 00:57) 

Enrique

REIKOさん,コメントありがとうございます。
言葉の混乱が誤解を助長している面はありますね。階名唱法と言ってしまえば,歌を歌う際の方法となりますね。小中学校ではその様には習いました。慣れた人が慣用的に使っていても初心の方には誤解を招いてしまいます。「それぞれ便利な分野で使い分け」というのが簡潔な解答でしたね。

楽器を弾く分にはREIKOさんと同じ認識なのですが,楽器なしでもその音の高さで歌え,楽器でも再現出来るというのが一番だと思った結果,人によっては「移動ド」もやり易いのかなと思ったりもしました。視唱する際便利ですが,ピアノはもちろんギターでも多声楽器ですから,それぞれの声部を「階名視唱」するのはなかなか大変です。音から音符を再現する際も「移動ド」は面倒そうです。それにスケールは歌えても,アルペジオは歌うのも困難です。人による感覚の違いがあるので議論にもなるのでしょうね。あと,管楽器は歌のようなものですから,きっと「移動ド」なのでしょうね。

音名,階名,それに加えてタブ譜などの奏法譜があるのでしょうが,ある意味合理的で,ある意味困ります。
実はギターでは五線譜でもタブ譜的な読み方をしているので,極端な変則調弦(スコルダトゥーラ)の楽譜では混乱するので,標準調弦された状態(のつもり)で弾くと実音は正しくなるような五線譜で書いてある事があります。譜面の音はメチャクチャなわけですが。ハーモニクスの表記も奏法譜的です。
by Enrique (2014-04-08 08:16) 

glennmie

両方使い分けられると一番いいんでしょうね。
分析する時は移動しないとできないし、
でも調性がくるくる変わる曲は固定した方が楽ですし。
あと、違う次元の話ですが、移調楽器の人って神業!と思ってしまいます。
by glennmie (2014-04-08 12:52) 

Enrique

glennmieさん,nice&コメントありがとうございます。
なるほど,和声の分析などには必要ですね。ということは,「移動ド」は,ぱっと読めなくても,考えればできるのでもいいのですね。安心しました。
移調のかたはそれが普通で,実音名に変化記号を付けるほうが難しく感じるようです。もちろん楽器(や歌)の特性によるのでしょう。
by Enrique (2014-04-08 23:02) 

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