SSブログ

糸電話と電話の話 [科学と技術一般]


先日糸電話のような楽器の記事を見ました。

あえて言えば,ギターにしろ,ヴァイオリンにしろ,原理は糸電話の様なものです。

糸電話は,糸(弦)に紙コップなどの振動板と共鳴胴がついています。
弦楽器は,糸(弦)に楽器に響板と共鳴胴がついています。

では本物の電話はどうかというと,文字通り電気仕掛けを使っていますが,原理は糸電話と同じようなものです。

糸電話は糸の張力に音圧が重畳されて伝わるわけですが,電話線には48Vの直流電圧が供給されていて,音声もカーボンマイクの抵抗変化による電圧変化で伝送しています。また,供給された直流電圧を用いてベルを鳴らしたり,ダイヤル式以降電話番号の送出もしています。カーボンマイクは音響性能は悪いわけですが,人の音声を拾うのは十分で,原理が単純でかつ大出力でアンプが要らないというスグレモノです。

以前の記事でも取り上げた黒電話は,現在も立派に使えます。電話線さえつなげば100V交流電源は要らず,ちゃんとアコースティックなベル音が鳴り,明瞭に通話できます。
Legacy Phone

ダイヤル式(断続するパルス数で番号を送出)になり自動交換になったわけですが,「ダイヤル式以前のものも記憶にあるし,じっさい使った?(いたずらした)ことがあるよ」と言ったら,娘のみならず妻までが(「自分はそんなトシヨリと結婚していたのか!」と)転げていました。だいぶ最近ではトーン式プッシュホンというものもあって余分な基本料金を取っていましたが,あれだと2つの音程の組み合わせで電話番号の数字を表していましたから,音を聞き取れば番号が分ったわけです。逆に送話器から2つの組み合わせのトーンを送出してやれば,ボタンを押さなくても電話がかけられたわけで,「トーンダイヤラー」なる電卓状のものもありました。

ダイヤル式以前のものは,手回しハンドルがついていました。これで自転車のライト用のような内蔵発電機を回し,発電した電力をコンデンサか充電池に蓄えて,カーボンマイクに掛ける直流電圧を作っていたのです。


普通の電源が要らない電話の特性を物語る子供時代の記憶があります。電話はすでにダイアル式にはなっていましたが,それでも電話自体の普及は100%でなく,近所には電話のない家もけっこうありました。

子供時代のある夜,停電中に呼び出し電話が掛かって来た事がありました。

多分母が,「今停電中なので,少し時間が掛かりますよ」とか言って呼び出しに行っている間,受話器から聞こえてくる先方の声を盗み聞きしていた姉が,「(呼び出しに行くのがイヤなので)見え透いた事を言ってるよね〜」と言ってたと言って憤慨していました。もちろん,呼び出し電話に出た近所の人が真実を告げて,誤解は解消したはずでしたが。停電でも掛かる電話のしくみが災い?したようです。

掛かって来た電話を受けて呼び出しに行くのは,近所へのサービスだったようです。近所の人が来て掛ける場合は,通話代の小銭を置いて行きました。

現代なら携帯電話の普及が生活に深く影響を及ぼす様に,かつてならかつての人間模様があったのです。


現在の家族が驚愕したもっと古い記憶です。実家にあったダイヤルの無いハンドル式の電話の受話器を,そうーっととって見ました。正確な言い回しは忘れましたが,
「どちらに繋ぎますか?」
と非常に明瞭に,目の前に交換女性がいるような声がして,思わず恐くなって切ってしまったものです。

大人たちは,手慣れた感じでハンドルをテキトーに回して電話を掛けていましたので,ハンドルを回さないのに,いきなり人の声が出るのが驚きでした。当時電話に電話番号が割り振られていたのかどうかは分りませんが,「どこどこの誰それ」と交換手に伝えて,つないでもらっていたのです。

各戸の電話機は,電話交換局と繋がっていて,声で聞いて希望の通話先に交換手の女性が,エレキギターのケーブル・ジャックみたいなのを刺し替えて,つないでくれたのでした。

子供の糸電話は,一対一の,いわば専用回線ですが,本物の電話は公衆回線で,各戸から交換局で相手先に繋いでくれます。もちろん現在ではデジタル式の自動交換になっていますが。
nice!(3)  コメント(4) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 4

Hagi

写真の黒電話ですが、我が家ではまだ現役で活躍しています。(笑)
全く壊れない。停電でも使える。見事な機能美。完璧な電話です。
ただ、局側は蓄電設備を維持しないといけないはずなので、
いつまでも使っていると迷惑かも知れませんが。
by Hagi (2014-03-29 06:47) 

Enrique

Hagiさん,コメントありがとうございます。
「黒電話」現役でしたか。これは本当に完成品です。機能的に過不足無く,どんなに手荒に扱ってもまず壊れない。電話のしくみは万国共通ですが,直流電圧の件に関してはどうなんでしょうかね。ダイヤル式以前では,各電話機で作っていたわけですが。もしDC切られたら,手回し式復活でしょうか(笑)。たしかに現在ではDCを維持するのは結構メンドウかも知れません。今回職場の100V-DC電源を捨てましたが,何と回転変流器を使っていました。
by Enrique (2014-03-29 07:59) 

アヨアン・イゴカー

>手回しハンドルがついていました。これで自転車のライト用のような内蔵発電機を回し,発電した電力をコンデンサか充電池に蓄えて

あの電話機、映画などで見たことはありますが、発電機を回していたのですね。自動車で、クランクを回してエンジンを掛ける方式の物があったのは記憶しているのですが、あれと同じ原理でしょうか。原始的なものほど緊急の場合に強い、不便で手間は掛かりますが合理的でまさかの時の頼りになる、そんな気がします。

※記事への言及有難うございました。
by アヨアン・イゴカー (2014-03-29 17:16) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
記事が記憶に残っており,糸電話を想像したついでに,昔話を思い出してしまいました。
もちろん当時は,手回し発電機を蓄電器に溜めているなんてことは全く知りませんから,回さないと通話出来ないのだと思っていました。しかしそれは半分正解で,半分間違いだったわけです。
手回し式電話は発電した電気エネルギーを蓄電器に溜めていたので,溜まった分ですぐに通話出来ますが,蓄電量が減って来ると通話に支障が出て来るので,その時はけっこう回すのだと思います。何分音の電力はたかが知れていますから,そう一生懸命回す必要は無かったのだと思います。子供の目には大人たちのテキトーなおまじないの様な行為に見えていました。
クランクを手で回す車ですが,エンジン機構のスタートを補助しつつ,電気着火ならばエンジンに連動した発電機も回していたことになります。オートバイのキック・スタートと同じだとして,かなり腕力と気合いが要ったと思います。
by Enrique (2014-03-30 08:09) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。