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フレッティングの考え方(7) [音律]

前回からフレッティングの具体例について図示しています。前回はピタゴラス音階でしたので,今回はミーントーンを見てみます。やはり開放弦長を1とした時の各音の弦長表を次に示します。以前示した音程比率の逆数です。分数乗の表記が多少異なるかも知れません。

ミーントーン Es型(C基準)の弦長表
音名
弦長比率
数値
C
= 1
= 1
C#
= (16/25)×51/4
= 0.957023219981581
D
= (2/5)×51/2
= 0.894427190999916
E♭
= 53/4/4
= 0.835925381220528
E
= 4/5
= 0.8
F
= 51/4/2
= 0.74767439061061
F#
= (8/25)×51/2
= 0.715541752799933
G
= 53/4/5
= 0.668740304976422
G#
= 16/25
= 0.64
A
= (2/5)×51/4
= 0.598139512488488
B♭
= 51/2/4
= 0.559016994374947
B
= (4/25)×53/4
= 0.534992243981138
c
= 1/2
= 0.5


ミーントーンの比率を正確に求めるには累乗根(四乗根,平行根)の計算が必要で前回のピタゴラスよりも手計算は面倒で間違いやすいので,前回通り実際には表計算ソフトを用いて算出しています。

通常のEs型と呼ばれるC基準のミーントーンのフレッティングを五度圏図と共に示します。やや"-Z/4"の表示がウルサイので,全てミーントーン五度(比率:5の四乗根)としてウルフ位置だけ示すのもスマートでしょうが,ここでは他の音律と表記を合わせます。
MeantoneEs(C).png
MeantoneEsC.png

次はDis型と呼ばれるG基準のミーントーンのフレッティングです。C基準のときと異なるフレットに注目です。C基準のときの5フレットにカポタストをしたのと同じパターンになっていることがわかります。
MeantoneDisG.png

以下順次,D基準,A基準,E基準,B基準のもののフレッティングを示します。
MeantoneD.png
MeantoneA.png
MeantoneE.png
MeantoneB.png
C基準からE基準まではフレットパターンが5フレットづつ移動しているだけですが,B基準ではパターンが変わることがわかります。

ミーントーンはその五度をシントニックコンマを1/4分割して狭くしたものが基本ですが,ウェルテンペラメント的に緩和したものがあります(1/4よりもさらに狭くしたものもありますが実用性ないでしょう)。代表格が1/6でしょうか。以下に弦長の厳密値を示しておきます(1/4よりさらにメンドウですが,表計算ソフトなら数値計算は楽です)。五度圏は上で示した−Z/4から−Z/6に,ウルフは7/4Z−Schから5/6Z−Schになります。

ミーントーン 1/6コンマ Es型(C基準)の弦長表
音名
弦長比率
数値
C
= 1
= 1
C#
= (524288×51/2/1366875)1/3
= 0.95011324662443
D
= (32/45)1/3
= 0.892577266776226
E♭
= 15×51/2/40
= 0.838525491562421
E
= (32/45)2/3
= 0.796694177165718
F
= (3×51/2/16)1/3
= 0.748448791380977
F#
= 32/45
= 0.711111111111111
G
= (2×51/2/15)1/3
= 0.668048376532802
G#
= (1048576/4100625)1/3
= 0.634721611929761
A
= 4×51/2/15
= 0.596284793999944
B♭
= (45/256)1/3
= 0.560175593319646
B
= (2048×51/2/30375)1/3
= 0.532230251648695
c
= 1/2
= 0.5


以下にC基準のもの,G基準のもの,およびA基準のフレッティングを示します。
Meantone1_6EsC.png
Meantone1_6DisG.png
Meantone1_6A.png

最後に1/8(C基準のもの)を示します(弦長表は省略します)。ウルフは3/8Z−Schに縮小します。ミーントーン系は1/11でほぼ平均律(ウルフが-Sch)になりますが,このフレットから見て1/8でも既に平均律と大差無いでしょう(つづく)。
Meantone1_8EsC.png
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koten

 面白いですねミーントーンの(各調の)フレット図。
特にミーントーンのフレット図についてはリュートを始めとした古楽の方も興味津々でしょうから、3弦半音下げチューニング(さらには下からGCFADGチューニング)についても記事にされると一層喜ばれるのではないでしょうかね。
 それと、B基準MTで3弦のフレットがことごとく他とずれてますが、これ、3弦「半音下げチューニング」にすると一直線になったりしないんですかね? もしも一直線になるのであれば、リュートなどの古楽器で実際に使われていた可能性が出てきますよね。19世紀ギターではロ調、つまり第5コースの2フレットが基音になる曲が少ないですが、第3コースが半音下げになるビウエラなどでは第5コースの2フレットが基音になる曲が結構あるんですよね。この辺も気になるところです。

>1/4よりもさらに狭くしたものもありますが実用性ない
・・・現在は確かに実用性無い感が強いですが、1/4MTが当たり前に使われる世界になれば変わりうるかなと。人間は常に「新たな刺激」を求めてますからね(笑)。

>1/8でも既に平均律と大差無い
・・・1/8くらいになるとフレットの「段差」が目立たなくなりますね。ただ、1/8でも各調の「調性感」は明確に残っているでしょうから、私としてはこれくらいで「手を打って」欲しかったところですね。そうすれば私がこんな活動を始めることも無かったのではないかとも思ってます。
 確かにフレッティングの「外観」面での美しさ(さらには「製作」の容易性)は12ETが「抜群」だと思いますが、和声や調性感などの「内容」面での美しさは全く別の問題なんですよね。
 「演奏の容易性」の点でも、初心者用には12ETフレットでもよいでしょうけど、和声や調性感などの点を充実させようとすると、逆に12ETフレットだと(常に「音程補正」を考慮しなければならず、しかも音程補正の程度が各音毎に異なるため、)演奏が極めて困難になり、結局、殆どの人が「それ」に気付かない(気付いてもそれに到達できない、結局ヴィブラートで誤魔化す程度)で終わってしまうのですから。

by koten (2011-12-18 14:38) 

Enrique

kotenさん,こちらもnice&コメントありがとうございます。
>特にミーントーンのフレット図についてはリュートを始めとした古楽の方も興味津々
そうですね。古楽の方は常識かと思っていたので,ついギターで。
それに移動フレットなら耳で聞いてテンペラメント出来ますし。いくつか代表的なものは示してみたいと思います。

確かに3弦を半音下げていわゆるリュートチューニングにすれば,B基準でフレットがピッタリ行きますね。ギターのチューニングは対称でないですから。リュートは対称ですね。

「1/8が平均律と大差無い」というのは,実際の演奏では耳チューニングも含めてこのくらいのイントネーションはやっているというつもりでした。6弦とも平均律チューニングは気持ちが悪いですから。もちろん楽器の方でやってくれれば楽なのは間違い有りません。鍵盤ならばかなり異なるでしょうね。例のLehmanとかJobinとか一連の”Bach音律”というのもこのくらいのイントネーションの差を議論しているように感じます。
by Enrique (2011-12-18 17:59) 

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