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フレッティングの考え方(6) [音律]

今回からフレッティングの具体例を上げて,図示してみます。

フレッティングのやり方は,音程を比率で求めてその逆数で弦長を求めるものでした。古い音律のデータにあるモノコードの弦長表と同じものです。しかし歴史的な色んなモノコードのデータでは弦の全長がいろいろと変わりますので,全て基準(開放弦)を1と考えるわけです。

まず,音律の基本,ピタゴラス音階を考えてみます。前々回ピタゴラスのC基準の音階比率の表を示しましたが,あれの逆数を取り,開放弦長を1とした時の各音の弦長表を示します。なお順番は音階順に並べなおしています。

ピタゴラス音階(C基準)の弦長表
音名
弦長比率
数値
C
= 1
= 1
C#
= 2048/2187
= 0.936442615454961
D
= 8/9
= 0.888888888888889
E♭
= 27/32
= 0.84375
E
= 64/81
= 0.790123456790123
F
= 3/4
= 0.75
F#
= 512/729
= 0.702331961591221
G
= 2/3
= 0.666666666666667
G#
= 4096/6561
= 0.624295076969974
A
= 16/27
= 0.592592592592593
B♭
= 9/16
= 0.5625
B
= 128/243
= 0.526748971193416
c
= 1/2
= 0.5

なお,ここでは分数比と計算値を示しました。手計算では面倒ですが,表計算ソフトなどを用いて,実際には音階表から規則的に計算させることが出来ます。以前示したものはその結果のみでした。

なお,ホームページ上でいくつかの音律でのフレット計算ができるサイト*もありますので,そちらで確認する事も出来ます。

いずれにしろ,この弦長の値だけを見ても,あまりピンと来ませんので,次にフレット図を示します。この表示,適当なグラフソフトでも出来ますが,単なる積み重ね棒グラフのようでギターの雰囲気が出ません。そこでExcelのワークシート上で出した計算値を自作のVBAプログラムで読ませて線画を描かせました。スクリプト言語とはいえ,ここ10年程プログラムらしきものを殆どやっていませんでしたので,少し時間がかかりました(解説本を買えば早いのでしょうが使用後ゴミになるだけですので)。ExcelにVBAのプログラムを付加しますといちいちマクロウィルスと警戒されるのも少し面倒です。

まずC基準のピタゴラス律によるフレッティングを五度圏図と共に示します。まったくのピタゴラスですが,結構使えそうなフレッティングです。
PythagoreanC.png
PythagoreanC.png

次はF♯基準のピタゴラス律によるフレッティングです。これは,-P(ピタゴラスコンマの逆比)をD-A間(忠実にやるとC##-A間)に持ってきたもので,キルンベルガーIとかなり近いものです。フレット各場所のD-A間が狭いことが分かりますでしょうか。全てのフレットに段差を生じていてこれは使い物にならなさそうです。
PythagoreanF#.png

次はE♭基準のピタゴラス律によるフレッティングです。これは,-PをB-F♯間に持ってきたもので,例の「A基準のキルンベルガーI」とかなり近いものです(つづく)。
PythagoreanEb.png

*当該ページでは,ナット部分からの寸法で出しています。本表はブリッジから寸法(文字通り弦長)を示します。
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REIKO

ギターの図、とても分かりやすいです!
(そうか、VBAと描画機能の合わせ技で、こんな事まで出来るんですね)
C基準とE♭基準は、フレットが3半音ズレてるだけですね。
どの音を基準にしても、グルグル回るだけだから・・・と思うのですが、F#基準は段々がすごくなってしまうんですね。
(どうして????)
やっぱりこれでは弾きにくいのでしょうね。
by REIKO (2011-12-16 07:29) 

Enrique

REIKOさん,ありがとうございます。
〉C基準とE♭基準は、フレットが3半音ズレてるだけ
その通りです。例えばEbベースのフレッティングの三フレットにカポタストをつければCベースのフレッティングと同パターンになります。

〉F#基準は段々がすごくなってしまうんですね。(どうして????)
ここがややトリッキーで分かりにくいところかも知れません!!!!
フレッティングが同パターンで移動するのは,フレットがまっすぐになる音の組み合わせの時のみです。
上の例を逆に見ればEbベースのパターンはCベースの九カポと一致しますが,F#ベースのパターンはCベースの六カポと一致するはず。しかし,六カポはフレットに段差が発生しており,基準弦長が異なります(3,4弦長が他弦より相対的に短くなっています)。これをF#ベースの(段差のない)開放弦に焼き直しますと,3,4弦のフレットが弦長を伸ばされたかのように左に移動し,真ん中にしつこく段差を生じるわけです。
余り良い説明ではないですが,OKでしょうか。

〉やっぱりこれでは弾きにくいのでしょうね。
もっとへんなのも出してみます(笑)。まあ,この位の段差弾けないこともないですが,「音律が合わない」&「弾きにくい」では割に合いません。やはり「音律ぴったり」&「弾きやすい」がよいのではと思います。
by Enrique (2011-12-16 18:45) 

koten

おぉ、これは分かりやすい! 良いですねフレッティングの図。いやぁ今まで難解モードだったので、これでようやくコメントできますわ(笑)。

>「A基準のキルンベルガーI」
・・・そうなんですよね、9フレットも段差が必要ですよね。先日650mmのギターでフレット実験していて気づきました。

>フレット計算ができるサイト
・・・これ良いですね(感心)。でもこのサイト、ヴェルクマイスター全種類(←!)や2/7ミーントーンまであるのに、キルンベルガー音律やJust_Intonationが無いのが残念ですね。リュートなどの古楽器用フレットを想定しているようなので、「キルンベルガー音律は未だ使われていなかった」、「Just_Intonationは単純な比率だから載せるまでもない」という趣旨なのでしょうかね・・。

 ともあれ、クラシックギターの黄金時代の頃、鍵盤楽器はキルンベルガー音律を始めとして色々な音律が使われていたのですから、ギターでもその響きを出せるように色々なフレッティングが出来るようになれば「楽しい」ですよね(笑)。 
by koten (2011-12-18 13:52) 

Enrique

kotenさんnice&コメントありがとうございます。
>難解モード
そうですね,基礎固めしてからで無いと先に進めない性格で(汗)。kotenさんの方も怒濤+難解モードでコメントご無沙汰しています(笑)。
やはり図示が重要ですね(もちろん本物がイチバンですが)。数値計算は直ぐ出来るのですが,この図を描くプログラムにちょっと掛かりました。
Hoffmannのページのフレット計算は規則的な計算のさせ易さだと思いますね。PC割の計算は簡単です。KirnbergerなどのSC割はスキスマ調整が少しメンドウ(でもミーントーンが一番メンドウだと思うのですがね)。移動ガットフレットを想定しているので,あとは弾いてみて微調整ということかもしれません。Justは音の拾い方が何通りかありますし,かえって規則的計算は難しいと思いますね。
本ログではKirnbergerやJustも出してみますのでご期待ください。
by Enrique (2011-12-18 17:08) 

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