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フレッティングの考え方(8) [音律]

前々回からフレッティングの具体例について図示しています。前回は音律がミーントーンでした。今回は(5)で眺めた,キルンベルガー音律(第一技法)をギターのフレッティングに適用した例を図示します。まず,ここでも開放弦長を1とした時の各音の弦長表を示します。やはり先に示した比率の逆数をとり並べ直したものです。ピタゴラス同様全て整数比で示されます。しかもスキスマ調整されることにより,ピタゴラスよりも純正度が高まっています。

キルンベルガーI(C基準)の弦長表
音名
弦長比率
数値
C
= 1
= 1
D
= 256/243
= 0.94921875
D
= 8/9
= 0.888888888888889
E
= 27/32
= 0.84375
E
= 4/5
= 0.8
F
= 3/4
= 0.75
F#
= 32/45
= 0.711111111111111
G
= 2/3
= 0.666666666666667
A
= 81/128
= 0.6328125
A
= 3/5
= 0.6
B♭
= 9/16
= 0.5625
B
= 8/15
= 0.533333333333333
c
= 1/2
= 0.5

この音律もピタゴラスと同様分数の計算だけなので手計算でもOKですが,これまでと同様に表計算ソフトを用いて算出しています。


先ず最初に,通常のC基準のキルンベルガーIのフレッティングを「イケメン五度圏図(笑)」と共に示します。
Microsoft Word - Colored五度圏・KBI.png
KirnbergerIC.png
これはピタゴラスのF#基準とほぼ同じものです。フレットはわずかに変化しています(スキスマの分だけですので,最大で0.7mmほどです)。この音律についてはすべてのウルフ位置でフレットを計算してみました。以下にGからFまでのものを順に示します。
KirnbergerIG.png
KirnbergerID.png
KirnbergerIA.png
KirnbergerIE.png
KirnbergerIB.png
KirnbergerIF#.png
KirnbergerIDb.png
KirnbergerIAb.png
KirnbergerIEb.png
KirnbergerIBb.png
KirnbergerIF.png
以上眺めてみますと,キルンベルガーIは五度圏上でピタゴラスを丁度半回転回してスキスマ調整したものですが,ギターのフレッティングとの相性はC基準の近辺が最も悪く,A基準から俄然フレットの「あばれ」が収まって相性が良くなる事がわかります。F, C, G, D基準は,フレットの段差のみならず開放弦間でウルフを発生するので,これらの基準でのフレッティングの使用は実際上はキビシイでしょう(つづく)。
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koten

いやぁ面白い&分かりやすい! こういう記事ならこちらも速攻コメントできて嬉しいですね(笑)。いや本当、画期的ですよ上の図は(感心)。

 B基準のフレッティングにつき、3フレットまでは(ほぼ?)一直線で実現できるというのは驚きですね。
 一方で、段差(暴れ)の激しいものについては、いっそ、その暴れている弦の「中心位置(つまり12フレットの位置)」をシフトさせてしまえば整ってきますよね。例えば、C基準のものについては、4弦と3弦のフレットが「暴れて」いるので、ナット(ヘッド側部材)の4弦3弦の部分をフレット側に突出させる形状として(或いはスペーサーを入れる)、反対側のブリッジ部材はその分だけ後退するような形状にすれば良いのではないかと(D型は2弦につきこれと逆のことをやればよい)。結果としてナット、ブリッジ、12フレットに大きな段差ができますが、(今や「超うねフレット」も当たり前の世界になりつつある)エレキやアコギなどではさほど抵抗(←ユーザの拒絶反応等)なくやれるような気がします・・・まぁ(「超ウルトラ」保守主義の)クラシックギターの世界ではユーザ(特に「上の人」)の反発が凄いだろうことが大いに予想されますが(笑)

開放弦間のウルフの件ですが、現在、DAにウルフのある純正律フレットで実験してますが、ギターの場合このDAは5度ではなく「4度」音程なので、「たいしたことはない」というのが実感ですね。この演奏音源upを自ブログでしたいところなのですが、流石に年末モードでは厳しいですわ(泣)。
by koten (2011-12-21 22:55) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。

「百聞は一見に~」,やっぱり図は大事ですね。
計算は楽でも,この図に示すところが面倒でした。プログラム作ったので,あとは手間だけの問題ですので,もう少し変なやつも見てみたいと思います。

フレットあばれ補正の件ですが,ナットやブリッジ側で補正するのは,私は「禁じ手」だと思っていますね。五度三度以前にやはりオクターブを尊重すべきだと思います。フレットがあばれているのは,やはりギターのチューニング上ムリがある音律(基準)であり,あえて無理に使う必要は無いと思います。「どうしてもこいつがいい!」となったら,最後の手段としてやるのはいいですが,安易にやると訳わからんようになりますね。

開放弦間ウルフは四度使用とは言え,純正系の最大のネックですね。
by Enrique (2011-12-22 12:43) 

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