特殊奏法について [演奏技術]
特殊(変則)調弦について書きました。特殊奏法にも触れたくなりました。
ボトルネックやタッピングなど,エレキギターの奏法も現代曲では使われそうですが,ここでは主にクラシックギターで用いられるものだけに限定します。
かなり変わったものもあります。殆ど使ったことの無いものもあります。
トランペットとかファゴットとか言われるものは,私は使ったこともなければ,使われる曲も知りません。
後者はイエペスが得意としていたらしく,録音もあるはずです。フレットの直上を押えて音を少しつまらせるようです。
前者は知りません。
音をつまらせるという意味では,ピッチカートは頻繁に使われる特殊奏法でしょう。
ブリッジあたりに右手の小指側をかぶせて,音が伸びないようにつまらせます。弓で弾く弦楽器のピッチカートのような音がします。アコギなどでもミュート奏法というのでしょう。指示はpizz.で,解除はarcoですが,これは弓の意味なので,ギターではあまりそぐいません。
ピッチカートを弾いた後に普通に弾くと,ギターは結構音が延びているのだということがわかります。トーレス以降のモダンギターでは極力音を延ばすように改良されてきたのでしょう。
ピッチカートを使った曲はすぐに何曲か思い浮かびます。今やっている,C=テデスコのソナタ第IV楽章では中間部盛んに使います。ポンセの「南のソナチネ」第一楽章でも,主題を締めくくる?のに登場しました。
詰まったピッチカートの音と,澄んだハーモニックス音を併用すると夢のような効果があります。一時期流行った「タンゴアンスカイ」の中間部などが思い出されます。そうそう,ハーモニックスも特殊奏法なのですね。
阿部保夫編「カルカッシ・ギター教則本」によれば,特殊奏法としては,
・アルモニコス(ハーモニックス)
自然的アルモニコス
アルモニコス オクターバドス(これは人工的ハーモニックスの事ですね)
・カンパネラ
・ピチカート
・タンボーラ
・アパガードス(これは消音のことですね)
・ラスゲァード
・プルガール
・インディセ
・アルペジオ風な和音奏法
が取り上げられています。
これらの中には,普通に曲の中に取り入れられているものも多いです。カンパネラやアパガードスがそうでしょう。プルガールは親指で流す和音ですし,バラしたアルペジオ風な和音は指定が無くても自主的?にやることも多いものです。インディセは上からの下降アルペッジオで案外これは少ないかもしれません。アランフェスの2楽章,3楽章の盛りあがり箇所で使われます。ラスゲァードは,特にフラメンコギターでは典型的弾き方のようなものですが,クラシックギターでは特殊奏法になるのですね。低音を消音しながらかき鳴らす,いわゆるセコはクラシックでは余り使われないようですが,アランフェスの2楽章終盤,カデンツァからオケにわたす,かき鳴らしの部分,楽譜どおりに弾くためにはこれを使わないといけませんが,使っている(いた)人はそう多くないですね。最もよく使われるのはハーモニックスで,次あたりがピッチカートでしょうか。
打楽器的な奏法は印象的です。
ここにあがっているものでは,タンボーラがあります。これは,左手で和音を押えてブリッジ周辺を鋭くたたきます。いわゆる大太鼓ですが,ギターの場合は和音の響きを持った大太鼓。なかなかおしゃれです。これを最初に経験したのはタルレガのタンゴでした。この曲は特殊調弦に加え,タンボーラやラスゲアード,ハーモニックスなどを使っていましたね。いきなりタンボーラで始まる印象的な曲にトゥリーナのファンダンギーリョがありますね。
あと,トリッキーで人気の高い奏法に,タバレットがあります。これは小太鼓ですね。これは7F付近で5,6弦を交差させて押さえて弾くもので,小太鼓のスネアの音がします。大太鼓と違い,これを鳴らしながら,メロディを弾くもので,これを使う有名な曲としてはタルレガのグランホタがあります。村治佳織さんの新作CDでもこれを使った曲(佐藤弘和編・カルメン組曲の冒頭)がありましたね。
あと,やはりフラメンコからの影響でしょうが,ギターのボディを叩く,ゴルペというものがありますね。
最近はポピュラーからの影響と思われる特殊奏法が多いですね。
それと打楽器的な奏法もたくさんありますね。
いろいろなところを指の腹だけでなく、爪で叩いたりもしますね。
バルトーク・ピツィカートもありましたね。
by nyankome (2010-11-07 13:19)
nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
打楽器的な奏法は,ネーミングがよく分らないものもありますね。
バルトーク・ピチカートは元は擦弦楽器の奏法ですね。もちろんギターでも使え特殊効果として迫力満点ですが,使う曲をよく知りません。勝手にやったことはありますが。
by Enrique (2010-11-07 19:57)
バルトークピチカートは、ディアンスがよく指示していますね。
一番有名なのは、Enriqueさんも言及しておられる村治さんの新作にも収録されている、「フォーコ」かと思います(なぜいまさら?とは思いました。どうせなら「リブラソナチネ」を全部入れてほしかったです)。
村治さんはこの難曲をいともさらりと弾いておられ、全然難曲に聞こえません。
特にファンではありませんが(と言いつつ、ベスト版以外はすべて持っていますけど)、やはりすごい人だと改めて思いました。
by あきら (2010-11-08 05:15)
あきらさん,コメントありがとうございます。お久しぶりです。
ディアンスが使っていましたか。ディアンスの曲は特殊奏法のオンパレードみたいで,気がついていませんでした。自分で取り組んでみないとなかなか気がつきません。自分で弾いたのはタンゴ・アンスカイくらいでしたので。
村治佳織さん普通の奏法だけでなく,超特殊奏法も自然にこなされますよね。
by Enrique (2010-11-08 08:15)
タバレット奏法を初めて知ったときは「こんな奏法があったのか!?」と驚愕しました。これは正に「カルチャーショック!」でした。 確かサークルの先輩の家でタレガのグランホタ生演奏を間近で聴かせてもらったのが最初だったと記憶してます。
それと、N.コシュキンの「アッシャーワルツ」で出てくる、(弦を引っ張って指板にたたきつけて、)ムチでバチンとひっぱたくような音の出る奏法も、上記先輩の演奏で初めて知ったのですが、あれも初めて聞いた時は強烈に印象に残りました。あの奏法の名前ご存じですか?
by koten (2010-11-08 21:34)
kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
ギターはいろいろ面白いことが出来ると言うデモに最適ですね。キワモノとギリギリの線ですが,そこはタルレガ,昇華(消化)しています。
アッシャー・ワルツの「バチン!」が,「バルトーク・ピチカート」ですね。有名どころ忘れていました。それと激しいチョーキングビブラートを併用して不気味な雰囲気を演出しています。ひょっとしたらその曲が初出でしょうか?
by Enrique (2010-11-09 07:56)