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フレッティングとハーモニクスとの関係 [楽器音響]

kotenさんが,ミーントーンなどの古典音律を用いた際のハーモニクス位置について,論考されておられるようだが,コメントととすると,数字などが表示しにくいので,こちらに記事とすることにした。 フレッティングに関しては,以前示したものを使い,一本の弦に関してのみの刻みである。すなわち,開放弦を主音とする音階と考える。なお,純正律はシャープだけを考慮している。なお,数字は弦長を1として,各フレットを押さえた際の弦の長さで表している。押さえることによって上がる分の補正は加えていない。

フレット位置とハーモニクスとの関係
フレット ピタゴラス 純正律 ミーントーン 12平均律
1 1 1 1
1 0.936443 0.9375 0.957023 0.943874
2 0.888889 0.888889 0.894427 0.890899
3 0.84375 0.846154 0.835925 0.840896
4 0.790123 0.8 0.8 0.793701
5 0.75 0.75 0.747674 0.749154
6 0.702332 0.714286 0.715542 0.707107
7 0.666667 0.666667 0.66874 0.66742
8 0.624295 0.625 0.64 0.629961
9 0.592593 0.6 0.59814 0.594604
10 0.5625 0.5625 0.559017 0.561231
11 0.526749 0.533333 0.534992 0.529732
12 0.5 0.5 0.5 0.5
                           
弦長(節)と倍音との関係
0.9520倍音
0.94444418倍音
0.937516倍音
0.933333 15倍音
0.916667 12倍音
0.909091 11倍音
0.9 10倍音
0.888889 9倍音
0.875 8倍音
0.833333 6倍音
0.8 5倍音
0.75 4倍音
0.666667 3倍音
0.6 5倍音
0.5 2倍音
(n倍音はn-1箇所で出るが適宜省略)

例えば,12平均律のフレッティングでは,4フレットハーモニクス(5倍音)が3フレット側にずれるが,純正律およびミーントーンフレッティングではぴったり合うことがわかる。6倍音,8倍音は3フレットと2フレットの間にあることがわかる。9倍音はピタゴラスと純正律で2フレットにぴったり合うことがわかる。
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koten

 詳細コメント感謝です!
 ピタゴラスとミーントーンとで第2フレット(即ち全音)の位置が一致しているようですが、ピタゴラスは「大」全音で、ミーントーンは「中」全音になるので、ミーントーンの方がフレット位置がヘッド(端側)よりになるのでは、と思いました。
 クレーン(CRANE)の鶴田さんにもメールで質問してみたのですが、あの時代のギターのフレッティングには色々なものがあり、フレッチングを故意に不連続にしたものも確かにあったとのことです。
 どうもソルのギターの(④弦の)フレッティングは、偶数フレット(2及び4F)は純正律を意識していて、3フレットは平均律的な感じなんですよね・・でもこれでは長3度が綺麗な和音になりませんよね?・・もぅ、訳分からんですね(汗)
by koten (2010-06-27 18:51) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
ご指摘の通りです。純正律とミーントーンの表示が逆でした。訂正しました。最もハーモニクスの位置が合うのが純正律フレッティングですね。
しかし,ご承知の通り,純正律の欠点は,転調が不可能なことです。それから,でこぼこのフレットになってしまいます。しかし,例えばハ長調に合わせれば,ハ長調近辺の和音が極めて美しくなる効果はあるわけですね。
12平均律は,全ての調の誤差を均等に分散したものなので,これを忠実に使うとギターの場合,殆ど使わない調の分まで平均して和音を汚くしているわけなので,フレッティングの工夫は当然考えられましょうね。しかし
ギターの和音は押さえかたによってバリエーションがありますので,それらを全て考慮したよりよいフレッティングとなると結構むずかしい。えーいメンドウだ,と12平均律を使っている現状でしょう。
フレッティングの世界では平均律でさえ,12乗根で出さずに,弦長を1/18づつに区切っていくという近似的方法をとるらしいですね。かえってメンドウな気がするのですが。。。まして平均律以外のフレッティング,中々手をつけられないのでしょうね。
by Enrique (2010-06-27 22:41) 

nyankome

色分けして頂いて分かりやすいです。
>一本の弦に関してのみの刻み
ここがポイントですね。
実際には6本弦があって、それぞれの開放弦を主音とするわけではないので複雑になりますね。
by nyankome (2010-06-28 00:23) 

Cecilia

ヴァイオリンのハーモニクス(フラジオレット)、適当にやっていました。(苦笑)
もちろんオケをやっていたときは先生が教えてくださったのですが。

800niceを踏ませていただきました♪
by Cecilia (2010-06-28 08:31) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
何故か文字位置がずれてしまいます。表示環境によっても異なるようです。
今回はハーモニクス位置を示すため,1本の弦で示しています。開放弦が主音でないと,不等分律ではハーモニクスはこのフレット位置になりません。他の弦でフレット間隔が異なるのは音律の話では重要ですが,今回の記事のポイントではありません。
6本の弦のフレッティングの例は以前示しました。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2009-08-21-1
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2009-08-28
各音律に基づく1本のフレット割をもとに各弦で並べ替えます。そうするとフレットが凸凹になり,その凸凹が各調で異なってくるわけですね。音律もこの4種類なら割合分かりやすいのですが,いずれ一長一短があり,無数の折衷案が存在するので複雑に感じます。ほぼ不等分音律×調の数だけフレッティングは存在するはずですので,可動フレットの方がある意味合理的でしょう。
by Enrique (2010-06-28 17:55) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
800niceでしたか。いつのまにか記事数を上回っていました(それが普通なんでしょうが。。。)
そうですね,ヴァイオリンのフラジオレットと同じことですね。これは弦長の整数分の1(の何倍か)の場所で出るわけですが,自然現象ですね。ヴァイオリンでも特殊奏法だと思いますが,ギターではタイミングよく左手を離さないといけないので,やはりむずかしい奏法ですね。解放弦(自然ハーモニクス)では5倍音以上は出にくいので,左を押えて2倍音を出します(人工ハーモニクス)。ヴァイオリンの人工フラジオレットでは1/2の場所に指が届かないので4倍音を出すようですが,神業的ですね。
by Enrique (2010-06-28 17:58) 

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