SSブログ

楽器の値段 [楽器音響]

Antonio de Torresを紹介したが,お問い合わせの返事を放っておいたら,早速「どうするんだ?」とメールが来た。レプリカをおまけでつけるぞ,と来たが,予想金額の倍以上で残念だと返事した。むろん仮に半分でもその気(財力)はないのだが。すぐに返事が来て,何でも以前の日本のカスタマーはもっと高額のトーレスを購入したらしい。今回のお値段はずいぶんお安いチャレンジ価格なのだという。今回やり過ごしても,次回からブーシェやハウザーI世のご案内が来ることだろう。

楽器の値段ほどわかりにくいものは無い。値段が2倍だから音も2倍良いなんて事は絶対にない。「音の良さ」なんていう指標がないから,値のつけようがない。大体以下のようなものではないかと想像する。

A: 製作家の知名度(単位:円)
B: 使っている素材の良さ(単位:円)
C: 骨董的価値(単位:円)
D: 楽器の状態で0~1の間。例えば,可:0.6 良:0.8 新品同様:0.9 新品:1.0

この4つの項目で次のような公式を考える。
Price = (A + B + C ) × D

業界で統一されたものがあるのかどうか知らないが,不動産価格なども似たような計算なので,当たらずとも遠からずだろう。
この計算式を,くだんのTorresに当てはめてみよう。極端な値段の場合当てはまらない可能性はあるが。

A=1200万
B=30万
C=1300万
D=0.8

位ではないだろうか?

そもそも,AとCの数字の根拠があいまいだが,私の独断で以下のようなものでどうだろうか。
Aの具体例:
Torres:1000万以上
某有名楽器:400万
国産楽器:0~50万?
量産楽器:0

Bの具体例:
トップが超高級スプルース(シダー)でサイド・バックが柾目ハカランダ:80万
トップが高級スプルース(シダー)でサイド・バックが板目ハカランダ:50万
トップが並のスプルース(シダー)でサイド・バックがローズ:30万
注: トップがダブル・トップやラティス・ブレーシングだとこの値が跳ね上がるだろう。バックは今回のトーレスはシープレス材だが,まあこれは誤差範囲だろう。

Cの具体例:
多分これは,有名製作家が物故すると跳ね上がるだろう。だから存命中はそれほどないと思う。それと,有名奏者が使っているとかでも,この値が跳ね上がるだろう。
Torres:1000万以上
某有名楽器:500万
国産楽器:0~50万?
量産楽器:0

想像を書いたが,2倍くらいのばらつきは当然あるだろう。年代等々,同一メーカでもバリエーションはかなりあるだろう。
低額なものは殆ど素材代,高額なものは殆どネームヴァリューというのは間違いないだろう。

工業製品→手工品→芸術品(骨董品)

と変わる,面白いものだ。

nice!(8)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 8

コメント 8

nyankome

楽器の音の差なんて感覚的なものでかつ微々たるものだと思います。
でもその差が大きいのですよね。
トーレスはヴァイオリンで言うところのストラディヴァリのようなものですね。
現存するトーレスの楽器のリストはロマニリョスが作っていたと思います。
by nyankome (2010-06-25 01:26) 

koten

そう言えばハカランダって伐採禁止になったんですよね。楽器製作業界ではまだまだ将来分のストックってあるのでしょうかね・・・一説によれば、現地の人は今でもハカランダを燃料材として「燃やして」使っているという噂も聞いたことありますが(汗)
by koten (2010-06-25 06:07) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
この辺は投資対象ですね。トーレスはモダンギターの租で,広い意味でその後の楽器のほどんどがこれのコピーですね。この楽器がロマニリョスのリストに載っているかどうか調べてみないと(買う気はないですが)いけませんね。結構楽器の当たりはずれもあるようです。
by Enrique (2010-06-25 10:57) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
ハカランダの価値も良く言われることですが,無い無いといっていくらでも出てくるのは不思議です。多分楽器に使うような大径木は貴重です。普通の木はなんぼでもありそうです。ヴェラスケスが述懐していましたが,つい35年ほど前まで分厚いハカランダで食堂のテーブルを作っていたと。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2009-05-22-5
木は日本の桜並木のように植えられています。薄い板一枚(2枚剥ぎですが)で何十万というのも異常ですね。
by Enrique (2010-06-25 11:12) 

Cecilia

やはり商売なのでやんわりとお断りしても次のメールが来るのでしょうか。
そのようなやり取りをしたことがないので興味深く拝見させていただきました。
楽器にお金をかけてみたいですが・・・。
by Cecilia (2010-06-26 05:56) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
お値段が一桁下の楽器の場合は,お試しで気楽に送ってくれます。家の建つようなお値段の場合は,保険代もかさむかもしれません。前回Torresを買った日本人のお客さん,演奏家ではなく,投資家もしくはコレクターではないでしょうか。
プロが弾けばお安い楽器でもそれなりに鳴ります。バカ高い楽器の保有は完全に道楽の範疇ですね。
by Enrique (2010-06-26 19:19) 

Poran

先日、白樺湖近くのペンションでの福田進一リサイタルを泊まり込みで聴きに行った時にお会いした、某クラシックギター取扱商社の社長さんが話していましたが、「アンドレス・セゴビアがヘルマン・ハウザーのギターを使ったために、ヘルマン・ハウザーのギターの値段は急激に上がった。デイヴィッド・ラッセルがあるギターを使ったらそのギターの値段は大きく値上がりしたが、ラッセルがそのギターを使わなくなったら、また大きく値下がりした。」と言っていました。有名製作家のギターというのは人気商品のようですね。純粋に楽器としての価値と人気ギターの値段とは正比例しないことは間違いないようですね。
by Poran (2010-06-29 11:22) 

Enrique

Poranさんコメントありがとうございます。
そうですね,ビッグネームが使うといっぺんに値が上がりますね。ざっと半分はネームヴァリューでしょうか。楽器の値段も対数目盛にしておかないといけません。トーレスは素晴らしい楽器なんでしょうが,ギターのストラディヴァリウスの名が先行しています。ヴァイオリンよりは安いですが。
ジョンの使用ギターも人気ですね。何分絶対的な価値基準がない以上,人気商品ですね。
by Enrique (2010-06-29 19:58) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。