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弦の話ふたたび(5) [楽器音響]

ここでは,さまざまにある弦選択の参考になるかどうかだが,弦と楽器との相性について書き,このシリーズ最終回としたい。

5 弦と楽器の相性問題
楽器と弦との相性はよく言われるが,データ的なものは何も無いので,ここも全く定性的もしくは感覚的な話になる。

弦の話ふたたび(3)でも書いたが,楽器の最も簡単なモデルは弦を入力信号として,楽器の胴をフィルター付増幅器と考える。心地よいと感じる音響スペクトラムがあるとすると,そのような音響スペクトラムからはずれた個性的な発音特性を持った弦は楽器を選び,個性的なフィルター特性を持った楽器は弦を選ぶと言うことだろう。
DSC00966.JPG
手元にあった弦の袋。本人の弦の消費量が減っている(練習量と基礎代謝の低下)ので,撮影にも事欠く。
左からハナバッハ・スーパーロー,同・チタニール,定番オーガスチン・赤。全てナイロン弦。

よく言われ,自分自身も経験している事象として,響きの鋭い楽器にPVdF弦は全く合わないというのがある。私のベラスケスにはサヴァレスのアリアンスは全く合わない(ハナバッハの「カーボン」弦も一緒だろう)。これらPVdF弦は減衰率が低いわけではないが,その音色の特徴は線密度が大きいことで細くできることが最大の要因で,これにより,やはりこのシリーズでも述べてきた弦の曲げ剛性が低いことによるハーモニクスの多さだ。私も国産楽器には一時期愛用していた。ただ,音色は魅力なのだが,かたくてかさかさして,少し余分な力が入る気がしたので,ナイロンに戻しているが,音色を求めた場合にはまた戻すかも知れない。逆の例はナイロンのアクーラ弦。柔らかくてスラーがしやすく,ヴィブラートがよくかかる。ナイロン素材の使い方として正解と思うが,値段も良い。

サヴァレスは新しい弦の開発に熱心な会社。新タイプを発売するそうだ。新素材系なのかはたまたナイロンの製造条件変更系(太字は勝手な命名)なのか確認出来ていないが,福田進一さんが録音に使用されたと氏のブログにあった。

(おわり)

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nyankome

私のJacobsonにはいろいろ試しましたが、最終的にはAquilaのPerlaに落ち着きました。(巻き弦は不良弦が多いように思いますが。)
一時、独特の音に惹かれてHANNABACHのGoldinを張っていたときもありました。
この頃はさっぱり弾いていません。(^_^;)
by nyankome (2010-02-01 21:02) 

Enrique

nyankomeさん,コメント&niceありがとうございます。
弦もビールの銘柄のように色々出てきて,色々試したくなりますが,結局は定番に落ちついたりします。ナイロンではそう大差がないでしょうが,中ではアクイーラのPerlaはクリアで柔らかく良い弦ですね。私は今はハナバッハ黄か,オーガスチン赤に落ち着いています。よく弾いた学生時代は数日で替えていたものですが,今はものすごく持ちが良くなったので,半年も変えません。
by Enrique (2010-02-01 21:47) 

やーさん

ギターと弦の相性という話題からはずれてしまいますが、私はダダリオのプロアルテを使っています。好きなジョン・ウィリアムスやデイビッド・ラッセルがプロアルテなので、どうせ弦のことは自分にはわからないのだから、彼らと同じにしょうという動機です。

ところで、私はiで1弦を良いトーンで弾くことが苦手です。これは、人差し指の先端は中指等と比べて平坦なために、弦に爪と皮膚が同時にコンタクトする裕度が小さいからではないかと思います。1弦は細いためその裕度がより狭くなるように思います。2弦ではあまり問題ありません。

カーボン弦は、ナイロン弦より細いそうですので、その意味でも、現在の私の技術では使いたくありません。太い1弦はないものでしょうか。ゾーラン・ドキッチは、どのような根拠からはわかりませんが、カーボン弦を嫌っていました。
by やーさん (2010-02-03 09:30) 

Enrique

やーさん,コメントありがとうございます。
やーさんの視点には,いつもドキッとさせられるところがあります。

太い1弦はナイロン素材を使う限り,中空にするなどの方法が考えられます。ナイロンよりも軽い(密度の低い)素材があればよい(ポリエチレンやポリプロピレンは1,2割軽い)のですが,5~10%程度太るだけで多分繊維の性能としてはかなり落ちるのではないでしょうか(繊維の専門家に聞いてみないとはっきりしませんが)。弦の音響性能としては細いほうが良いので,メーカーがつくるかどうか。。。ですね。

ただタッチの問題はありますので,やーさんオリジナルの弦を開発してもらいましょうか?

天然ガットに近づけるために重い素材を探すことになりますが,その一つがフロロカーボン(PVDF)です。ナイロンよりも6割方比重が重いので,2割方直径が痩せます。響きの鈍い楽器に張ると,目覚しい効果がある反面,音質的に使い物にならない楽器もあります。あと,プレイヤビリティもあまりよろしくないです。ナイロンは弾きやすいですね。

ナイロンのプレイヤビリティで,ガットの音質を求めたのがナイルガットでしょうか?

ダダリオはどんな楽器にも合う,オールマイティ弦と言われます。
by Enrique (2010-02-03 19:56) 

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