バルエコと武満 [曲目]
バルエコの個人的衝撃を取り上げたが,やはりその十数年前の「芸術劇場」のとき,アルベニス,バッハとともに武満を取り上げた。その時は,「すべては薄明の中で」をプログラムに取り上げ,氏の賞賛と共に,すしが好きとか,日本通のところを見せていた。
武満に「限られたレパートリーを如何にきれいに弾くかということに止まるのでなく,ギタリストに自由な精神を持ってもらいたい」と言わせ,「12の歌」のアレンジ集を残させたのは荘村清志さんの実績だ。もちろん,「すべては~」や「森の中で」などの本格的なギター作品も氏の存在なくしてはありえなかったものだ。
独自の境地を切り開いた作曲家が,物まね演奏でない自由な活動精神をギタリストに薦めたわけだ。しかし,自由な精神を得るには高い技術が要る。バルエコはその高い技術で,従来のギターの不自由さを軽々と乗り越えたように見えた。しかし,技術のある人には自由の獲得だが,そうでない人には不自由の獲得だ。「12の歌」は大昔,全音からバラでピースが出ていたが,すぐに手に入らなくなり,再開後の近年,日本ショットから出ているものを入手した。
楽譜は獲得したが,技術を獲得していないので,自由を獲得できない。曲がポピュラーなので,とっつきやすい面はあるが,これを通しで弾こうなどという気にはぜんぜんなれないのだ。よほどの技術がないと,「やさしい曲を一生懸命ヘタクソに弾いている」風にしか聞こえないキビシイ曲集だ。
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