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作風の変化 [曲目]

ピカソの作風が青の時代,ばら色の時代,そして幾多のキュービズムの時代と,変遷を重ねたように,作曲家も作風が変わる。ベートーベンのピアノソナタなどにもその変遷がはっきりと現れている。では,ギター関係ではどうか?バッハはギターで弾く曲が限られるし,対象としてあまりに巨大すぎる。古典派代表のソルは曲数には事欠かないが,作曲年代がイマイチはっきりしない点がある。ここは近現代のヴィラ=ロボス(1887-1959)に登場してもらおう。膨大な作品群のなかで,ギター曲はささやかなものだ。しかし,名曲ぞろいで,ギター曲として最も効果的なものだとよく言われる。彼の作品を年代順に並べてみる。

1.ブラジル民謡組曲(1908-12) ブラジル民謡などの収集,リオの音楽院で学ぶ(第1期)
2.ショーロス第1番(1920) ひきつづき民族的モダニズム模索の時代(第1期)
3.12の練習曲(1928) パリ留学中(第2期)
4.5つの前奏曲(1940) 留学から戻り音楽教師の時代(第2期)
【5.ギター協奏曲(1951)】 名声を確立・依頼に応じて作曲(第3期)

大体10年ごとにギター曲を書いていることが分かる。むしろ,ちょうど良いサンプリングでその間の作風の変化も分かるはずだ。最後のギター協奏曲を除けば,どうだろうか?段々やさしく,ギターで弾きやすいように変化していないだろうか。

ブラジル民謡組曲は20歳そこそこの曲。もちろん名曲だ。しかし,極端に難しくはないものの,ギターでやや弾きにくいところや,完全に確信を持っていないような感じの箇所も多い。もちろん他のギターを弾かない作曲家の曲とは違うが,ギターの書法を完全には確立していない感じがする。
ショーロス第1番は,ギター曲の名作だ。第2番以降は各種の楽器の曲が続き,第12番はオーケストラ作品(13,14番は楽譜紛失)だ。最初をギター独奏曲で始めたところに彼のギターという楽器とその音楽への意気込みを感じる。ブラジル独特のショーロという形式を,全くギターに最適な技術と音楽的内容に昇華した典型的なギター曲。弾きやすくかつ演奏効果があがる彼の作風をほぼ確立したように見える。

12の練習曲は上級の練習曲で,ショパンの練習曲を意識したのではないかと思われる。そもそも,上級の練習曲というのは,相当楽器に熟達していないと書けないはず。40前後の練達の作品だ。弾きやすくは作られているものの,技術の向上を目指しており当然難しい。

5つの前奏曲は50代の作品で,最もやさしい。まさに,手が行ったところに音があるという作品群で,ギターを知らない人が聞くととても難しそうに感じられるのだが,実は弾きやすいという,非常にお得な作品だ。ギターのコード的押さえを利用して遊んだような作品(練習曲の一部もそう)だが,何もこれはギターに限った話ではなく,暮れに遊んだピアノ小品についても感じた。むしろ,たまにあるフェイントに要注意なくらいのものだ。技巧はやさしくても,表現できる作曲技術を身につけていくということだろうか。

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