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ギターのためのフーガ [曲目]

フーガ技法に関して解説したが,そこで説明に使用されていたもの殆どは鍵盤用だった。
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Madera de músico by Jorge Franganillo with CC-License Attribution

ギターでよく弾かれるものに,BWV1000のフーガがある。もともと無伴奏バイオリンソナタ1番ト短調BWV1001の第2楽章のフーガをバッハ自身がリュート用に編曲したものとされている(これには多々異論あるようだ)。また,これにはオルガン用もあるようだ。他にはやはりバッハで,BWV998の2楽章(2曲目)のフーガ,それから,リュート組曲第2番BWV997のフーガがある。特に最後のものは2重フーガとなっており,やや複雑である。

リュートやバロックギターには,簡単な対位法的楽曲は多く見られるが,フーガと名前のつくものは,やはりバッハだろう。もちろんギターで弾くには大変苦しい。しかし,もっと多声に厳しいバイオリンやチェロ用に作曲された,不朽の名作「無伴奏」がある。無伴奏ヴァイオリンなど多声が十分でない楽器用の曲を,擬似ポリフォニーという。チェンバロやオルガン用の真正なポリフォニーに対して,何か,まがい物のような言い方をするのだが,ポリフォニー何しきのものぞ?と無謀にも思う。対位法をよく学習してから言わないとあまり説得力は無いのだが,重要でないものは削ぎ落としたほうが豊かな場合もあるのだ。対位法の大家であるバッハ作品の一つの頂点を形成するシャコンヌを,まさか,まがいもののポリフォニー,ポリフォニー・アン・スカイなどとは呼ぶまい。「ブラームス編曲シャコンヌ」でも書いた。音の数ではない。石桁真礼生氏が「楽式論」の中で述べていたように,人間の耳がはっきりといっぺんに聞き分けられる音は2声であり,これが基本であると。また,フーガ技法はストレッタにより対位法が複雑になりすぎて廃れてしまった。これらの言葉を,かみしめる必要がある。

かつての現代ギター誌では,二橋潤一氏が毎月有名作曲家の書法を,実際にギター曲に書き下ろしながら解説するという画期的な記事があった。記憶が正しければ,その初回でバッハのフーガ技法が,それを模した書き下ろし作品と共に解説されたはずだ。バッハのそれを模して作られたさらに大規模な作品に,テデスコの平均律ギター曲集があるが,あまり知らない。2重奏のため,あまり気楽に弾いてみることもできない。しかし,このような試みが,歴史に確実な足跡を残していくことは確かだろう。ポンセの「スペインのフォリアによる変奏曲とフーガ」も忘れられない。

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Enrique

shinさん,niceありがとうございます。
by Enrique (2009-12-13 17:46) 

koten

ポンセの遺作である「カベソンの主題による変奏曲とフーガ(←フゲッタ?)」も名曲だと思います。ギターのフーガ、探せば他にも結構ありそうですよね(現代でもクレンジャンスとかブローウェルとか色々と・・)。
by koten (2010-11-30 13:19) 

Enrique

kotenさん,過去の記事nice&コメントありがとうございます。
その「カベソンの主題」は聞いたことないですが,フーガはある程度作曲技術のある人ならば書けるのでしょうね。やはりギターの場合実質的に演奏できるかどうかが,ネックになります。
春の坂本龍一のTV番組では,楽式としてのフーガは,複雑化しすぎて廃れたわけではなくて,モーツァルトもベートーベンもいい歳になるまで,フーガ技法を知らなかっただけとの話もありました。

by Enrique (2010-11-30 19:52) 

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