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フーガ形式(7) [音楽理論]

石桁真礼生「楽式論」のフーガ形式本文を用いてフーガ形式を概観している。今回はその7回目。

フーガ形式に関する補足事項のつづき。

・オルゲルプンクト(ペダル)について
保持音ともいわれ,一つの音を長く保持しつつ(多くは低声部)他声が旋律的進行をとるもの。譜例189の最下声部にみられる。

譜例189.jpg

・ストレッタ(注:原文ではストレットとしているが,こちらの方が多く使われているようだ)について
第1群や第3群に,主題応答が終わらないうちに,おっかぶせるように主題(もしくは応答)を別な声部にあらわして,先行の主題(もしくは応答)の末尾と追行の頭を重複させるもの。これが次から次とあらわれると,緊迫した盛り上がりを感じさせる。譜例190のAはハ長調フーガ冒頭の主題と応答句の入りを示す。主題の長さはおよそ1小節半である。Bはその第2群(原曲14小節目から)であるが,5小節の間に実に8回の主題(応答)の入りが繰り返されている。
著者は,この手法のために対位法が複雑になりすぎたことを,バッハ以降のこの音楽形式の凋落の原因と見る。

譜例190.jpg

・2重フーガ,3重フーガ
フーガの本来の精神は単一の主題によるものと考えられるが,二つ,あるいは三つの主題を持ったフーガがある。これらをそれぞれ2重フーガ,3重フーガと呼ぶ。譜例191は2重フーガの実例。3重フーガの実例は省略。
譜例191-1.jpg譜例191-2.jpg

・フガート
フーガ風。第1群のみがあって,その後は自由な曲の進行をするもの。他の名称を持つ楽曲にも良く用いられる。

・フゲッタ
フーガの小規模なもの。ソナタに対するソナチネのように,各部が簡略に出来ていることが多い。

以上,フーガについて述べたが,この楽曲複旋律的な面白さは,楽式論では説明できず,対位法に負うところが大きくかつ重要である。また,この形式は,フーガと名のつく楽曲専用ではなく,色々な楽曲の一部分を構成して,現代でも用いられている形式である。

要点だけかいつまんで解説する積もりが,7回にも及んでしまった。ソナタ形式までの6回よりも多くなってしまった。これはブロガー当人の理解が十分でないことが原因である。著者が繰り返し述べているのが,対位法の重要性である。通常の和声の知識でもここに記した程度の説明はできるが,真にフーガを理解するには対位法の理解は不可欠のようである。あまりアマチュアで対位法を勉強しているというのは聞いたことはないが,また学習課題が生じてしまった。何時になることやら。それとフーガ技法の学習に関してバッハの「平均律」が非常によい教材であることが分かった。「平均律」曲集が全部頭に入っている人は別として,実際に音を出し(聞き)ながら理解することも必要だろう。(おわり)

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