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フーガ形式(6) [音楽理論]

石桁真礼生「楽式論」のフーガ形式本文を用いてフーガ形式を概観している。今回はその6回目。

フーガ形式に関する補足事項を述べる。

・声部の数について
人間の耳は独立な複旋律の数を聞き分けるのに限度がある。例えば4声とは言っても,その1声部は休符が多い。3声部が一応の限度と見てもよいが,実際独立に動いているのは2声であり,もう1声は影のようについているだけであり,極論すれば2声ともみなせる。

・主題について
フーガにおいては主題は唯一無二のものであり,全曲の楽想を決定してしまう重要さを持つ。ソナタ形式のような大々的な展開も無いため,明瞭簡潔なものが必要であり,その長さは小楽節どまりである。
バッハの平均律第1巻のフーガから主題を引用する。譜例181は小楽節構造の主題。A,B,Cは二つの動機によるもの。Dは三つに見えるが,第2は第1の延長である。Eも二つの動機だが,それぞれ部分動機に別けられる。
譜例181-1.jpg譜例181-2.jpg

譜例182A,B,C,D,Eは,いずれもただ一つの動機による主題の例。
譜例182-1.jpg譜例182-2.jpg

譜例183は大楽節らしい構造を持つ少ない例。
譜例183.jpg

・応答と変応法について
応答は,主題の属調に移したものが原則。属調を意味するドミナントは,支配するという意味があるが,ドミナントにより主調が支配される(確立される)ということである。
しかし,応答に入った時点ではまだ主調のままであり,主題によっては,そのまま5度上げて応答としたのでは,主調を維持できない場合がある。例えば主音で始まる主題の場合は,5度上げた応答は主調を維持しているが,主題が属音で始まる場合,属音の属音は9度すなわち2度上となり調が変わってしまう。
そこで用いられるのが変応法である。主調になるよう音高を調整する。これはトナールの応答と呼ばれ,真正の応答と区別される。またこれには,主題を転回したり反行したりすることもある。

・対位句について
対位法の分野になるが,一般的注意事項は以下のとおり。
1.複旋律の一方を担うので重要である。2重対位法が必要であり,場合によっては3重対位法も必要となること。
2.長い音符に対しては短い音符で応答するとか,その逆といった,リズム上の均衡をとること。
3.主題に対し不調和を廃しつつ変化と差異を求めること。
4.調性を強調するような基礎和音を構成するように旋律を動かすこと。

・挿入句(エピソード)について
群と群を仲介する補助的楽句。また,群の中の提示部と対提示部の仲介等として存在する。規則性の中に自由な弾力性を与える楽句としての役割を果たし,「遊戯的」とも言える意味を持つ。しかし,不調和ではなく,フーガ本来の要素である,主題・応答・対位句に関連のあるものでなければならない。

・小結尾について
ある段落の後尾が延長されたような形で付加されたもの。和声を充足し,次の主題の「入り」に備えるといった意味がある。(つづく)

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