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フーガ形式(3) [音楽理論]

前回より石桁真礼生「楽式論」のフーガ形式本文を用いてフーガ形式を概観している。今回はそのつづき。

・フーガ形式の概観
フーガ形式はカノンなどとと同様,ソナタ形式までのような楽式の概念ではその形を考えることはできない。一つの主題から対位法的技法を駆使して連続的に旋律的流れを組み合わせていくからであり,楽式的に構造を示すのは困難である。

フーガ形式の定義は,ダンディーの作曲法講義によれば,「唯一の主題を,終止形法則で限定された調性組織に従いつつ,継起的に展開する対位法的楽曲」ということになる。

形式がはっきりせず,絶えず主題がどこかの声部で鳴っている。この形式の理解のためには,ソナタ形式までのような楽式とは別の概念でとらえる必要があるが,以下の事が言える。

・フーガは限定された声部を終始墨守する。2声,3声,4声それぞれで始まった声数は最後まで限定される。曲の途中で変わらない。
・フーガの段落わけは判然としないが,およそ三つの群に別けられる。各群は「主題の入り」を実施することで共通。群の相違は調性組織の相違である。

第1群: 主題提示部と言ってよい
 まず,第1声部が主題を演奏。ついで,第2声部が主題の属調でその「応答」を演奏(5度の並行カノンのように)する。その間,第1声部は第2声部の応答に対する「対位句」を演奏。多くの場合短い小結尾を経て,第3声部が主題を主調で演奏。その間第2声部は主題に対する対位句を,第1声部は,第2声部に対する対位句を終えて自由な対位的旋律を演奏する。3声のフーガでは,これで第1群終了だが,4声のフーガでは,さらに第4声部があらわれて,応答を演奏する。

以上を図式的に書くと以下のとおりとなる。

   第1群(主題提示部)における演奏順序    

第1声  主題  ・ 対位句 ・ 自由旋律 ・ 自由旋律
     (主調)
第2声 ・・・・・・・・  応答  ・ 対位句  ・ 自由旋律 
            (属調)
第3声 ・・・・・・・・・・・・・・・・   主題   ・ 対位句 
                    (主調)
第4声 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  応答 
                            (属調)

どの声部が先行するかは全くの自由である。この後,挿入句を経て「対提示部」が置かれる場合もあり,さらに短い挿入句を経て第2群に進む。

第2群: 
第1群から,挿入句を経て結ばれる。普通,ここは応答を演奏した声部からの「入り」となる。ここの部分の楽式的構成を示すことは困難である。第1群のような秩序もなく,調性やその他フーガ技法も多彩に用いられる。ここの部分は,全曲の中での頂点を形成する。さらに細分すれば,二つ以上の部分に別けられる。並行調や他の近親調による展開なされ,下属調,属調,主調の機能を回復して第3群にすすむ。なお下属調部分では,主題と同一になってしまうためか,属調による応答は省略される。

第3群:
主題を主調に回復する役目。コーダ的な感じを持つ。他の群より短い。主音のオルゲルプンクトがあらわれることも多い。後述するストレッタで盛りあげる場合もある。短調の場合,第3音を半音上げて長調のコードで終る,いわゆるピカルディ終止も良く見られる。(つづく)

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