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フーガ形式(4) [音楽理論]

石桁真礼生「楽式論」のフーガ形式本文を用いてフーガ形式を概観している。今回はその4回目。

・フーガの実例解説(その1)
バッハの「平均律」第1巻プレリュードとフーガNo.11ヘ長調のフーガを用いて解説する。これは3声の長調の例。

第1群:
譜例172は,第1群のうちの提示部12小節を示す。主題が中声に現れ,応答が高声に現れると,中声は対位句を演奏している。8,9小節の小結尾は属調であるハ長調から主調のへ長調に復帰するため。次に低声に主題が現れると,対位句は高声に現れる。
譜例172.jpg
そして,譜例173に示すように,5小節の挿入句を経て,対提示部にすすむ。最後の主題の「入り」は2小節しか間隔をおかず,前の低声部の主題が終わる前におっかぶせるように迫ってくる。このような手法をストレッタと呼ぶ。対位句は相当自由な形だが,調性は主調を確保しているため,ここの部分は展開部と言わず,対提示部と言う。
譜例173.jpg

第2群:
譜例174は,第2群につながる挿入句と,第2群の1を示す。この部分は展開的部分ではあるがソナタ形式の展開部のようなめまぐるしい調性的変化はない。この部分はニ短調で,属音のイ音によるオルゲルプンクトが現れる。主題の入りはストレッタ。小結尾がつき,ニ短調で完全終止し,第2群の2にすすむ。
譜例174.jpg
譜例175は,第2群の2を示す。前回触れたように,終わりの部分で調性組織を確立するために現れる下属調の要素である。ここでは,主調の下属調である変ロ長調の代わりに,並行調のト短調で主題を出している。入りはストレッタを伴いながら3回あらわれ,短い小結尾によりト短調に完全終止する。
譜例175.jpg

第3群:
譜例176は第3(最後)の挿入句と第3群を示す。第2群の2で不十分だった変ロ長調の調性をここの挿入句ではっきりさせ,主調のドミナントを経て主調のトニックの第3群に入る。主調を回復した第3群でも,変ロとへ長調を揺れ動きながら主調であるヘ長調のトニックを確立しつつ,主題と応答の変化したものがストレッタであらわれ,小結尾で最後の盛りあがりの後,調性を確立して完全終止して曲を終える。(つづく)
譜例176.jpg


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