ギターと他の趣味と(2)

学生時代ギターと共に夢中になった趣味に釣りがある。ルアー・フィッシングである。そんなに大物を狙うわけではなく，山に分け入り，岩魚や山女を釣る。もちろん，えさ釣りも出来るわけだが，釣れた時の興奮は忘れられず，どんなに釣れなくても，何十キロも山岳渓流を渡渉するのだった。殆ど，沢登りである。釣りたいという強い意欲が無かったら，まず出来ない。

どの分野もそうなのだが，やはり一般の人は，この渓流釣りをルアーやフライでやるという意義をなかなか理解しない。最たる誤解が，「のんびりしてていいですね」というものだ。これが全く当てはまらないことは上の文章からお分かりだろう。「えさがいらなくていいですね」というのもあり，これは擬餌針の本質をついている点もあるが，その後がいけない。「えさ代が掛からなくていいですね」。これは全く逆で，ルアーやフライの方がずっと高く，消耗もかなりある。クラシックギターと言っているのに，「歌が歌えていいですね」の手の誤解と一緒である。知らない人に，説明するのは，なかなか骨の折れるものだ。以前紹介した北杜夫のゼフィルス採集の話とおなじで，面倒なので怪しまれても逃げるのが一番と言うことになる。エベレスト初登頂を目指して遭難したジョージ・マロリーが「なぜ山に登るのか」と聞かれて，「山がそこにあるからだ」と言ったという話があるが，もし本当ならば，それはやはりある種の面倒くささだろう。ある分野をつきつめる人間が，知らない人に説明することの困難さを物語っているように見える。

なぜ，クラシックギターを弾くのですか？

「クラシックギターというものがあるからです。」

ということにしておこう。

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