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「音律と音階の科学」について(4) [音楽理論]

前回までで,音律の話を終了した。本書では第3章までである。
第4章からは,筆者のオリジナルな研究成果やジャズの趣味なども交えられる。
ここではすべて紹介するのが目的でなく,あくまでクラシックギターに関するところ,興味を惹くところを拾ってみる。

第4章では「不協和曲線」を用いて,協和度を検討する。やはり,この辺は物理屋さん。単に周波数比が整数倍だからというのでは響きが良い理由にできないようである。これを用いて,オクターブ内の音の親和度を調べると,完全5度,長6度,完全4度,長3度,短3度の順番で不協和度が低い。すなわち,協和度が高い。一方短2度,すなわちCに対してC#と言った,半音同士が最も不協和。まあ,この辺は,理由およびその順番はさておき,現実感覚と合う。

例えばロドリーゴの用いる和音は半音の濁りを積極的に入れているのは承知の通り。単に美しければ良いというものでもない。甘いものに塩を入れたり,寿司にわさびをきかせたりもする。急に例えが現実的になる。経験が無いのでわからないが,美人も3日で飽きるとも言う。

著者は寄り道と言っているが,ちょっと面白いデータがある。音の周波数帯が高調波を入れても,ギターは2kHzで終わっているのである。人間の耳の感度域は2kHzから4kHz。この耳の高感度域に入ってくる楽器はピアノとバイオリンくらいだと。ギターの音が聞こえにくいのは当然。しかし長時間聞いても疲れず,癒されると。たしかに,マイクロフォンを使わないギターの演奏会では,最初良く聞こえない事が多い。しかし段々耳が慣れると良く聞こえてくることはしばしば経験する。

第5章はハーモニー,和声進行に関して,おそらく著者が導入した「不協和ポテンシャル」図を用いて和音の協和度が説明されている。それから,自然倍音系列で純正律の音階が説明されているのだと思っていたのだが,筆者の書き方では,しっかりした理論が無いとのことである。

モード(旋法)の話が少しあるが,そのうちのイオニアンとエオリアンのみ生き残って,現在の長・短調になったが,ジャズで古い旋法が生き返ったということを述べたかったのだろう。旋法に関しては,ギター曲でも用いられ独特な効果をあげているものも多い。ゲーム音楽などでも,独特な効果をあげているのは承知しているが,今回これには触れず,今後曲への取り組みなどで必要になった際検討したい。

ジャズの和声進行の話や新しい音律の試みなどについても,述べられている。

オクターブで同じ音に聞こえる理由が必ずしもはっきりしていないことが,何度か述べられる。
この前提が無ければ,西洋のすべての音律がひっくり返されてしまうことになる。

この本に関してはここで一応終え,今後関連の議論をしたい。(おわり)


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