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「音律と音階の科学」について(3) [音楽理論]

ピタゴラス音階は2と3の倍数のみで作られていたが,これに5の倍数を入れ,長三度を純正にしたのが,純正律(の長調)。
この音階では,ひびきを重視し,三和音の周波数比が3:4:5となるように組み立てる。
この原則で音階を組み立てると,以下のようになる。ピタゴラス音階よりも単純な整数比で組み立てられていることがわかる。(ここでも,半音を追加しておいたがその作り方はいくつかあり,異なった異名異音が発生する)。

   C#   D#    F#   G#   A#
  16/15 13/11   7/5   8/5   16/9
C     D         E    F        G         A         B   C
1          9/8      5/4  4/3     3/2        5/3     15/8  2

あと,古典音律として良く出てくるミーントーン(中全音律)に触れている。
有名なバッハの平均律クラビール曲集はヴェルクマイスター(の第3)という調律法を前提としたらしい。何分,古典音律には多くの人の名前のついた音律がくさるほどある。現在日本人名のついたものもある。これは自分なりの解釈だが,音痴な人は音程がふらつくのがまずいので,ふらつかず確信を持って歌えば,その人オリジナルな音律による味わいがあると言ってもよい。案外有名な音律に音がはまっているかも知れないのだ。その位,音律には種類がある。だから,本書でミーントーンにのみ触れているのも賢明と思う。そうしないと紙面が尽き,筆者の得意分野が書けない。民族音楽はもちろんのことだし,現代のポピュラー音楽でさえ,平均律にはまらない音で歌われている。

ピタゴラス音階では完全5度すなわち3/2の繰り返しで音階を作る結果,長3度が81/64となってしまい,5/4という純正な長3度が出なかった(シントニックコンマの発生)が,ミーントーンでは,この5/4という純正な長3度を重視する。すなわち,ピタゴラスの5度の回転を4回やったところがぴったり5/4(オクターブにおさめるとこうだが,実際には5倍)となるように短くしてしまおうというわけだ。すなわち,5の4乗根(≒1.4953)をピタゴラス音階の3/2の代わりに使うものである。

エクセルで計算したので,この音律(ミーントーン)を以下に載せておく*。

   C#   D#          F#     G#      A#
   1.04491  1.19628 1.39754 1.5625  1.78885
C          D         E     F        G         A        B      C
1     1.11803   1.25  1.33748 1.49535 1.67185 1.86919  2

完全5度純正で組み立てたピタゴラス音階は12回の回転でオクターブが長くなってしまい,これを押し込めるため短い音階が出てきてしまった。完全5度も長3度も純正な純正律は響きは美しいが転調が難しい。長3度純正のミーントーンではピタゴラスと逆で,12回の回転でオクターブがやや短いが,転調はある程度可能と。そこで,ピタゴラスとミーントーンの部分的折衷案が,ヴェルクマイスター,キルンベルガー,ヤングなどの幾多の音律である。もちろん,ピタゴラスとミーントーンの部分的でない均等な折衷案が12平均律である。音律の話は,大まかには以上のようなものだ。
*後注 ここで示したのはCから上げて行くだけ(#だけ)の計算(ミーントーンA型)。よく用いられるミーントーンは,Cから下げて行く方(♭系)も併用して,G#とE♭間にズレを置く(ミーントーンC型)。
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