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ビリーブ イン ミュージック ビリーブ イン ボイス NHK-FM [音楽理論]

初々しい女性の声で,番組の合間合間に流される。

NHKの宣伝をするつもりはないのだが,TVを見ることが少ないので,放送と言えばNHK-FMだけになってしまう。そのため,このメッセージが妙に耳につく。ここで取り上げたのは,メッセージそのものよりも,バックに流れるピアノ演奏の最高音,C8音である。ドッ,ドッ,ドッ,ドッ,,,,だが,いつの間にかドシドシドシドシ,,,,となっている。

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この辺の音は,音程感が少ない。
ピアノは,調律曲線というものに沿ってチューニングされるが,このC8音は30セントくらい高い。30セントというと半音の1/3くらいだから,微分音などという代物ではなく,もし別の音律を使っていたら全く別の音である。それでも,ピアノでは高い方をこのくらい高くしないと響きが良くないようだ。低い方も,やはり40セントくらい低い。だから,ピアノの音域7オクターブ強では約70セント広く,半音近く狂っていることになる。ピアノの調律技術を身につけるには,長年の修行がいるようで,その技術には当然詳しくはない。調律曲線自体原理的に求められたものではなく,長年の試行錯誤の結果,よいチューニングがこのようになっていたと言うことである。ここで述べたいのはその原理的な話である。

なぜ調律曲線が平均律で割り出される音程よりも低音が低く,高音が高いのか?
その理由は弦の堅さにある。以前,弦の長さと音程の関係式を示したが,あのように弦長と音程が反比例という単純な関係になるのは弦が柔らかい場合である。2500年前ピタゴラスがモノコードで研究したのも,この関係を確かめ,今日の音階の基になる5度音程を基礎にした音階を発明したのは以前書いたとおり。ちなみに,古代中国では笛が使われたようだ。

アコースティックギターを観察すると,ブリッジの骨棒が低音側の弦長が長くなるよう,斜めに取り付けられている。なぜあのようなことをするのだろうか?理由は弦が堅いため,特に弦長が短くなると反比例の関係よりも音程がより上がってしまうからである。だから低音弦側の弦長を長くして補正している。極端な例は弦でなく,木琴やビブラフォンのように堅くソリッドな振動子を想起すると良い。長さに対し1.5乗の反比例くらいになっていて,長さを半分にするとオクターブではなく1オクターブ半くらい上がっているはずだ。だから,より太く堅い低音側の弦にこのソリッド効果が効いてくるためだ。ちなみに,クラシックギターでは弦が柔らかいのでこのような大きな補正はされないが,3弦は太く曲げ剛さが大きいので,少し弦長長めに逃げているものを時々見かける。かく言う私も骨棒の幅2mm程度内で微調整している。

ピアノの調律曲線にも似た関係がある。
しかし,アコギの場合は押さえて弦長が短くなった際の話。ピアノは全て開放弦で調律しているではないかという反論もあろう。要は高次高調波の話である。ピアノは弦の比較的端部を叩いて高次高調波を発生させ,他の弦の共鳴を得てピアノ特有の音色を発生している。しかし弦がアコギ以上に堅いため,1本(組)の弦の高調波の発生が単純な整数比の倍音系列にならない(このことをインハーモニシティと呼ぶようだ)。高次高調波がより高い方にずれる。これを少しでも協和させ,響きを豊かにするためにオクターブを広くしているようである。従来言われた,「高いほうをより高くして聞こえにくい音を強調している」のではなく,むしろ「音程のわかりにくい音を上げ下げして,中低音の響きをよくしていると言えるだろう。

どの音律でもオクターブの振動数はいじりようが無いはずだ。しかし,ピアノの調律は5度や3度でなく,オクターブを広く取るのである。ピタゴラスコンマの亡霊か?しかし,どの音律をも超越しており,音律よりも響き優先という鉄則を,12平均律の申し子のようなピアノが身をもって証明しているのである。

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