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夏休みの課題 [雑感]

以下のものを今年度の夏休み課題とした。出来なかったら困るので,こちらを後出しにした。
子供の自由研究をやらずに済んだのでほぼ目標は達した。

(1)昨年,カシオのEX-F1を手に入れたので,これで弦の高速度撮影を行う。
2)音律の原理と実際のギターの調弦への適用をはっきりさせ,チューナ使用に関する見解もまとめる。

(1)に関しては,準備と撮影など,半日程で終了したが,データのアップに課題があった。音声付の動画がそのままではうまく行かず,データの変換など,こちらに手間取った。また,サイズも5MBまでなので,そう長いものは載せられなかった。記事は8/178/19までのものに載せた。

(2)に関しては,音律の復習するため,ブルーバックスを購入して学習した。古典音律に関してはピタゴラス,純正律,ミーントーンまでで止めておいた。この入門書のレベルである。他の有名な音律に,ヴェルクマイスター(の第3),キルンベルガー,ヤングなど数多くの音律があり,現在でも時々顔を出して,鍵盤楽器の調律に用いられたりするようだ。さらにそれらの有名な音律にもまた改訂版もあり,関心のある人の数だけ音律があるといっても過言でない。ギターへの適用フレッティング,また通常の平均律フレッティングの際のチューニングに関する注意事項までの記事を載せたが,実際面への適用にはもう少し検討が必要だろう。

(2)に対応するかどうかは読者に任せるが,電気工学などを学んだ人には有名な話がある。
19世紀イギリスにヘビサイドという独学奇才の電気工学者がいた。テスラがエジソンの妨害にめげず,交流システムを開発して普及させたのは,以前触れた通りだが,交流の電気回路を扱うには微分方程式が要る(その辺がエジソンに理解できなかった理由のようだ)。数学者からすれば大したものではないだろうが,日常業務的に,交流回路を扱わなくてはならない電気工学者にとってはその扱いは非常に不便である。いちいち微分方程式を解いていたのでは仕事にならない。そこで考案したのが,今日「ヘビサイドの演算子法」と呼ばれる,微分操作を演算子に置き換えるという方法であった。これで微分方程式がやさしい代数方程式に変換できるのである。

この方法は,数学者たちから,轟々たる批判を浴びた。「きちんと証明されてない方法を使うのはけしからん」と。数学者のやり方は,対象の微分方程式の解の存在をまず証明した上で解く。厳密性が数学者の商売道具であるから,これはまっとうな批判である。どんどんそんなことをされたら,数学の体系が崩れてしまうのだ。

一方,ヘビサイドの反論がすごい。「消化過程が分からないからといって,自分は飯を食うのをやめない。」と。これにより,交流の解析面が急速に進歩した。その後この方法はラプラス変換と対応がつくことが分かり,数学者たちも矛先をおさめた。ヘビサイドの業績は画期的なものであり賞賛に値する。しかし,彼を批判した数学者たちの態度を責めるわけにもいかない。要は立場の違いである。新しい便利なツールは有難く使えばよいが,それを憂える立場にも根拠があるわけだ。

ヘビサイド流に言えば,電子チューナの使用を,「音律などの面倒は話は知らないが,日々の演奏に十分正確だから使う。」ということだろう。もちろん,音律上の問題を熟慮した上で使う方もいよう。一方,使用を嘆く(心配する)立場はここでの数学者の立場のようなもので,学習者の上達上の悪影響といった電子チューナ使用上の懸念材料が払拭されれば,落ち着くことだろう。しかし,それで音律上の問題が解決するわけではなく,固定した最良のチューニングというものは原理的にはあり得ず,時代により,調により,曲により,好みにより変わるものだということは考慮しておく必要がある。音律の問題を本気で考えるならば当然フレッティングにまで立ち入らないといけない訳だが,平均律フレッティングでもチューニングの工夫で多少は良い響きを得ることが出来るのかな?というのが現時点での立場である。

前にも述べたが,平均律チューニングが一般化したのはドビュッシー以降で,うるさく言えば,シェーンベルクやウェーベルン以降であろう。現代曲を弾くならば,平均律チューニングでOK,むしろそうしないといけないが,それ以前の音楽,バロック,古典,ロマン派の曲は本来使う音律が違うのである。福田進一氏は,19世紀ギターなどのピリオド楽器を使う理由として,作品の時代様式に合わせるべきであり,江戸時代の人が背広を着るのはおかしいと語っていた。ならば,しゃべり方(音律)も当時のものにあわせるべきだろう。服装は当時のものでも,しゃべっている言葉が現代語ではやはりおかしい。

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