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スピーカの話(3) [電気音響]

ダイナミック・スピーカの歴史は長い。スピーカそのものも長く使われるが,どうしても消耗品であるコーン紙や,特にエッジがぼろぼろに切れてきたりする。こうなれば安いものは捨てられることになるが,高価なものはビンテージ品として,楽器のように修理して再利用されることになる。しかし,このスピーカ修理,そんじょそこらでは出来ない。

山形の小さな電気屋さんの2階に,オーディオラボオガワというスピーカ修理工房がある。
スタッフは何人かおられるが,特に最終工程を担当される佐藤絹子さんはゴッドハンドをお持ちらしい。修理の技術は勿論だが,常人外れた耳の持ち主らしく,その修理上がりを鋭く聞き分ける。耳が良いのはもともとの才能なのだろうが,オーディオ機器の修理技術は東北パイオニアで身に付けられたようだ。タンノイやJBL,アルテック製などの往年の名スピーカの修理にかけては右に出るものはいないらしい。かくいうブロガーもそう高価なものではないが,ダメモトでウーファーのエッジ破れを適当な素材で修理ししてみたことがあるが,コーン紙自体も劣化していたようで,雑音が消せず,結局捨てたことがある。山形まで送る価値があったかどうか微妙なところだが。

すでに過去の製造技術だが,家庭用VTRヘッドのコイル巻きを思い出した。フェライトヘッドに開いた針の穴ほどに髪の毛くらいのエナメル線を10回位巻く。学卒実習生たちは,死にそうになりながら1日2個くらい巻ければ良いところだが,専門ラインのプロのおばさん方(失礼)は数十個巻けないと商売にならない。欧州女性には絶対出来ないと言われたものだ。業務用のVTRならばヘッド1個何万したって平気なわけだが,家庭用VTR装置ではそうは行かない。「プロジェクトX」には取り上げられなかったが,このような地味な,女性がたの卓越した技能が日本のものづくりを支えていた面もある。その後,自動巻き線機が開発され,この大変な作業は無くなったが。

スピーカに関するよもやま話を述べてきた。クラシックギターに必要な際のPAに関する記事が目的だったが,脱線を交えスピーカそのものに関する話もした。楽器の音響とかなり似ている点に驚く。どちらも音を空間に放出する機器である。身もふたも無く電気工学的に言ってしまえば,どちらも一種のインピーダンス変成器である。マイクやスピーカの他にはトランス,アンテナなどがある。楽器のの製作家・研究者に電気工学者や物理学者が多いのは,偶然の一致ではないだろう。今回は述べなかったが,ヘルムホルツ共振子の理論などは,響孔やトルナボスのバックグラウンドになるはずである。このヘルムホルツと言う人は物理学者として,音響のみならず音律に関する研究も展開した。例えば,本来チューニングに関する論議は音律が中心課題のはずだが,この音楽と物理学との境界領域は,プロの音楽家は毛嫌いする面もある。このことが,精神論に傾き合理的論議にならない理由の一つと思われる。

新しい話に戻せば,アンプの話で触れたDSPを使って,沢山の小さいスピーカを鳴らして,全く新しい音場合成する試みなどが最近の話題であるが,この辺詳しくないので,ここでやめることにする。(おわり)

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