SSブログ

スピーカの話(2) [電気音響]

音の扱いは難しいと書いた。そのため,音を扱う特にアコースティック機器は電子機器類としては異例の楽器にも負けないくらいの長い歴史を持つ。現在も主流のダイナミック型スピーカは開発から85年ほどの歴史があるようだ。モダンギターの歴史がトーレスの死後117年なので,150年程度とすれば2倍も変わらない。音を出す基本的な機器として,例えば乗り物のタイヤの様に当分長く使われていくことだろう。

原理は非常に単純で,磁石の作る磁界中に振動板に接続した可動コイルが電磁力で動く。振動板には昔から紙が使われ,現在でも主流である。これは,軽くて剛くて,異常共振しないよう内部ロスが適度にある素材として最も優れているからである。特に中音,低音用ではいまだに殆どがそうである。蛇足ながら,寿命さえ言わなければ,ギターの表面板も紙がかなり良い素材ではないかと思う。

振動板に関しては日本ビクター(現JVCケンウッド)のエンジニアの方の,面白い開発話がある。ダイナミックスピーカーの振動板は上で述べたように,いまだに紙が主流であるが,これを木にしたいと考えた。楽器などに使われるように,振動板には軽く剛性があって適度な内部ロスを持つ木が最適と。しかし張り合わせでは,せっかくの木のよさを生かせないと考えた。この辺もギターと同じ。シームレスでコーン紙ならぬコーン木を作ろうとしたが,これがむずかしい。割れてしまって,成型できない。木を柔らかくする方法を考えていたとき,なじみの飲み屋さんのママがいつも堅いするめを日本酒に浸けて柔らかくしているのにヒントを得て,薄くスライスした木板を日本酒に浸けたところ,うまく成型できたというものである。木を柔らかくするのに日本酒を使った。IEEEのSPECTRUMという雑誌にも紹介されていた。ワインでもウィスキーでもダメで,日本酒でないとダメだったそうだ。「ウッドコーンスピーカー」の開発に関った話題性のある話ではあった。

かたやオンキョーは,高峰楽器と共同で,「ギターアコースティックスピーカー」を開発,エンクロージャの設計をギターのボディと同様の考え方で行っている。従来のスピーカ・ボックス(エクロージャ)は「箱鳴り」と言うエクロージャの共振を嫌って,がちがちに作ったが,こちらのスピーカのエクロージャは,ギターのボディのように,力木を配して,ある程度の共振を残す。

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0